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第110話 砂の民との遭遇

 砂漠の昼は、焼け付く太陽と反射する砂の光で目も開けていられない。

 一行は布で顔を覆い、足を取られる砂丘をゆっくりと進んでいた。


「……熱風が肌を切り裂くみたいだ」

 カイが汗を拭いながら呻く。


「この環境で長く動けば、体力より先に精神が摩耗するわ」

 フィオナは冷静に観察しつつ、杖を支えに砂を踏みしめた。


 オルドは豪快に笑いながら肩の荷を揺らす。

「はっ、砂漠だろうが関係ねぇ! 酒があれば何でも耐えられる!」


「オルド……その袋、まさか酒でいっぱいじゃないですよね?」

 セレナがジト目で問い詰める。


「……水も半分はある!」

「半分じゃダメですーー!」


 ギャーギャーと言い合う声だけが、灼熱の砂に吸い込まれていった。


 その時だった。


 ザッ……ザザッ……。

 砂丘の上に影が走る。


「止まれ!」

 鋭い声が響き、一行は反射的に身構えた。


 砂の上に現れたのは、獣の耳と尾を持つ戦士たち――獣人族の斥候部隊だった。

 全員が弓や槍を構え、目は鋭く光っている。


「お前たち、どこから来た?」

 先頭の狼獣人が問い詰める。

「この地は我ら砂獣人の縄張りだ。通行の理由を答えろ」


 砂漠の熱気が一層張り詰め、一触即発の空気が漂う。

 カイは拳を握り、仲間たちを庇うように前に出た。


「俺たちは戦いに来たんじゃない。……獣人族を奴隷から解放するために来た」


 その言葉に、斥候たちはざわめいた。

 だが敵意の光はまだ消えていない。


「戯言かもしれん。だが、その真意……試させてもらうぞ」

 狼獣人の声が砂に響き、弓弦が軋む。


 次の瞬間、砂漠の風が戦いの合図となった。

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