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過去の影  作者: Brightlight
13/16

Pt.13 温かい冬

エリオットはキャンプ場にたどり着く。そこでは仲間との温かいひと時が彼を待っていた。

廃工場で起きた出来事が思い出される。

リオットは笑顔になって見せた。クリスの顔にはわずかな疑念が浮かんでいた。

「早く入って、蚊が入るよ!」家の奥からガビの少し怒ったような声がした。

エリオットは家の中に足を踏み入れた。俺は戻って来れたんだな…。

ケビンとジェイコブはソファで何かについて話し込んでいて(ふりをしていた)、エリオットには目もくれなかった(みんなの前だったからだと思う)。

エリオット自身は酷くお腹が空いていたので、夕ご飯を食べる事にした。ちょうど今日の分の残り物があった。

カボチャスープだ。今日の料理担当はエミリーだったらしい。

エリオットは冷え切ったスープを古びた電子レンジで温めて(温めている間にはみ出している銅線から火花が少しだけ散った。燃えないことを祈ろう……)から、恐る恐る口の中に運んだ。

確かに美味しいけど調味料を入れすぎたのか、奇妙な味がした。

カボチャスープなのにカレー粉とブラックペッパーを混ぜたのかな……?知らない方がいいかも。

エリオットが食べ終えて自分の部屋に行こうとすると「ねえ!エリオット!」とエミリーがエリオットを呼んだ。「何?」エリオットが振り返った。「見て!」エミリーは埃っぽいボロボロの箱をエリオットに見せた。

とても古いボードゲームだ。

「物置で見つけたんだ!みんなを呼んできてくれない?」「…何のために?」

「もう!みんなで遊ぶために決まっているでしょ!」「オーケー」エリオットはまずはガビとクリスを呼んだ。

彼らは結構ワクワクして遊ぶ事に賛成をした(人間はやる事が無ければ、何にだってワクワクをするのかも)。

マイクは自分の部屋でコミックを読みながらポテチを食べていた。

彼はエミリーの提案をクリス達と同様に喜んで受け入れた。

最後に残ったのは……ケビンとジェイコブだ……。エリオットはしばらく動けなかった。呼びに行くべきなのは分かっていたけど、体のどこかが警鐘を鳴らしていた。

エリオットはゆっくりとケビン達が座っているソファへと近づいた。

今度は確かに何かについて話し込んでいた。

エリオットにあんな事をした後なのに…こんなに平然と……できるだなんて………エリオットは足が鉛のように重くなるのを感じた…。

勇気を振り絞った。「あの、け、ケビン…エミリーがヴョ、ボードゲームをあ、遊ばないかって聞いてたよ…」

「あんな子供っぽい物はおめえらが遊んでろ」ケビンは顔も上げずにイッラとした声で答えた。


エリオット達は寝る前の時間をたくさん笑って、過ごす事が出来た。

エミリーが見つけたボードゲームは本当に面白い物であった。最初にゴールに辿り着くのも大切だったが、ポイントを一番多く集めた人の勝ちだ。人生ゲームみたいな感じ。

3回も「最初から」というマスに立ってしまったマイクは絶望していて、みんなは彼をからかうように笑っていた。

そのマスに立ってしまったらポイントも全て奪われてしまうというものだ。

リードをしているのはエリオットであった。ポイントの数ではだが。エミリーはもうゴールにつきそうだ。

今もみんなはマイクの4回目の「最初から」に、爆笑している。

クリスは面白い冗談を沢山言ってくれたし、ガビは笑えるような小さい頃の話を沢山してくれた。エリオットは何度も心から笑う事ができた。心の痛む傷が少し、塞げた気がした。

ケビン達は楽しそうにしているエリオットに冷たい視線を向け続けた。あの時のエリオットはそれを気にも、とめなかった。

ボードゲームで過ごす1時間はあっという間だった。

ボードゲームで勝ったのは驚くべき事にガビであった。

最後の最後で一つしかない+50ポイントというマスにたどり着いたのだ。

ガビは歓声を上げていた。エミリーは悔しそうに「おめでとう」とガビに囁いた。

マイクは表情を変えずに床を見つめていた「俺は何でこんなに運が悪いんだ…」。

寝る前にアップルジュースを飲むと、みんなは2階に上がって行った。

エリオットもケビン達とリビングルームに残らないように急いで2階に上がって行った。

部屋に戻ると、倒れるようにしてベッドに潜った。彼の顔はまだ笑っている。

嫌なことも多かったけど、みんなとより仲良くなれた。それは素晴らしいことだ。

ガビともより仲良くなれた…それは幸せな事だ。

この日は何があろうと、エリオットの心の中では素晴らしい日として、残るのだろう…。

しかし、不安も少しだけ浮かぶ……俺らは本当にあの廃工場に行くのか…?

