第126話 欲望の守銭奴
広間に怒号が響く。
奥から雪崩れ込んできたのは、金貨を握りしめた兵士たち。
その目は血走り、欲望に支配されていた。
「金だ! もっと金をよこせ!」
「殺せば金貨が増えるんだろう!?」
兵士同士ですら奪い合いを始め、殺気はさらに高まる。
ザハルはその様子を見て、恍惚の笑みを浮かべた。
「見ろ! 命は札束より軽い! だが札束を積めば、命は戦いを選ぶ!
これこそが世界の真理よ!」
「……くだらん」
オルドが戦鎚を担ぎ、怒声をあげた。
「金で命を縛る? そんなもん、鎖よりタチが悪い!
俺たちの戦いは札束じゃ測れねぇんだよ!」
彼の一撃が地を砕き、前にいた兵士たちを吹き飛ばす。
「金で買えるのは身体だけ。心は決して従わない」
フィオナが冷ややかに言い放つ。
「その目を見れば分かるわ。あなたたちは恐怖と欲望に踊らされているだけ」
杖を振り上げ、光の葉を飛ばす。
「――《森羅裁断》!」
閃光が走り、兵士たちは悲鳴を上げながら武器を落とした。
恐怖に駆られ、後退を始める。
セレナは竪琴を奏で、強く澄んだ歌声を放つ。
「――《蒼潮交響詠》!」
旋律は奴隷たちの心を落ち着け、兵士たちには正気を取り戻させる。
「やめろ……何をしているんだ、俺は……!」
「俺たちは……ただ金に踊らされて……」
兵士の何人かが剣を投げ捨て、その場に崩れ落ちた。
「……なに?」
ザハルの顔から笑みが消えた。
「金じゃ買えねぇものがあるんだよ!」
オルドが吠える。
「仲間の絆、誇り、命の重さ……それを知らねぇ奴は必ず負ける!」
「歌は札束なんかじゃ計れません!」
セレナが真っ直ぐに言い放つ。
「……そう。だからこそあなたは滅ぶ」
フィオナの冷たい声が広間に響いた。
ザハルは怒りに顔を歪め、金貨を撒き散らす。
「……よかろう。ならば力ずくで黙らせてやる!
――黄金の牢獄に葬られて死ねぇッ!!」
黄金の鎖が再びうねり、広間全体を覆い尽くす。




