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第109話 砂漠への道

 長い航路を終え、ついに一行は大陸の南方に辿り着いた。

 そこは海と砂漠がぶつかる境界――潮風の匂いが徐々に消え、乾いた熱風が頬を焼き始める。


「……すごい。海がこんなにも急に消えて、砂の世界になるなんて」

 セレナが驚きに目を丸くする。

 彼女の尾びれは既に魔法で足へと変化しており、ぎこちなく砂を踏みしめていた。


「歩きづらい……砂って、こんなに足を取られるんですね」

「慣れろ。俺たちの目的地はこの先の砂漠都市だからな」

 カイは汗を拭いながら前を見据える。


 オルドが鼻を鳴らし、大きな袋を背負い直す。

「乾いてるな……喉が張り付くようだ。酒が恋しいぜ」


「もう少し節制したらどう?」

 フィオナが呆れ気味に言う。

「砂漠で水は命。酒ばかり考えていたら本当に死ぬわよ」


「水より酒で潤う体質に変えてやる!」

「そんな体質存在しません!」

 セレナがすかさず突っ込み、場が少し和んだ。


 やがて一行は砂丘の頂に立ち、広大な光景を目にする。

 果てしなく続く砂の海、陽炎が揺れ、遠くには廃墟のような影が浮かんでいた。


「これが……砂漠か」

 カイは息を呑む。

 これまで戦った森や海とはまるで違う、過酷さと美しさを併せ持つ世界が広がっていた。


 フィオナは冷静に観察し、口を開いた。

「……ここでは風向きと夜空の星が道しるべになるわ。昼は動かず夜に進むのが基本ね」


「つまり今は休憩か。助かるぜ……」

 オルドが砂の上に大の字になり、熱にうなだれる。


 セレナは空を見上げ、汗を拭いながら微笑んだ。

「でも……どんなに過酷でも、歌えば心は折れません。

 砂の中でも歌は響くはずです」


 その言葉にカイは頷き、拳を握った。

「そうだな。どんな場所でも進むしかない。

 俺たちが行くべき場所――獣人都市バルカンへ!」


 灼熱の大地を前に、仲間たちは再び歩みを進めた。

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