第115話 砂漠都市バルカンの影
数日の行程を経て、一行は砂嵐を抜けた。
視界が晴れた先に現れたのは――砂の海に浮かぶ巨大都市。
砂漠都市バルカン。
高い石壁に囲まれ、城門からは隊商や旅人がひっきりなしに出入りしている。
遠くからでも分かる賑わいと熱気。金と物資が集まり、砂漠の富を誇る交易都市だった。
「……すげぇ。砂漠にこんな街があるなんて」
カイが驚きに目を見開く。
「表の顔は繁栄の都市。でも、その影で奴隷市場が動いている」
フィオナは冷静に分析し、杖を握りしめた。
「気を抜くな。獣人族の鎖の音が、この街の鼓動そのものなんだからな」
ライオネルの声は低く、怒りを押し殺していた。
門をくぐると、活気に満ちた光景が広がった。
露店には香辛料や宝飾、絹織物が並び、香ばしい肉の匂いが漂う。
異国の商人や旅人たちが声を張り上げ、まるで祭りのような喧噪だった。
「いい匂い! ちょっと寄り道しても……」
オルドが鼻をひくつかせる。
「駄目です」
フィオナの冷たい一言に、オルドは肩を落とした。
だが、華やかな通りの裏には異様な気配が漂っていた。
遠くから鉄の鎖の音、獣の呻き声、抑え込まれた怒号――。
ほんの一瞬、路地裏から見えたのは、縄で繋がれた獣人族の列だった。
「……ッ」
セレナは目を逸らせず、唇を噛む。
「本当に……こんな場所で……」
ライオネルの拳が震えていた。
「この街を仕切っているのは“大奴隷商ギルド”。やつらが獣人族を売り買いし、帝国や公国に流している……」
表は繁栄と華やぎ、裏は鎖と絶望。
砂漠都市バルカンはその両方を抱え、巨大な影を落としていた。
「必ず……必ずここを叩き潰す」
カイの瞳が紅と蒼に燃える。
仲間たちは黙って頷き、それぞれの武器を握り直した。