でも俺には仕方のないことに、止められない事だ。絶対に来る未来だ。

廃工場といえば……全てが……暗いわけではない…。

エリオットは目を閉じた。



寒い…沢山の雪が積もっていて、耳元で風のひゅうひゅうという音がする。

首のところに雪が入った気がした。

エリオットはお母さんが編んでくれた紅色のマフラーをもう少しキツく巻き直した。

どこかで誰かが自分を呼んでいた気がする。

いや、風の音だったのか?

エリオットは弱い吹雪の中をまるでコミックに出てくる、ジャングルの探検家のように進んでいた。

迷ってないと良いけど……。

雪に足を取られて前に進むのが難しかった。道路ではない森では雪が腰まであった。

セーターのせいで体中がチクチクする。このセーターもお母さんが編んでくれたものだ。

エリオットのお気に入りの青色のジャンパーも非常に重たい。

エリオットはひたすら前に進み続けた。やっぱり迷ったのかな…?

でも、そんなはずがないもん!ここには詳しいんだから!

靴の中に雪が入った。歩くたびに「ビチャビチャ」という音がする。

寒いな…ママは今年の冬はサンタさんが沢山の雪を降らしてくれるって言っていたな…でも、こんなに沢山の雪はいらないや。

後で少なくして欲しいってサンタさんに言わなきゃ!しばらくすると、前に誰かの黒い影が浮かび上がってきた「…ジョン!」

ジョンはエリオットに呼ばれて振り返った。エリオットより薄い服装をしていて、鼻と耳はピンク色だ。

「遅かったじゃないか、エリオット!僕、心配したよ」「ごめんごめん、コーンフレークを食べていたんだ」エリオットが顔を輝かせながら答える。

「それは、美味しそうだね」ジョンが優しく言った。「うん!」

ジョンは手に持っていているダンボールをエリオットに見せた。四角くて、ビニールテープが沢山貼られていて、青色のマジックで「雷」と書いてある。

カッコいい!まるで、あの映画に出てくる宇宙船のようだ!!僕らも宇宙人と戦うんだ!エリオットの顔がもっと輝いた。

「じゃあ、行こうか!」「うん!」ジョンはエリオットのスピードに合わせて歩き出した。

エリオットは何度も雪に沈みかけそうになったりした。

ジョンが手に持っているのはダンボールで出来ている、自作のソリだ。

「これで滑るの?」横からエリオットの声が微かに聞こえる。今日は風が強い。

「ああ、そうだよ。おチビさん」ジョンが出来るだけ大きな声で答えた。

エリオットはワクワクした。前のソリはすぐに壊れちゃったから、これは長持ちするといいなぁ。2回滑っただけですぐに壊れちゃった…。

エリオットはジョンに手を引かれて何とか風と雪に負けないように前へと進んでいた。

小山に着いた時、彼らは雪だらけになっていて、吹雪は強くなっていた。

エリオットは疲れて、木に寄りかかった。すると、木の上から沢山の雪が落ちてきた。

その様子を見ていたジョンは声を上げて笑った。エリオットがジョンを睨みつけると笑いは止んだ。その笑いは響いてたちまち吹雪の音でかき消された。

2人はゆっくりと小山に登り始めた。今日はいつもより登るのが大変だな…雪が深いし、風も強すぎる。

まだ小山の4分の1を登っていないというのにエリオットの息は切れかかっていた。

2人は休憩を少しだけ重ねながら長い時間をかけて、やっと小山に登った。

雪と強い風がなかったら、町の中心らへんにある給水塔が見えるというのにな……。

ジョンは空を心配そうに見上げる。

「ねえ、ジョン?早く滑ろうよー」「……今日はダメ」「え、何で?」「早く家に帰ろう」

「何で?せっかく登ったのに…」「吹雪が強くなっている」「それの何が悪いの?」

ジョンは少し怖がっているように見えた。「前が見えなくなって家に帰れなくなるんだよ、おチビさん」

ジョンはせっかく作ったソリを「また、作ればいいんだよ」と言って小山にその場にそのまま置いていき、エリオットの手を引いて町へと歩き始めた。

エリオットはガッカリしたけど、ジョンに従った。また、ジョンのテンポに追いつくのに一生懸命だったから、文句を言う時間なんてなかった。

しかし、吹雪がひどく強くなっていて、湖のところに着くころには目の前がほとんど見えない状態であった。

「ねえ、ジョン…僕、さ、寒いし、怖いよ」エリオットの手が微かに震え始めていた。

ジョンはその様子を見て、必死にエリオットを落ち着かせようとした。「大丈夫だよ…僕がいるから」

そんなことを言いながらも、ジョンはこのままだと家に帰ることはできないと悟って、立ち止まってしまった。

避難をする場所を見つけなければ…2人はここで凍え死んでしまうだろう…。

ジョンはママが生きていた頃……冬のキャンプに行ったことがあった。そこで森に迷って吹雪はどれくらい危険であるかを学んだ。

横からエリオットの震えている声がまた聞こえる「ねえ、ジョン…僕、寒いよ…サンタさんに言ってあげないと」「雪を止めてってお願いしなきゃ」エリオットはそう言いながらジョンの手をより強く握った。

