第12話 暴走の果てに
暴走解放は瞬間的な強化技です。
1回の戦闘で何度も使用するのは、数秒で元に戻るからです。
イメージは、エニエス〇ビー編の〇フィのギア2です。
遺伝子を暴走させているので、短時間に何度も使用すると反動で体が崩壊します。
灼熱の地獄が広がる地下室。
炎の怪物と化したタルフ侯は、巨腕を振るうたびに石床を砕き、灼熱の飛沫を撒き散らした。
「奴隷どもォ! 燃え尽きて灰になれぇッ!」
咆哮が轟く。炎の奔流がカイとアリシアを飲み込もうと迫る。
「……っ!」
アリシアは咄嗟にカイを押し倒し、呪剣を掲げて火柱を受け止める。
だが彼女の体は既に限界だった。呪印が焼け焦げ、血が滴り落ちる。
「アリシア、もうやめろ!」
「いいえ……あなたは、生き残らなきゃならない……」
その言葉が、カイの胸を突き刺した。
紅と蒼に輝く瞳から涙がこぼれる。
「オレは……誰も守れないのか……!」
次の瞬間、胸の魔法陣が激しく脈動した。
背から半透明の翼が広がり、腕が巨人のように膨張する。
魚人の鱗が浮かび、鳥人の羽根が輝く。
「――《暴走解放》ッ!!」
衝撃波が地下を揺らし、炎の奔流を弾き返した。
だが、その力は制御を失い始めていた。
拳を振るうたび、壁が砕け、天井が崩れ、仲間さえ巻き込みかねない。
「カイ! 意識を保って!」
アリシアの声が届く。しかし少年の瞳は紅と蒼の光を交互に点滅させ、理性が薄れていく。
「ウアアアアアアアッ!!」
拳が炎の巨腕を粉砕し、灼熱の肉体を抉る。
侯爵が絶叫するが、その声すらカイには届かない。
「……これでは……彼自身が壊れてしまう」
アリシアは唇を噛み、決意を固めた。
呪剣を握り直し、カイの背に寄り添う。
「ならば、私の命で……彼を繋ぎ止める」
紅と蒼の光と、血の呪いが交錯する。




