ウォーターヒル。そこはたくさんの物語が始まり、終わりを迎える町。今回は町の暗い歴史に関わった一つの物語が語られる。:3
ウォーターヒルとは全てが始まり、全てが終わる場所。町の歴史の中に潜んでいる影は何なのか?現在の影は何なのか?主人公であるエリオットという少年はその秘密を解き明かすために動き出した。大切な何かを取り戻すために。これは私の初めての人に読ませる物語です!だから、あまり上手くないのを気にせずに読んでもらえたら嬉しいです。デモ版です!!だから、長くはありません!:3
ある、夏には不思議なくらい涼しい日の夕方、マリア・ハンロンは森の近くの木に息子の行方不明ポスターを貼っていた。息子が行方不明になってから3日が過ぎようとしていた。
ウォーターヒル警察署にも行方不明届けを出したものの、この年の子供はよく家出をすると言われて見てさえ貰えなかった。確かに彼は16歳だけど、だからって…。マリア・ハンロンの息子…トーマス・ハンロンはあの恐ろしい事件の最初の被害者であり、もう家に戻ることは一度もなかった…。
周りは真っ暗で静まり返っていた。新人警官のマシューは前を照らしながら慎重に歩いていた。
ライトを持つ手と照らされた物の影が微かに揺れている。古いアスファルトは草で生い茂っていてボコボコであったから、物凄く歩きにくかった。ここのアスファルトを使う人はいないから、しょうがないけど。
今日は初の1人でのパトロールだというのに…パトカーを無事、壊してしまうとは…。マシューは1人で苦笑いをしていた。まあ、しょうがない……あんなに古かったのだから。
この町のパトカーに税金を使ってくれる人もいない。しかし、おかしいよな…この廃工場の近くの道は何故かマシューの他には誰もパトロールをしない。決して。この廃工場への道をパトロールすることにしたのはマシューであった。ここには誰も立ち寄らないから(警察も含めて)、確認しておこうと思っただけ。ここも一応、町の一部だからな。なんだか、不気味だな。汗の滴が鼻を滴る。
「カッチ」乾いた枝が折れた音を聞いて、マシューは急いで振り返った。木々の間の暗闇には誰もいないようだ。しかし…確かめなきゃ……マシューは森の方に歩き始めた。俺は警官だ。怖がってはいけない。
これは俺の選択だ。憧れた若い父さんのように警官になることは……。だから、この町を守るのは俺の義務だ。怖がってはいけない。絶対に…。
後ろから足音が聞こえてくる。マシューはまた思いっきり振り返った。が、遅かった。「ドッスーン」金属の鈍い音が頭の奥から聞こえて、鋭い痛みが走った。「ドッス」マシューは前に倒れた。草と湿ったアスファルトの匂いが漂う。頭の方からゆっくりと流れてくる生暖かい液体の何かの鉄の匂いも。視界の中は少しずつ真っ暗になっていった。
「こーらあぁ!エリオット!授業中に寝ては行けません!」先生の声でエリオットは飛び上がって目が覚めた。
何か恐ろしい夢を見ていたような…今でも手が震えている。
まあ、いいや……。「すみません、ミス・メイソン…」「エリオットが起きた事ですし、授業をつづけましょう。まずは平方根の振り返りをしましょう」ミス・メイソンは黒板に問題を描き始めた。√3+√5。
「エリオット、答えは何ですか?」後ろに座っているジェイコブは「√8だろ?」とエリオットをバカにしている。「何も変わりませんよ、ミス・メイソン」エリオットは落ち着いた声で答えた。
ミス・メイソンは満足げに笑った。「私の授業を聞いてくれる人が1人いましたね、ありがとうエリオット…B +をあげましょう」授業は30分後に終わった。その30分間の間、ミス・メイソンはエリオットに向かって微笑み続けた。
ここは、シカゴにあるごく普通の高校だ(普通すぎるくらいだ)。16歳になったばかりのエリオットは多くの生徒達と比べると目立たない方だ。スポーツができるわけでもなく、勉強が得意なわけでもなく(明らかにジェイコブよりは得意だけど)、キレイな母譲りの緑色の目があるけど、ソバカスがあって髪は茶色。だから、女子達は彼を恋愛対象とはあまり見てはいなかった。やはり、ブロンド髪で目が水色のケビンの方がかっこいいらしい。
