第122話 ザハル・バルバロス
影の傭兵団を退け、一行はさらに奥へ進んだ。
地下交易路の最深部――豪奢な石造りの広間。
そこには金貨の山、宝石を散りばめた椅子、絹で覆われた帳が並んでいた。
だが、その豪奢さの中心に座る男こそ、この腐敗の象徴だった。
「……ようこそ、我が金庫へ」
大奴隷商ギルド長、ザハル・バルバロス。
肥え太った体に金糸の衣をまとい、指には宝石がこれでもかと嵌め込まれている。
目は細く吊り上がり、口元には常に薄汚れた笑み。
「テメェが……大奴隷商ギルドの頭か」
ライオネルが怒りを抑えきれずに声を荒げる。
「ほぉ……獅子の若造ではないか。
お前の同胞は高値で売れる。だが反抗的すぎて扱いが難しい。
お前の首を持ち帰れば、帝国も喜んで金貨を積むだろう」
ザハルは下卑た笑みを浮かべ、手元の金貨を指で弄んだ。
「ふざけるな……!」
ライオネルが大剣を構えた瞬間――ザハルは指を鳴らした。
ジャラリッ――。
奥の檻から連れ出された獣人奴隷たちの首輪が光を帯びる。
「……ッ!」
カイが目を見開いた。
「おっと、暴れるなよ? こいつらの首には爆裂の魔法陣を刻んである。
私の合図一つで――ほら、この通り」
金貨を軽く弾くと、奴隷の一人の首輪が赤く輝き、爆ぜる寸前で光が収まった。
奴隷は恐怖で震え、泣き叫ぶ。
「やめろぉぉぉッ!!」
ライオネルの怒号が響く。
ザハルは恍惚とした笑みで金貨を散らした。
「命は札束より軽い。だが札束を積めば命は買える。
――それがこの世の真理だ」
その背後から現れたのは、無言の巨躯。
大剣を引きずり、感情を失った瞳で前に立つ奴隷戦士。
「……こいつは私の最高傑作、“名無し”だ。
意思は要らん。ただ命令に従えばいい」
ザハルの高笑いが地下に響く。
「さあ、命と金、どちらが重いか……身をもって味わうがいい!」