ジョンは微笑んで見せると、できるだけ陽気な声で答えた「そうだね、僕の代わりにもお願いしてくれないかな?」

エリオットの青い顔が輝きを少しだけ取り戻した「いいよ!」ジョンは湖の反対側を見た。

湖の向こう、雪の向こうに、影のような建物がかすかに見えた。それは、町はずれにあると聞いたことのある、古びた廃工場だった。

ジョンはエリオットの手を引いて、廃工場に向かっていた。

「ねえ、ジョン」またエリオットの声がした。吹雪が強すぎて顔は見えないけど。

「何だい、おチビさん」「サンタさんにお願いをしたよ…でも雪は止んでくれない、どうしてだろう?」

「きっと風のせいで聞こえなかっただけだよ」

ジョン達は廃工場に段々と近づいて行って、ジョンの唇は微かに震えていた。

建物はコンクリートの外壁がひび割れ、窓は板で打ち付けられている。まるで死んでいるようだ。

背後からまたエリオットの声がする「あの建物ってなあに?」「……廃工場だ」

「え…?お、お化けがいるところ!?」エリオットが一歩下がった。

「あそこにお化けはいないよ」ジョンは出来るだけ冷静に答えた。

もちろん、俺も怖いさ。でも、外にいる方がずっと怖い。

「で、でも、ま、ママはい、居るって言ってたよ!」エリオットは納得のいかない声で言った。

「寒くてジャックのピザ屋のかまどに逃げちゃったと思うよ!」ジョンが必死に答えた。

「そ、それなら…」エリオットは何歩か前に出ると、また立ち止まってジョンを見た。

ジョンも立ち止まってエリオットを見た。顔はよく見えないけど。

エリオットの声が酷く震えている「ぼ、ぼく…あそこ怖い…」ジョンは優しく微笑んで言った「大丈夫、残ったお化けは僕が追い出すから」「…」「僕を信じて」「……分かった」

2人は廃工場の中に入って行った。

彼らが入って行った建物は燃えなかった方だ。

中は薄暗く、床の水たまりには雪で白く輝く窓が映っていた。

それに、まだ機械が残っていた。どれも、古くて錆びていて、使えそうには見えない。今すぐにでも飛びかかってくる怪物のようにじっとして動かない。

エリオットはジョンにピッタリと張り付いていた。だから、恐怖と寒さで震えているのがジョンにも伝わった。

工場に避難をしたのは良いけど、このままだと工場の中で凍え死んでしまう。

ジョンはまず、雪の入らないような乾いた場所を探すことにした。

最初に見つけた部屋に入ってみる事にした。「セキュリティルーム」と薄れたペンキで扉に書いてある。

何とか、錆びて動かない扉を押して開けた。

中には沢山の四角いテレビと画面が割れた、黄色くなった白色のパソコン一つだけ机の上に置いてある。

机の近くの破れたポスターには「ナイトシフトはどうですか?」薄れた字で書いてある。

木でできた椅子は腐っていて、座ったら落っこちそうだ。部屋の奥には雪が積もっていた。

壁に空いてる穴のせいだ。

……ここは寒いからやめよう。

次に入った部屋は職員の休憩ルームであった。

中は薄暗く、床は欠けていて壁に貼ってあるチラシはボロボロで何も読み取れなかった。

また、ソファがあって木で出来たテーブルと椅子があった。ジョンにとってこれは好都合だ。

エリオットをソファに座らせると、まずは少しだけ窓を開けた。

その後は椅子とテーブルを壊し始めた。エリオットはその様子を顔を青くしてとても怖がって見ていた。

家具の破片を小さな山と大きな山に分けて置くと、ジョンはポケットの奥底にしまい込んであったマッチを取り出した。よかった…濡れていない。

「シュッ」マッチを擦って家具の破片の小山に投げ入れた。

しばらくすると、弱い炎が出てきた。

こんなに小さくて弱そうなのに、その炎はジョン達の心を温めてくれた。

暗くなっても、吹雪は続いた。

2人はその廃工場で家具を燃やしながら、夜を過ごすことになる。





これも、投稿するのが遅かったですね…。m(_ _)m

パート14はできるだけ早く投稿するように努力します!

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