Pt.3 エリオットの物語は続く。やっと、ウォーターヒルにある目的地に着きました!
やっと辿り着いたウォーターヒル!そして、エリオットの悲しい過去。過去と現在が少しずつ繋がれてゆく。
初心者である私の作品ですが、楽しく読んでくれたら嬉しいです!;3
きっと何も知らない人が彼らを見たら、彼らが兄弟であると答えたのだろう。それほどに、ふたりは自然で、強く結ばれていた。
それから2年間、エリオットとジョンは彼らの秘密基地となった小さな名のない湖やその周辺で遊び続けた。
人がいなくて静かな落ち着いた美しい場所であった。
何があってもここだけには誰も寄りつかないのだろう。
きっとこれからも。夏は泳ぎ、春や秋にはサッカーをしたり、ツリーハウスを作ってみたりした(素材が足りなくて、結局は上手くいかなかったけど)冬には小山から自作のソリ(これもすぐに壊れたけど楽しかった)などで滑ったりした。
また、エリオットを守るために学校によく来るようになったジョンは勉強に励んだ結果、誰もが信じられなかった進級をした上に、2学年も飛び級をして7年生になることができた、16であった。エリオット自身は3年生、10歳になった。
季節が秋になって、雨の日が増え始め、ジメジメしていた頃、ジョンと遊びに出かけようとすると、とても幸せそうなお母さんがエリオットに言った。「お父さんが結構いい仕事をみたけたの!」
エリオットはとても嬉しかった。最初だけは。
お父さんはその時、ものすごく大変な仕事をしていて一緒にいる時間が短かったからだ。
しかし、次にお母さんが言ったことはエリオットをとても心配させて、悲しい気分にもさせた。
「だから、シカゴに引っ越すのよ!」。頭の中が真っ白になった…お母さんの言葉が何度も響く…そんな…ジョンは...?お母さんは相変わらず笑顔だった…。エリオットも笑いたかったけど、無理だった…。
これをどうジョンに伝えようか…。エリオットはお母さんが何かを言う前に家を飛び出して、湖へと走り出した。涙が溢れ出した。頭はガンガンとなっていた。
何度か人にぶつかりそうになったり、水溜りにも突っ込んだけど、どうでも良かった。何も変えることはできないと分かっていたものの走り続けた。
顔が涙だらけで、そこらじゅう泥だらけの息を切らしたエリオットを見たジョンはとても驚いた。
「エリオット?どうしたの!?」「うわああああぁぁぁーーーあぁーー!」エリオットは何も言わずにもっと泣き出してしまった。
「お、おかあ、お母さんがい、いったのぉー、グスっ…おと、お父さんが…あ、あたら、新しい、し、仕事を…見つけたの…」「え?それっていいことじゃん?何がダメなんだい?」エリオットはもっと大きな声で泣き出した。「ひ、ひ、ひっこっすのおおぉぉー!」ジョンは一瞬固まった。「そうか…」これ以上は何も言わずに彼らは泣いて抱き合った。
空を照らしていた太陽は、いつのまにか雲に隠れて、最初は静かに、やがて激しく雨が降り始めた。
それから2週間後、エリオットは引っ越しの準備も終え、車の後部座席に座っていた。
空はどんよりした灰色だった。今すぐにでも雨が降り始めそうだ…。
エリオットはたくさん泣いたせいで目が腫れていた。もうすぐ出発だ…。なのに、ジョンは来るって約束をしたのに、なかなか来ない。心配にもなったくらいだ。来ないのかな?いや、でも約束をしたから…絶対に来るよ……。
少しすると、遠くの方から全力でこっちに向かって走ってくるジョンの姿が見えた。
両親は今、トレーラーの中に見落とした物はないかと確認をしている。
ジョンはやっと車まで辿り着いた。「はあぁ、はぁ」と息を切らしながら。
エリオットはジョンの姿を見るとまた泣き出した。ジョンは無理な笑顔を作った。
「おおい、泣くなよ。もちろん悲しいさ、でも最後は楽しく別れようぜ!」
