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第1話 血に塗れた誕生

よければ前作もお願いします。完結済みです。


辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~

https://ncode.syosetu.com/n4443la/1

 世界は、人間のものだった。

 大陸の三分の二を支配する四つの国――アルヴァン王国、ガルディア帝国、ヴァイス公国、ローデン連邦。

 そのどれもが人間至上を掲げ、奴隷制度を当然のように敷いていた。

 精霊も、獣人も、魚鱗も、翼人も、魔人も。

 人間にとっては、金と権力を飾るための道具に過ぎない。


 その夜、ヴァイス公国の辺境領主タルフ侯の屋敷、地下深く。

 血の臭いが染み付いた石造りの実験室に、ひとりの“子”が生まれた。


「……生きている。奇跡だ……! 四種族の血を合わせてなお、死なぬとは」


 錬金魔導師が震える声で報告する。

 鉄檻の中、鎖で縛られた小さな体。

 白銀の髪はまだ濡れ、片目は蒼、片目は紅に光っていた。

 背中には半透明の羽の痕跡。皮膚には細かな鱗が浮かび、異形の血脈を示している。


「見ろ、これが我らが投資の果実だ。――百匹の奴隷を溶かし、百年の研究を費やした結果よ」

 タルフ侯は杯を掲げ、恍惚と笑った。

「キメラの子供、売れば国庫をも凌ぐ富が手に入る。だがまずは……実験だ」


 子は泣かなかった。

 生まれ落ちた瞬間から、ただ黙って貴族の瞳を睨んでいた。

 その瞳に、侯爵は一瞬たじろぎ――そして嗤う。


「いいぞ。奴隷は牙を剥くほど、高く売れる」


 だが、次の瞬間。

 子の胸に刻まれた魔法陣が脈打ち、石床がひび割れた。


「な、何だ――」


 爆ぜるように鎖が弾け飛ぶ。

 小さな拳が振り抜かれ、魔導師の頭蓋が粉砕される。

 血飛沫の中で、誰も理解できなかった。

 ――生まれたばかりのはずの“子”が、人を殺した。


「怪物め……! 捕らえろ!!」


 衛兵たちが雪崩れ込む。火球の魔法が檻を焼き、刃が閃く。

 だが幼い混血の体はすでに獣のように跳躍し、血の雨を撒き散らした。

 蒼と紅に交互に光る瞳が、夜の闇を照らす。


 ――それが、カイ・ノクトの誕生だった。

見ていただきありがとうございました。

良ければ、感想やリアクションなどいただければ、大変うれしいです。

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