残念な事に。彼は人としてはね……。
今日はいつも通りであるはずだった(1人で本を読んで時間を潰すのことが普通だ)、まあ、人気者のケビンに話しかけられる前まではだけど。「おおい。エリオットだっけぇ?おめえさ、ウォーターヒル出身だってぇ?」エリオットは驚いて振り返った。え?俺?何で、俺?そんなわけが…人違いだろ……「耳が聞こえなくなったのかよ?おめえはウォーターヒル出身か?」「ま、まあね」とエリオットが動揺しつつも答える。
ウォーターヒールか…懐かしいな。確かにエリオットはそこに生まれて、10歳くらいになるまで暮らしたっけ。ブランコに湖、ジョン…とても楽しかったな。溢れかえる記憶……。その中には暗い影もあった。
6歳の小さな少年…小さなエリオットはいつも通り父がこしらえてくれたブランコに腰を下ろしていた。
毎日、ブランコに座っているだけ。つまんないや…僕もみんなみたいにレゴとかが欲しいな。飛行機や車とかを作るために!ママはサンタさんが持ってきてくれるって言っていたけど…去年は空気が抜けかけたサッカーボールを貰った。パパは貰った物を大切にしなさいって言っていたから、大切にするけど。
遊べないというわけでもないし。あとは、今はまだ夏だ…クリスマスまでは程遠い。
エリオットは空を見上げると、悲しそうにため息をついた。彼の家は決して裕福ではなく彼の家族はトレーラーの中で暮らしていた。狭いし、自分の部屋という概念が存在しない。自分の部屋?何それ?あり得ないよ。
それくらいお金がなかった。だから、保育園にも通えないし、おもちゃも多くない(サンタさんから貰った物といえば、5個しかない)。でも、いいんだ。僕は幸せだ。ママとパパが帰ってくると、僕と沢山遊んでくれるんだ。
しかし、今は遊び相手がいない。いつも通り僕はここでつまらない1日を過ごすのか…アリンコと一緒に遊ぼうかな……アリンコは可愛いし、僕は好きだな……と思っていた矢先、その日も決して普通ではなかった。
その日、エリオットのところに12歳くらいの少年が近づいてきた。
6歳のエリオットにとっては、その子はとても大きく感じられた。頬にはアザがあった。僕と同じおっちょこちょいなのかな。彼の顔はとても悲しそうだ。どうしたのかな?「だあれ?」少し、怖かったけどその子は優しかった。自分と同じく遊び相手が必要であったらしい。
何故かこの子とは誰も遊ばないんだもの。何でだろう?こんなに面白い子なのに。あの時、エリオットは知らなかった…あの出会いによって彼の人生が変わることを。
「おおい、おめえ聞いとるかぁ?エリオット?俺さ、友達とウォーターヒルのキャンプ場で家を借りたんだ。そんで、おめえに町の案内役をやって欲しいんだぁ」ケビンのイライラした声で現実に引き戻された。
エリオットは1秒たりとも考えずに、その誘いをあっさりと受け入れた。
家に誕生日に貰った錆び始めた赤い自転車に乗って帰っていたときには、必死に両親への言い訳を考えていた。
もちろん、お母さんは承知してくれるはずがなかったので両親には学校の無料の短いサマーキャンプに行くと嘘をつくことにした。スーパーマーケットを通り過ぎて、家の玄関のドアノブを回している頃には手が震えて、心臓がドクドクとうるさかった。俺は今から人生で一番、大きい嘘をつくんだ。
これが最初で最後であるといいな。エリオットはゆっくりとリビングルームに入って行った。
お母さんはテレビでお気に入りの番組を見ている。テレビ番組の名前は「ファミリークイズ」といったものだ。
自分の家族メンバーについてのクイズが出されて、一番多く答えることができた家族が勝ちだ。お母さんは仕事から帰ると、いつもこの番組をつけるんだ。俺はそんなに好きではないけど、結構面白い。