エリオットは何とか涙をこらえようと頷いた「う、うん」そして、頑張ってどうにか感情を抑え込んで泣くのをやめた。「ジョン…僕、悲しいよ…もう会えないなんて…」
「大丈夫だよ、エリオット。君に大切なことを教えようか?」
大切なこと?「…うん」「もう泣かない?」「うん…」
「誓うのかい?」エリオットはうつむいた。「…うん」
「エリオット………いつも強くあれ。誰かのために強くなることを決して恥じるなよ?いいね?」エリオットは顔を上げた。
「分かった、これも誓うよ」最後に彼らは強く抱きしめあって、ジョンはエリオットの手に自分で木を掘って作った小さなペンダントをエリオットの手にそっと握らせて、エリオットは出発した。
泣かないという誓いは緑色の大きな看板とブルードットを通り過ぎていく時まで守られた。もうひとつの誓い。**「強くあれ」**という言葉は、この先もずっと彼の中に生き続けていくことになる。
エリオットは、あのときジョンからもらったペンダントを今でも大切に首にかけていた。
それは時間を経ても色あせることなく、彼の胸元で静かに揺れている。やがて、小学校を後にし、エリオットたちは自宅地へと曲がって行った。
家の近くに止めてある車の窓ガラスは太陽の光で透き通っていた。
あの車の中はサウナ地獄が広がっているのだろう。街灯には色とりどりの紙がたくさん貼ってあった。
他には変わったところはないようだ。
自宅地の後は森に入った。生い茂っている木々の影のおかげで森の中は自宅地よりは涼しく、居心地良く見えた。エリオットは道路を見つめていた。自宅地を離れてから数分が過ぎた時、字が読み取れない錆びきった看板が見えてきた。エリオットを別として、その看板に目を向けた者は誰もいなかった。
読み取れないし、意味がないからだろう。しかし、エリオットには読めた。字は記憶の中に存在する。この看板には「ウォーターヒルトレーラーキャンプへようこそ!」と書いてあったはずだ……。
エリオットが小さい頃に住んでいた場所……そこに向かうボコボコの道路の茂み具合を見れば、そこには今は誰も住んでいないことが分かる。
「あと、10分くらいでつくわよ!」とガビが元気よく言った。
10分後、彼らは森から抜け出してやっとキャンプ場に着いた。キャンプ場には彼ら以外の人が1人もいなかくて、眩しい太陽に照らされて枯れた草だけが生い茂っていた。
「ほらぁ、あそこの家だ」とケビンが一番奥にある家を指差して言った。結構眠たげな声だ。
数時間運転したから、しょうがないけど。その家は、結構大きめの丸太小屋であった。何で俺は丸太小屋と来れば、ホラー映画しか頭に浮かんでこないのだろうか?…どうでもいいけど…。
窓に打ち付けてある板のせいで、まるで廃墟のようにも見えた。
まあ、頑丈そうだし住めそうではある。周囲に並ぶ他の丸太小屋は、すでに朽ちていて、窓ガラスが割れていたり、壁が崩れかけていた。
エリオットが小さかった頃、ここはとても人気のある場所であった。このキャンプ場に向かって、沢山の観光客が車を走らせていた。あの広がった噂のせいで…こうなるとは…何だか悲しい……まだ、ここで家を借りれるとは。それには驚いた。
ケビンは草が周りよりも生い茂っていなかったところに車を停めた。
「ほら、着いた。降りろ、おめえら」ケビンの声でみんなは指示を待っていたかのように一斉に車を降りた。
家の中に入るのが楽しみで仕方がなかったのだろう。俺だって中がどんな感じなのかが気になる。
エリオットは家の方に向かっているみんなについて行こうとした。
外は暑いし、早く中に入りたいな。クーラーがあるといいな…待て、あるわけがないじゃないか?こんな廃墟みたいなところに。扇風機はありそうだけど。
エリオットは車の方に戻って行った。自分の荷物を忘れてしまったのだ。車の中を覗き込むと、エリオットは呆れたような顔をした。
みんなも忘れてきてる。もう、誰がこれを運ぶと言うんだ?
