第105話 次なる作戦会議
宴の翌日。
まだ海底の住処に笑い声が残る中、カイたちは人魚族の広間に集まっていた。
珊瑚の壁に光る貝殻の灯りが並び、そこにはセレナやフィオナ、オルドのほか、人魚族の長老や魚鱗族の代表も揃っていた。
広間の中央には、先の戦いで沈んだ帝国艦隊の残骸から回収された書簡や貨物の一部が並べられていた。
「……これは」
フィオナが羊皮紙を手に取り、目を細めた。
「帝国艦隊の補給記録。見慣れない印章があるわね……」
オルドが覗き込み、低く唸る。
「こいつは……連邦商人議会の紋章じゃねぇか」
「連邦……?」
カイが眉をひそめる。
フィオナは頷いた。
「そう。大陸南方の連邦国家群。帝国や王国と違い、商人たちが権力を握っている。
その議会が帝国艦隊に物資を流していたということよ」
セレナが息を呑む。
「つまり……彼らは表向き中立を装いながら、裏で帝国を支援していたのですか?」
さらに別の木箱が開けられる。
そこからは公国の紋章が刻まれた契約書が出てきた。
「公国の……大奴隷商ギルド」
フィオナが読み上げる。
「ここに記されているのは……“獣人奴隷一万の輸送契約”」
「なっ……!」
セレナの瞳が怒りに揺れた。
「そんな数の……」
オルドが机を叩く。
「やはりか。帝国だけじゃねぇ……商人も公国も、同じ穴の狢ってわけだ」
カイは拳を握り、低く言った。
「……連邦も公国も、自分たちの利益のために奴隷制度を支えてるってことか」
人魚族の長老が静かに口を開いた。
「さらに記録には、“獣人砂漠都市バルカン”の名がある。
そこから帝国へ奴隷を運ぶ地下交易路が延びているようだ」
「地下交易路……?」
カイが呟く。
フィオナは顎に手を当て、分析する。
「砂漠の地下に張り巡らされた密輸路。表の市場からは見えない“奴隷の大動脈”よ。
そこを潰せば、奴隷商人たちの中枢に直接打撃を与えられる」
場が静まり返る。
やがてセレナが口を開いた。
「この海を救ったように……次は砂漠を。
奴隷にされている獣人族を解放するために」
オルドが笑い、戦鎚を肩に担ぐ。
「いいじゃねぇか! 砂漠で大暴れってのも、性に合ってる!」
フィオナも頷き、冷静に言葉を重ねる。
「私たちの旅は“解放の連鎖”を繋ぐこと。海の次は……砂漠よ」
カイは立ち上がり、仲間たちを見渡した。
「よし、決まりだ。次の目的地は――獣人砂漠都市バルカン。
奴隷商人どもの巣をぶっ潰してやる!」
広間に声が響き渡る。
人魚族も魚鱗族も拳を掲げ、力強く応えた。
「「「おおおおおッ!!」」」




