Pt.12 恐怖とは?
本当の恐怖とは何なのか?目に見えないお化け?人々に紛れる人狼人間?闇に潜むバンパイヤ?それとも……………
人間…?
エリオットが乗り込む少し前、ケビンとジェイコブは何かをヒソヒソ話し合っていた。何かを企んでいたようだ…嫌な予感しかない…でも、今は町にいるし、キャンプ場も近い。だから、安全なはず。心配をする必要はないさ。きっと決してね。
出発をしても、ケビンとジェイコブはエリオットに話しかけるわけでもなく、ずっと押し黙っていた。
エリオットは何とか場を和らげようと「き、今日は、い、いい、て、天気だね…」と言ってみた。
しかし、ケビンは何も答えなかった。ジェイコブは頷いただけ。
吃ったから良く聞き取れなかったのかな?
また、ジェイコブはエリオットの隣に座った。
エリオットはできるだけジェイコブから離れて座るために窓に張り付くらいに寄った。
幸いな事にそれ以外におかしい事は一つもなかった。
だから、エリオットはすっかり安心してしまった。そのまま木々や空を眺めていた。
彼らがキャンプ場への入り口へと曲がらないで、そのまま前に進み続けた事にさえ気づかずに……。
初めておかしいと思い始めたのは、森の中を結構進んでいるというのに、中々キャンプ場につけないという事だった。
「け、ケビン、俺たち、き、キャンプ場に曲がる所を逃しちゃったんじゃない?」
「いや、別に」そこでケビンが初めて口を開いた。彼は恐ろしいほどの真顔だ。
感情が一つもうつっていない。エリオットはゾッとした。何かがおかしい!明らかに違う!
エリオットは喉の奥がカラカラに乾いていくのを感じた。
そして、できる限り落ち着いた声でケビンに言った。
「や、やっぱり…ま、曲がる、つ、と、ところをの、逃しちゃったよ……」
「そんなわけねえだろ」隣からジェイコブの声がする。
「け、ケビン……お、お願い…車を止めて」
しかし、ケビンは聞こえなかったかのように、前を見て走り続けた。
隣に座っているジェイコブはニヤついている。エリオットはもっと大きな声で言った「ケビン、車を止めて!」
また無視された…。エリオットはジェイコブが少しずつこっちに迫ってくるのを横目で見ていた。
その時はもっと焦り始めた。「ケビン!今すぐに車を止めて!今すぐ!」ケビンはやっと答えた「やだね…」低く、笑っているような声。エリオットの全身から血の気が引いていくのが分かった。
指先が冷たくなり、心臓の音だけがやけに大きく響いている。
エリオットは、もう構ってなどいられなかった。車が動いていようと、もうどうでも良かった。
ドアに手をかけ、勢いよく開こうとした…が、隣に座っていたジェイコブの方が反応が早かった。
「どこ行くんだよ、バカ」「落ちるぞ?」彼はエリオットを後ろから取り押さえた。
「やだ!今すぐはなせ!!はなっせー!」エリオットは必死に暴れた。
手も足も動かして、何とか逃れようとした。
……しかし、ジェイコブには敵わなかった…ジェイコブの方が力が強く、小柄なエリオットとは違って、がっしりしている。
だから、ひたすら叫び続けた「はなせ!俺をはなせ!やだ!た、助けて!!」
そしたら、ケビンが怒りながら叫んだ「うるさい!!おめえ、今すぐ黙らないと、車から放り出すぞ!」
エリオットは暴れるのをやめた………別にもう力が残っていたわけでもないし……俺はどうなるのだろうか…………。
廃工場にいるマシューはボイラー室の「出口」と書いてある扉の前に立っていた。
埃っぽい匂いが鼻に刺さる。この扉の先には何があるのだろうか…?
子供の時に読んだコミックに出てくるモンスター?お化け?…それとも警官であるマシューが向き合うべき、現実にしか存在しないような恐ろしいものなのだろうか……?
