第119話 地下の罠
地下交易路は果てしなく続いていた。
湿気を帯びた空気に鉄錆の臭いが漂い、松明の光が壁に不気味な影を踊らせる。
「……耳を澄ませろ」
ライオネルが低く呟いた。
「こういう道は必ず“仕掛け”がある」
その言葉が終わるや否や――。
ガコンッ!
石床が沈み、カイの足元に穴が開いた。
「うわっ――!」
咄嗟に翼を広げて踏みとどまるカイ。
穴の底には無数の鉄槍が突き出していた。
「くそっ……やっぱり罠か」
オルドが戦鎚で床を叩くと、さらに別の場所で仕掛けが作動し、矢が壁から雨のように飛び出した。
「頭を低く!」
フィオナが叫び、光の壁を展開する。
光葉が舞い、飛来する矢を弾き落とした。
「ふふ……歓迎が手荒ね」
フィオナの皮肉に、ライオネルが唸る。
「奴隷商ども……徹底的に用意してやがる」
その時、奥から獣のような唸り声が響いた。
暗闇から現れたのは、鎖に繋がれた巨大な魔物。
角の生えた砂漠獣――牙砂獣。
「檻から解き放って、俺たちを足止めするつもりか……!」
カイが拳を構える。
牙砂獣が咆哮し、巨体で突進してきた。
岩壁を砕く衝撃。通路全体が揺れる。
「ここは任せろ! 俺が前に立つ!」
ライオネルが大剣を振りかざし、咆哮を返す。
「――《王獣轟破》ッ!!」
轟音と共に地を割る斬撃が走り、突進してきた魔物を正面から受け止めた。
「すげぇ……!」
セレナが思わず息を呑む。
だが魔物は怯まず、暴れ狂いながら鎖を引きずって暴走する。
「今よ!」
フィオナが杖を振り上げる。
「――《森羅裁断》!」
光の葉が鋭く魔物を切り裂き、隙を作る。
「うおおおおッ!」
カイが拳に紅と蒼の光を纏わせ、巨体の腹を貫いた。
牙砂獣は断末魔を上げ、崩れ落ちる。
静寂が戻った通路。
仲間たちは荒い息を整え、互いを見やった。
「罠に魔物か……用意周到だな」
オルドが唸る。
「だが、進むしかねぇ」
ライオネルが大剣を肩に担ぎ、前を睨んだ。
カイは拳を握りしめ、紅と蒼の瞳を輝かせる。
「絶対に辿り着く。……奴隷商どもの心臓に」




