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第11話 侯爵の絶望

 炎の牢獄を打ち破られた衝撃は、地下全体を震わせた。

 火柱が裂け、鎖が焼け落ちる。

 信じられぬ光景に、タルフ侯の顔から余裕の笑みが消えた。


「……ありえぬ。奴隷風情が……この私を……!」


 震える手で、侯爵は胸元の魔導宝石を握りしめる。

 紅蓮の光が奔り、宝石は砕け散った。


「よかろう……! 金で積み上げた研究を、この身に還元するまでよォォッ!」


 侯爵の肉体が膨張し、脂肪と血肉が赤黒い炎と融合する。

 腕は鋼鉄の杭のように肥大化し、口からは灼熱の唾液が滴り落ちた。

 もはや人間の領域ではない――炎を喰らう怪物へと変貌していた。


「ハハハハハァァッ! 燃やす! 奪う! 我が財産を守るためになァッ!」


 床から炎の柱が乱立し、地下は灼熱の地獄と化す。

 熱波だけで皮膚が裂け、息を吸うだけで肺が焼ける。


「カイ、気をつけて……!」

 アリシアは必死に呪剣を振るい、炎を断ち切る。

 だが呪印は限界に近く、足取りは重い。


 怪物と化した侯爵が吠えた。


「――《炎獄顕現インフェルノロード》ッ!!」


 天井まで届く巨腕が振り下ろされ、石床が砕け散る。

 瓦礫が飛び散り、アリシアは咄嗟にカイを抱き寄せた。


「ぐっ……!」

 背中に瓦礫が直撃し、彼女の体が崩れ落ちる。


「アリシア!」

 カイの声が悲鳴となる。


 炎の怪物と化した侯爵が、獰猛な笑みを浮かべて迫る。

 絶望の熱が押し寄せる中、カイの胸の魔法陣が再び脈動した。


 紅と蒼の光が地下を照らす。

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