第111話 ライオネル
砂漠の風が吹き荒れ、斥候たちの弓弦が張り詰める。
緊迫の空気の中――。
「やめろ、そこまでだ」
低く響く声が、場のすべてを制した。
砂丘の上に堂々と立つのは、黄金のたてがみをなびかせた獣人の戦士。
陽光を背負い、王獣のごとき威厳を放っている。
「ら、ライオネル様……!」
斥候たちが慌てて武器を下ろす。
カイは思わず息を呑んだ。
その存在感は、ただ立っているだけで砂漠の空気を支配していた。
ライオネルは一行に近づくと、斥候を振り返る。
「こいつらは俺が見る。お前たちは周囲を警戒しろ」
「はっ!」
斥候たちは素直に従い、散開していった。
ライオネルは改めてカイの前に立ち、大剣を背から外す。
その目は試すように鋭く、しかしどこか楽しげでもあった。
「異邦の者。言葉でいくら立派なことを並べても、砂の上では無意味だ」
彼は大剣の切っ先を砂に突き立てる。
「戦えば分かる。拳と剣に宿る心は、嘘をつけない」
カイはその挑むような瞳を受け止め、拳を握った。
「……いいぜ。俺も拳で語る方が得意だからな」
斥候たちは息を飲み、二人を取り囲んで円を描いた。
砂漠の真ん中に、決闘の場が整う。
ライオネルが大剣を担ぎ、豪快に笑う。
「俺が前に立つ! 任せろ! ――さぁ、構えろ!」
カイは翼を広げ、拳に力を込める。
紅と蒼の瞳が砂に光を落とす。