マシューは右手で拳を握りしめると、扉を開けた。幸いな事にちゃんと開いた。
「ギィィ」という錆びたドアの音が鳴って、マシューは思わずに身構えた。
大丈夫…誰もいない。ドアを開けるとマシューは息を深く吸い込んで、ボイラー室を後にした。
長いこと、ジェイコブに体を押さえつけられていたせいで、呼吸が浅くなっていた。
胸が苦しい。頭がぼんやりする。けれど、それでも…彼は勇気を振り絞って聞いてみる事にした。
「お、俺を、ど、どこに連れて行く気なの……?」小さなかすれるほどの声だった。
でも確かに、エリオットは言った。
しかし、ケビンは「黙らなかったら、どうなるか教えなかったっけ?」と聞いてきただけであった。
ケビンの声は、ナイフのように冷たく鋭く、背筋を刺した。
ここで下手に怒らせてはいけない…。「ご、ごめん…」エリオットは額から汗が滴るのを感じた。
「黙れって言ったはずだ」ケビンの声はより怒って聞こえたから、エリオットは押し黙った。
ジェイコブがもっとキツく抑え始めたから、喋ることさえが難しくなったからでもあるけど。
彼は怖かった…エリオットは今、完全に無防備だ……彼らは何だってできる。
でも、彼らは子供だ。やっていることを理解していない子供だ……。彼らはエリオットを殴ったり、エリオットに悪口を言ったりすることができる。でも、それ以上のことはできないんだ。
エリオットは心のどこか奥でそう分かっていた気がした。それがただ一つの希望。
きっと彼らはエリオットにそんなに酷いことをしないはずだ。彼ら自身が怖がっているから。
とエリオットはぼんやりと考えていた。
すると、後ろからサイレンが聞こえた。エリオットの心の中では希望が一気に膨らんだ。パトカー......!
後ろから赤と青の光が微かに見える。
ケビンは「チッ」と言いながら車を止めて、ドアにロックをかけた。
とても苛立ったような顔だ。ジェイコブは近づいてくる警官を見て、やっとエリオットを離した。
「はあ、はあぁ」とエリオットは何度も空気を深く吸い込んだ。
あの警察官が近づいてきた時に助けを呼べばいい。
それだけだ。大丈夫…だいじょ……横に座っているジェイコブはエリオットの腕を痛いほどぎゅっと掴んで「黙っとれよ?」と小さな声で言った。
声は小さかったのに、心臓が飛び跳ねた。「何かを言ってみろ、どうなるか分かってんだよな?」ジェイコブはエリオットにしか聞こえないように、耳元で繰り返し囁いた。
エリオットは恐る恐る頷いた。
警官が運転席の方に近づいて、窓を軽くノックした。
彼の鼻は尖っていて、目つきが鋭い。何故か数学の先生に似ている気がする。
くしゃくしゃな白髪だけは似てないけど。
ケビンは勢いよく窓を開けた。
「どうかしましたか?」ケビンは警官を睨み付けながら言った。
「いや、すまんなぁ、ただ、今は物騒だし、上司にここを通る全ての車を確認するように言われてね…」
めんどくさそうな声だ。エリオットは喉の方で何かが込み上がって来るのを感じた。
助けて欲しいのに…でも…言えない……隣にはジェイコブがいる……
「そりゃあ、大変だろうな」「まあね」警官は後ろに座っているエリオット達の方に目を向けた。
「そちらの連れはお友達かい?」
「そうだ」ケビンがブスっと答えた。
「左の子は大丈夫かい?体調が悪そうに見えるけど?」エリオットはバックミラーに映った自分の姿を見た。
かすかに震えていて、顔は真っ青だった。今すぐにでも吐きそうな表情をしている。
「ああ、ただの車酔いだ」ケビンは一瞬、エリオットの方を振り返ってから答えた。
「…そっか、じゃあ気をつけるんだぞ。後は、暗くなる前に家に戻れよ?」
そう言い残して警官は去って行った。警官が車から離れていく。
ゆっくりと、でも確実に。
「……チッ」ケビンが舌打ちした。「お前、マジでバレかけてたじゃねぇか」
エリオットはまるで崖から放り出されたような気分になった。
1時間くらいは走り続けたと思う………もう、ここがどこであるかさえ分からなくなっていた。
もうウォーターヒルを出たのかもしれない。いや、確かに出たと思う。ウォーターヒルは小さい町だ。
周りには森が永遠と広がっている。人がここに住んでいるような形跡はゼロだ。
……すると、ケビンは車を止めた。
恐怖がジワジワと波のように押し寄せてくる。さあ、何をする気だ?
