第112話 砂の試練
砂漠の真ん中。
砂丘を背に、円陣を描いた斥候たちが固唾を呑んで見守っていた。
その中央で向かい合うのは――黄金のたてがみをなびかせる獅子獣人ライオネル・グランと、紅と蒼の瞳を燃やす混血の戦士カイ。
「任せろ! 俺が前に立つ! その拳、本物かどうか確かめてやる!」
ライオネルは大剣を肩に担ぎ、豪快に笑う。
「上等だ……! 俺も中途半端じゃ済ませねぇ!」
カイは拳を握り、翼を広げる。
砂を蹴ったのはライオネルだった。
獣じみた脚力で一瞬にして距離を詰め、大剣が弧を描く。
「――《獅子咆哮斬》ッ!!」
振り下ろされた一撃と共に、獅子の咆哮のような衝撃波が砂を吹き飛ばす。
砂塵が爆ぜ、空気が震え、斥候たちが思わず身を竦めた。
「はあああああッ!!」
カイは拳に紅と蒼の光を込め、真正面から迎え撃つ。
拳と剣がぶつかり合い、轟音が砂丘を揺るがした。
「やるじゃねぇか!」
ライオネルは笑いながら剣を振り回し、砂煙を切り裂いて突き込む。
「なら次だ! ――《王獣轟破》ッ!」
大剣が大地に叩きつけられ、砂漠に地割れが走る。
その衝撃はまるで砂の海に獣が咆哮を轟かせたかのようだった。
「ぐっ……! こっちも負けられねぇ!」
カイは拳を握り直し、翼を羽ばたかせる。
「――《混血顕現》!」
魚鱗の硬鱗が腕を覆い、巨人の力が筋肉を膨らませ、鳥人の翼が紅と蒼に輝く。
「うおおおおおッ!」
強化された拳がライオネルの剣と激突し、砂嵐が巻き上がった。
「いいぞ! その力……偽物じゃねぇ!」
ライオネルの瞳は炎のように輝く。
全身の力を大剣に込め、再び咆哮と共に振り下ろす。
「獅子は――王の証だァッ!!」
その一撃を受け止めるように、カイは翼を広げて空に舞う。
「俺は……仲間と共に進む戦士だ!」
紅と蒼の拳が振り下ろされ、剣と拳が真っ向から激突する。
閃光と轟音が砂漠を揺るがし、砂丘ごと吹き飛ばすほどの衝撃が広がった。
砂煙が晴れると、両者は互いの武器を押し合ったまま動きを止めていた。
やがて同時に力を抜き、砂の上にどっと腰を下ろす。
「……ははっ。いい拳だ。嘘のない、本物だ」
ライオネルは大剣を肩に担ぎ、豪快に笑った。
「……あんたもな。剣に……全部込めてきやがる」
カイも息を切らしながら笑みを返す。
斥候たちはざわめき、やがて歓声を上げた。
「ライオネル様が認めた……!」
「こいつら、信用できる!」
ライオネルは立ち上がり、カイの肩を叩いた。
「今日からお前は俺の弟だ! 任せろ、俺が前に立つ!」
「……弟!? いや俺は……」
「いいじゃねぇか弟!」
オルドが大笑いし、フィオナは呆れ顔でため息をついた。
セレナはくすくす笑いながら拍手を送る。