エリオットが自分の荷物を持って、家の方に歩き出すと、「おい!エリオット!」とケビンとジェイコブに呼び止められた。「おめえさぁ、荷物を家に運んでこい。いいな?」ジェイコブがニヤニヤ笑いながら言った。
エリオットは、仕方なく頷いて車の方へ戻って行った。ここで従わなかったら、ウンザリするくらいの悪口を言われるだろう。気分を害して欲しくないし、こんなことくらい安いもんだ。
トランクを開けたエリオットはため息をついた。荷物は…とんでもない量だ…(エミリーは何と三つものバックを持ってきていた。そのうち一つは化粧品だけで1kgくらいはありそうだ...。
荷物をせっせと運んでいると、ガビが近づいてきて真面目な顔で声をかけてくれた。「居ないと思ったら、ここに居たのね…わあ!これを全部運ぶの!?あなたって優しいよね。でも、すごい量よ…手伝うわ」。エリオットは顔がカッと熱くなるのを感じた。ガビに優しいって言われた…。話しかけられた…。心臓がバクバクとうるさくて、ガビに聞こえるんじゃないかと不安になるくらいだった。
すると、ガビがエリオットを急にこっちを見つめて近づいてきた。
心臓の音はもっとうるさくなって、顔はもっと熱くなるのをエリオットは感じた。
「エリオット…」ガビは優しく言った。「な、なあに?」エリオットは全力で平気を保とうとしていた。無理だと分かっていても。
「あなた…顔がトマトのように真っ赤よ…?ちょっときて」ガビはエリオットのおでこに触れた。
エリオットは一歩下がったが、ガビも一歩前に出た。
ガビの顔の表情が真顔から小さな驚きに変わった。「まあ!ひどい熱!やっぱりね…なんかおかしいって思ったのよ…熱中症じゃないのこれ?」「ち、違うよ…俺は平気だよ…」ガビが怒ったような顔をして、言った「もう!嘘つき!早く家に行って休みなさい!」ガビの声から、彼女が本当に心配をしているのが伝わってきた。
だから、もうこれ以上ガビに心配をかけたく無かったからエリオットは荷物を置くと、家の方に歩き出した。
ドアは「ギィィ」と古びた音を立てて開いた。
ソファに座っていたケビンとジェイコブがエリオットが入ってくるのを見て一斉に顔をエリオットの方に顔を向けた。「おい!エリオット、おめえさぁ仕事を任されたんなら最後までやれよ」とケビンが苛立ったような顔をしながら言ってきた。嫌な事を言われるだろうと思っていた矢先、ガビが家の中に入ってきた。
「ケビン!!何で私とエリオットだけに全てを任せるの!?あんた強いんでしょ?荷物を運ぶのを手伝って!後は…そう…クリス!エリオットを診てくれる?熱が出てるみたいなの!」キッチンの方から「オッケー」とクリスの明るい声が聞こえてきた。
クリスは救急救命士の息子であって、さらに父親みたいに将来は人々を助ける仕事に就きたがっていたので、病気や怪我についてかなり詳しかった。
ガビが外に出ていった瞬間、ケビンがこちらを鋭く睨みつけてきた。
まるで、殴られるんじゃないかと思うほどの怖い顔だ。「……覚えとけよ」低く、冷たい声だった。
エリオットは身体の奥がひやりと凍るような感覚を覚えた。
こんなに怖いケビンを見たのは初めてだ…アイツは普通、悪口を言うだけで何もしてこないけど……気をつけよう…。
クリスが冷たい水の入ったボトルと念の為に持ってきた救急キットを抱えてリビングに入ると、ケビンは睨むのをすぐにやめてガビを手伝いに外に向かった。
クリスは喜んでエリオットを診てくれた。彼って本当に面白いやつだ。
診断(と呼ぶべきか?)の途中でも面白い話(勉強になる)を沢山してくれた。例えば「2人に1人は人生で一度は癌になるんだ。だから、チャンスがあるんなら確認をした方がいいんだ」など。エリオットはそれを聞きながら、静かに頷いていた。
古い水銀製の温度計は37.6を指していた。「そこまで酷くないし、安静にすればよくなるよ」というのがクリスからの診断結果であった。
安静とは自分の部屋に行って寝ることを意味していたので少しがっかりした。もう少し、見回りたかったのにな…。
でも、ここに来る途中、一度もちゃんと寝れていなかったことを思い出すと、それでもいいかと思えた。
特にケビンやジェイコブに合わなくて済むのならば…。アイツら何だか怖いし。明日になれば、今日のことなんて忘れると思うけど。
このパートを書いていた時に思ったんだよね。私はこの物語が好きだなーって。読んでくれたらみなさんもそう思ってくれていたら、幸せですね:D
ここではまだホラーっぽいことは出てきてはいないけど、ちゃんと出ますよ!=)