ケビンはドアのロックを解除すると外に出た。
ジェイコブは再びエリオットの腕を痛いくらい強く掴むと、ドアを開けて一緒に出た。
しかし、エリオットは最初から逃げる気なんてなかった。
逃げる場所なんてない。森に逃げ込んでも良いけど、迷っておしまいだ。
森に入るよりはコイツらといた方が安全だと思う。
だから、抑える意味なんてないさ。ケビン達の方がエリオットよりは足が速いに決まってるし。
ジェイコブはエリオットを道路の端にエリオットを連れてくると勢いよく押した。
エリオットは前に倒れてしまった。怪我をしている手の平で着地をしてしまったので痛かった。
彼らは今エリオットを囲んで、立っている。もう、終わりかもしれない……。周りには、何もない。森とその中に潜む何かだけ。
「ここで諦めて何になる?」頭の奥で声がする。
そうだよね…..…決して諦めない……それが強いというんだろ?なら、俺は最後まで戦う。
エリオットが立ちあがろうとすると、ケビンがニヤつきながら言った「おめえ、明日の昼の12時までにキャンプ場にたどり着いたら許してやってもいいよ?」
エリオットは震えているが、怒っている声で聞いた「俺は何かをしたの?」
「うざいんだよ」ジェイコブが答えた。
「何が?」「おめえは何勝手にキャンプを楽しんでるんだよ?俺の指示に従わないで?」とケビンはとっても怒った様子で言った後、エリオットの腹あたりを一回蹴った。
鋭い痛みが走った。
エリオットはそこを押さえて座り込んだ。
その間ケビン達はエリオットを置いて、車で走り去った。車は遠ざかっていけば行くほど豆粒のように小さくなっていった。エリオットは絶望と自由、安堵を感じた……。
外は暗くなり始めている。クリスは心配そうに窓の外を見つめていた。
エリオット達はなかなか戻らないな…ケビン達と町全体で財布を探し始めていないといいけど。
それとも、道に迷ったのかな?エリオットはここの地域をよく知っていそうだけど。
キャンプ場の入り口付近からこっちを眩しく照らしてくる、ヘッドライトを見た時には安心した。
あいつら、やっと帰ってきたんだな。クリスはドアを開けに向かった。
しかし、家に入ってきたのはたったの2人だった。
ケビンとジェイコブ……。
「ねえ、エリオットはどこ?何でこんな遅くに帰ってきたの?」ガビが先に鋭く聞いた。
ケビンは全てをよく説明してくれた。
「実はね…財布を見つけた後、町でエリオットが昔の友達とであって、そいつの家で少し遊んだというわけだ」
「それでエリオットは?」クリスが鋭く聞いた。
ケビンがすぐに答えた「あいつら、すっかり話し込んじゃって。エリオットはあいつの家で泊まる事にした」
「本当か?」「もちろん。明日には戻ってくるはず」「えーと…えーっと……友達の名前は…えーと…グレック!そう!グレックだっけな?」ジェイコブは勢いよく頷き出した。
クリスはまだ少し不安だった。エリオットにはジョン以外の友達はいたっけ?
話していないのかもしれないだけ。だから、あまり心配をしない事にした。
エリオットが昔の友達と楽しく過ごせているのなら、それで良かった。
あいつは最近、笑顔になるのが少ないしな。
その頃、エリオットは暗い道路を歩いていた。暗い時に外を出歩かない方がいいというのに……特に町であんな事が起きている時に…。何で俺はいつもこんな事に巻き込まれるんだ?
運が酷く悪い気がする。
もう、ヘトヘトだ…。ダメかもしれない…。
下を見ながら歩いていると、アスファルトが何故か明るくなり始めた。
あれ、?雲に覆われていた月が出てきたのか…?
いや、違うみたいだ。
エリオットは慎重に後ろを振り返った。
ヘッドライト…!車だ!
