第107話 潮騒の夜、二つの語らい
大宴会から一日が過ぎた夜。
海底の住処はすっかり落ち着きを取り戻し、静かな潮騒と光る珊瑚の灯りが辺りを満たしていた。
◆フィオナとセレナの語らい
フィオナは外の回廊を歩いていると、セレナが一人で竪琴をつま弾いているのを見つけた。
「……練習?」
フィオナが声をかけると、セレナは少し慌てて笑った。
「い、いえ……ただの暇つぶしです。夜って眠れなくて」
並んで腰掛けると、気まずい沈黙。
だが二人とも気にする性格ではなく――。
「セレナ、あなた……意外と抜けてるわね」
「えっ!? そんなことないですよ!?」
「昼間、食堂で海藻サラダを髪に引っ掛けたまま三十分歩いてた」
「なっ……!? なんで誰も教えてくれなかったんですかぁぁぁ!」
セレナは顔を赤くして暴れるが、フィオナは無表情で淡々と指摘を続ける。
それを聞いていた周りの魚人の子どもたちが「サラダ姫ー!」と囃し立て、大爆笑。
セレナは涙目で叫んだ。
「フィオナさん、性格悪いですよ!」
「ふふ……ごめんなさい。……でも、こうして笑っていられるなら悪くないでしょう?」
気付けば二人は笑い合っていた。
戦場を共にした仲だからこそ、気負わず話せる親友のような関係が芽生えていた。
◆カイとオルドの“地獄の酒修行”
一方その頃。
オルドに首根っこを掴まれたカイは、海底の奥にある大人の酒場へ強制連行されていた。
「おい、なんで俺まで……!」
「戦士なら拳と酒、両方鍛えて一人前だ!」
酒場の中はカオスそのもの。
魚鱗族が泡酒を泡立てて競い合い、クラゲ人魚が体を光らせてディスコのように踊り、カニ人魚が自慢の鋏で「カチカチ音頭」を鳴らしていた。
「ほら若造! これが深海クラゲ酒だ! 一気だ!」
「無理だ! 光ってるぞこれ!?」
観念して飲んだカイは数秒で真っ赤になり、テーブルに突っ伏した。
「……胃が……燃える……!」
「はっはっは! まだまだ甘ぇ!」
その後も「タコ墨カクテル」「サンゴエール」「鮫ひれハイボール」と次々と勧められ、カイの意識は何度も海底に沈みかけた。
「オルド……お前、これ特訓じゃなくて拷問だろ……」
「何を言う! 明日の朝には立派な酒豪になってるさ!」
「いや絶対倒れてる……」