テレビの中の女性には「息子の親友は誰?」という質問が聞かれていた。女性は困ったような顔をしてから答えた「えーと…アランでしょ?」その女性の息子は苦笑いをしながら答えた「違うよママ…アランは違う町に引っ越して、僕の今の親友はトムだよ!」それを見ているエリオットの母は笑い出した。
息子に親友の名前を知らないなんて!!エリオットはその様子を見ながらママも知らないくせに、と心の奥でイッラとしていた。エリオットはお母さんのところに近づくと、やっと絞り出した声で言った「ママ、俺ね学校の短い無料のサマーキャンプに誘われたんだ」お母さんはエリオットが夏を楽しく過ごせる事を物凄く喜んでいた。
「わあ!それは素晴らしい事だわ!しかも、無料だなんて!」エリオットは足元を見た。
もちろん罪悪感はあった…でも、人気な子達と遊べるなんて一生に一度しかないチャンスなんだ…。
ジョンにも会えるかもしれない…。ジョンには手紙を送るどころか、家に電話もないから、数年間話していない。彼の家には電話も手紙を出すお金もないから……。
それは悲しいことだが、キャンプ場についてはケビンの親が費用を出してくれるらしい。俺にもそんなお金がないから。とにかく、準備をしよう。
エリオットはその時、ウォーターヒルで何が起きているのかを知らなかった。知っていれば何かは変わっていたのだろうか…?いや、きっと変わっていなかったのだろう。
人間は大切な何かがそこにある限り、自分に何が起きようとどうでもいいから。エリオットだってそうだ。
彼には心の底から会いたい人がいる。その人に会うためには、自分に何があったってどうでもいい。
その頃、ウォーターヒルの警察署の警察官達は少ししたパニックに陥っていた。
今月だけで、行方不明の子供や大人はなんと4人を上回った。これはもう流石に家出だと言い張ることはできない…………特に大人については……。マシューもどこかに行ってしまって結構長い間が過ぎている。
きっと、森の中で迷ってしまったのであろう。とにかく、この事件はこの町の警察だけで解決しなければ。この町で起きていることが外に知られたら、町の評判がもっと悪くなる……。これ以上悪くなったら…この町は存在をしてもいなかったかのように忘れられるに違いない。それはいけないことだ。いけないことだ……。
マシューは目を覚ました。真っ暗で何も見えない。俺はどこにいる!?心臓がドクドクとうるさい。
一瞬、方向感覚を失った。ここはどこ?前は!?後は!?……汗が滴る。
「大丈夫だ…落ち着け……」マシューは震える聞き取りにくい声で自分にそう言い聞かせると、深呼吸をした。
部屋の中は塩素系漂白剤の匂いが立ちこめていた。頭がクラクラして、今すぐにでも吐きそう。
息をするのも痛い。目もピリピリするくらい塩素系漂白剤の匂いが強かった。ここはどこ!?俺はさっきまで、森にいたよね?何で建物の中にいるんだ!?俺を襲ったのは誰だ!?マシューは一旦落ち着くことにした。
落ち着かないと、前に進めない。ここで叫び始めたって、意味はないだろう。
何も起こらないのか、危ない誰かを連れてくるだけだ…。深呼吸をしている間、暗闇に目が慣れ始めた。
やっとどのような部屋に居るかがわかってきた。窓が一つもない。コンクリートの壁には所々ひびのようなものが入っていたりしている。この部屋にある家具といえば、ロッカーと椅子が数個だけだ。
ロッカールームのようだ。立ちあがろうとすると、頭の後ろらへんがズキズキと痛んだ。
あの時に頭を何かで殴られたよな…。きっと、頭を怪我しているに違いない。また、座り込んでしまった。
また、息を深く吸い込む。顔は汗でびっしょりと濡れている。悪夢の中に入り込んだような気分だ。
頭の痛みだけで、ここが現実であることが分かる。周りは本当に静かなのだから…ここは本当に現実だよね?ってつい思ってしまう。でも、静かなのはいいのかも。誰もいないうちにここを去った方がいい気がする。
マシューは壁に寄りかかってようやく立ち上がる事に成功した。フラフラした足取りで、しばらく部屋の中を見て回った。何でここには窓がないのだろうか?