エリオットは急いで親指をヒッチハイカーのように立てた。
ヒッチハイカーがこのようにして親指を立てて行き先が書いてあるダンボールを持つのを何度か見たことがある。お母さんと一緒にヒッチハイカーを乗せたこともある。あの人は国一周をめぜしていたっけな……。
通り過ぎるかと思いきや、車はちゃんと止まってくれた。
慎重に後部座席に乗り込むと運転席の方から、どこかで聞いたような声が聞こえてきた。
「ここで何をしているんだい、エリオット?」
それは、ジェフであった。あの元警官の。
「まさか、こんな所でこんな時間に行方不明者についての捜査をしているのかい?」ジェフが驚いた声で尋ねた。「まあ、そういう事です」エリオットは苦笑いしながら、嘘をついた。
ここで実は自分が行方不明者になりかけたとは言えないね。
「俺もここで捜査中だ」ジェフが小さな声で自分に言い聞かせた。
運転手がジェフだったので、本当に安心した。
「どこに向かうのかい?」「キャンプ場で下ろして貰えたら…ゴッホ…す、すみません」
「喉が渇いとるのか?ほら、飲みな」エリオットはありがたく水の入ったボトルを受け取って、勢いよく飲んだ。「おいおい、気をつけろ、また咳き込むぞ」「ゴッホ、そうですね」
ジェフの車はキャンプ場に向かう道路を勢いよく走っていた。
「エリオット?」「あ、はい?」ジェフの顔はとても真剣だ。どうしたのかな?
「もう、1人では森に近づくな…いいね?」ジェフの声は低く、でもどこか震えていて、まるで懇願しているようだった。
「はい、気をつけます」エリオットはバックミラーに映るジェフの顔を見た。
……え?…泣いている?
「どうかしましたか?」「いや、大丈夫だ。何にもない」
そんなわけがない。絶対に何かがあったんだ。
「でも…泣いていますよ……」
「こんなにみっともない所を見せてごめんな………」「え?」
ジェフは息を深く吸い込んでから言った「ただ…君は…その…マシューに似てるんだ…」
「マシューって誰?」どこかで聞いたような名前……。「俺の息子だ」「…?」
「彼は結構前に行方不明になったんだ……若かった俺のように警官になって…とても…喜んでいた…」
エリオットはジェフに何を言ってあげれば良いのかがよく分からなかった………。
ジェフは息子を探していたのかな?俺に似ていると言ったな…俺のことをマシューと間違えたのかな…?
マシューといえば行方不明ポスターで見た人だ!
俺が行方不明になった子供の父親であったらどうしたのだろうか………?
ジェフは静かに続けた「こうして、町中を走り回るんだ……見つかるとは思わないけど」「…」
車の中では気まずい沈黙が流れていた。
エリオットはぼーっと窓の外を眺めていた。何も言えない。ただ外を見つめるだけ。
「ほら、着いたぞ」ジェフの声が沈黙を破った。
「ありがとうございます」車はキャンプ場に入り口付近に止まった。
ジェフはもう一度エリオットの顔を見てから言った「気をつけるんだぞ?」「分かりました」
ジェフはエリオットが家の中に入るまでの間、車の中から見守り続けた。とても暖かい視線であった……。
エリオットは遠慮がちに玄関のドアをノックした。
恐る恐る開けてくれたのはクリスであった。「…!?……え、エリオット!?」とても驚いた顔だ。
「うん、そうだよ…」「君は昔の友達の家に泊まるはずだったよな?」
昔の友達?きっとケビン達がそう言ったんだ…「まあね、でも…あの子、気分悪くなちゃってさ…」「それで?」「…その子の親がここに送ってくれたってわけ」エリオットは笑顔になって見せた。
クリスの顔にはわずかな疑念が浮かんでいた。「早く入って、蚊が入るよ!」家の奥からガビの少し怒ったような声がした。エリオットは家の中に足を踏み入れた。俺は戻って来れたんだな…。
遅くてすみませんでした!言い訳ですが、投稿するはずだったパートを消してしまいました。
今は書き直しました!前とほとんど変わっていません!良くなっているはずであることを別として!