まさか………ここは地下なのか?……いや、そんなすぐに決めつけてはいけない。とにかく見て回ろう。全てのロッカーを一つずつ開けてみる。何も入っていない。何も入っていない…。何も入っていない……。何も…?…マシューは錆びた黄色のロッカーの中に入っている白いTシャツを見つけた。
マシューはそれを無意識に取ると、怪我をしている頭に押しつけた。また、小さなパニックになった。
おかしい……Tシャツ以外には何もない。おかしい…………タオルでさえもない……絶対に何かがあるはずなのに…何もない。ロッカーも床も異様に清潔で何かを隠すために拭き取られたようだ。物凄く不気味だ。早くここを出よう。
1週間が過ぎるとエリオットの学校は夏休みに入った。
夏休みの間に読まないといけない本の量については黙っておこう…。
ママとパパに別れの挨拶をして、今はケビン達と一緒にウォーターヒルに向かっている途中である。
車の中では嬉しいことにエリオットの好きな曲が流れている。「USA for Africa」だ。
エリオットは頭をリズムに合わせて、微かに揺らしていた。こんなに素晴らしい曲が他にはどこにある?分からない。エリオットは窓の外を見た。涼しい車の中から見る外は地獄のようだ。
いろんな町を通り過ぎたけど、人は1人もいない。今はさっきも言ったように、太陽の下にでれば人間焼きになってしまうのだから。俺だって今の時間帯に外に出るのは絶対に遠慮するよ。
この日は日差しがとても強かった。夏にしては普通だと思うけど。
また、道路の上の車も少なかった。大人は仕事をしている時間で、子供たちは外に出て焼け死ぬよりは家でゲームで遊ぶことを選んだのだろう。だから、エリオット達が乗っている車は何となく目立っていた。
ケビンの父親の車(ケビンが運転をしていた)は大きくて全員が、なんの問題もなく乗り込めた。
なのに、なぜかみんなはわざわざ狭いのに近くに座っていた。エリオット以外…自分が浮いているとは分かっていた。例えばケビンの大親友、ジェイコブはエリオットを嫌っていた(ケビンと一緒に)。
彼は学校でいういじめっ子だ(ケビンの裏もそうだ)。エリオットはよくジェイコブにランチを奪われたり、嫌なことを言われたりした。
きっとコイツは家で何らかの問題があるに違いないとエリオットは内心、密かに考えていた。
きっとあいつは今思ってるんだ、なんでエリオットを連れてきたのかって。俺は何もしていないのに、アイツはいつも俺を嫌っているのだから。誰だって俺が彼らと来ない方がマシだって思っているに違いない。でも、大丈夫なんだ。コイツらは悪口を言うだけで、何もしてきたことがないから。これからも大丈夫だろう…。
またケビンの彼女も一緒にきた。学校で一番人気なチアリーダーだ(顔についている化粧の量はすごかった)。他の友達は、クリス(こいつは救急救命士を父に持つ、ユーモアセンス抜群の結構面白いやつだ)…(ちなみにこいつはケビンとはあまり関わらないマイクの親友だ)とマイク(話したことはないが、ケビンと結構仲良くやっているみたいだ)。少しだけ寂しかったけど、みんなの隣に座らないことにもプラスはあった。
あの子…ガビの隣に座らなくてもいいから。彼女はとても可愛くて、ケビンの双子の妹だから、容姿(髪や目の色)は似ていた。性格はケビンの真反対だったけど…彼女は誰にでも優しくてそのおかげで学校でも(ケビンほどではないが)人気があった。彼女の近くに座ったらきっと、心臓がバクバクしすぎて死んじゃうかもしれない。
だから気をつけよう…。後の8時間もの地獄のような道のりの間、エリオットはウォーターヒルがどう変わったかを想像していた。後はガビからできるだけ離れて座ることも意識していた。
少しすると、緑色の大きな錆びた看板が見えてきた。「ウォーターヒルへようこそ!」看板を支えている木の柱は傾いている。
実はこの物語はもっと長いんですよ。数えてみたら、約260ページにはなりました!物語を書くのはとても楽しいんです!私の趣味なので。今回は誰かに読んでみて欲しいなと思って、ここに載せてみました。誰かに見せる初の物語って感じですね。気に入って貰えば嬉しいです;3