「選ばれし者と選ばれし”物”」
数ある作品から見つけて頂きありがとうございます。
代表作が完結しましたので新作です。完結に言うと──
※この作品は異世界転生モノです。
※でも、主人公は戦いたくないタイプです。
※なのに、世界のルールがだいぶおかしいです。
毎日更新しますので応援よろしくお願いします!
では本編どうぞ!
友達はそこそこいたけど、彼女はできたことがない。 運動も勉強も、真ん中よりちょっと下。人並み以下 ってわけじゃないけど、「これ」といえる何かもない。
そんな俺が、気づいたら車に轢かれて──
頭の中に、謎の声が響いていた。
《あなたに、何でも好きな“物”を一つだけ与えましょう》
漫画やアニメで鍛えた俺の脳はすぐに察した。
……きたな、異世界転生のやつ。
一撃必殺のチート武器か?
いや、不老不死もロマンあるな。
でも正直、戦うの面倒だし怖いし……
あと《物》って強調されているのも引っかかる。
チート武器もらっても、当たれば死ぬんだよな。遠距離で一発とか、マジ無理。
……。
真っ暗な意識の中、小一時間は悩んでたと思う。
時々、謎の声が舌打ちしてくる。うるせぇ。
……よし、決めた。戦場に出なきゃいいんだ。
俺は高らかに願う。
「俺さ、彼女も出来ないまま死んじまったから彼女……いや、やっぱりメイド!何でも言うこと聞いてくれるメイドが欲しい!」
《なぜ一度“彼女”と言いかけてからメイドに?》
「そりゃあ、彼女よりメイドの方が──その……夢あるお願いとか、しやすいだろ?」
《……はぁ》
その呆れたトーンなんなんだよ。もっと夢ある反応しろよ。
《ですが、“物”しか選べませんので、その願いには──》
やっぱりか。
「……そういや他のやつらは何選んだんだ?」
《詳細は伏せますが、基本は一撃で倒せる剣とか……ですね》
だろうな。
でも俺は、お前らとは違う。チートも、メイドも──どっちも欲しい。
だったら願うのは一つしかない。
「決まった」
《どうぞ》
「チートメイドをくれ」
《…………はい?》
「いやだから、チートメイド。物しかダメなんだろ?」
《ええ、ですが──》
「落ち着けって。俺は何も“人”が欲しいなんて一言も言ってない」
《……では何をお望なのですか?》
完全に呆れた口調だった。
「超強いアンドロイドのメイドを頼む。外見は限りなく本物に近い感じで。肌とか質感とか、そのへん特にこだわってくれよな。胸だけ鋼鉄とかマジ勘弁」
《…………あなたのような方は初めてです……ですがルール内ですので、その願いを叶えましょう》
「よっしゃ!あ、言っとくけど、ご主人様呼びで頼む。これ必須」
《…………》
あれ?無言なんだが?聞こえてない?
「……もしもーし?」
《では転生準備とルール説明に入ります。あなたの転生地点は“カロンテルス”という、所謂始まりの街です。転生された皆さんは、等しくそこがスタート地点になります。なお、その世界には魔王が存在します。魔王を討伐できれば報酬が与えられます》
魔王、ってやっぱりいるんだ……いやまあ、俺には関係ないけど。俺はチートなメイドと異世界ライフを楽しむ派だから。
「一応聞くけど、その報酬って?」
《何でも思うがままにできます》
「へー……は?どういうことよ」
《貴方の転生先は、魔王が支配する世界です。魔王が討伐された場合、その世界は討伐者の“物”となります》
「……つまり、魔王を倒せば、その世界全部が“好き放題”できるってことか?」
《はい、その通りです》
──その瞬間、背筋が少しだけ冷えた。
良く言えば“すべてが思いのまま”。
だが、裏を返せば──
もし俺より先に誰かが魔王を倒したら、そいつの独裁が始まるってことだろ?
仮にそいつが、魔王よりもタチの悪いクズだったら……?
正義の名を借りて世界を好き放題できるとか、どんな地獄だよ。
戦った方が勝ちじゃなくて、『支配した方が正義』ってわけか。
……世紀末じゃん。まじで。
命令される側になるのはごめんだ。
俺は、命令する方が好きなんだから。
「……マジかよ……」
《あなたが考えていることは、だいたい分かっています。どうせ女性にいかがわしい命令をするつもりでしょう》
「バ、バカ!ち、ちげぇし!……そんなわけ、あるかよ!」
いや、あるかも。いやでもそれを言ったら負けな気がする。
何だよ“どうせ”って。なんで俺の頭の中読めてんだよ。
しかもこの声、よく聞いたらちょっと女っぽいし……まさか女神様とかそういうパターン?
「……いや、まぁいいや。考えても仕方ねぇ」
異世界?魔王?世界が物になる?知らん。
俺はただ、メイドと一緒にのんびり暮らせればそれでいい。
「転生、よろしく頼むわ」
《では──良い旅を》
言葉が終わると同時に、視界が真っ白に弾けた。
重力も、時間も、音すらも消えた感覚。
──こうして、俺の人生は一度終わりを迎えた。
……まぁ、次の人生がどうなるかは、俺次第ってことで。
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「──初めまして、ご主人様。本日よりお仕えさせていただきますメイドです」
目を開けたその先にいたのは、どう見ても人間──
それも“超”がつくほどの美少女だった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
「チートメイド」という単語からふざけた展開を想像されたかもしれませんが、
本作は「戦いたくない主人公が、逃げきれない世界に放り込まれる」皮肉な物語です。
このあとの展開では、最強メイドの“無表情な過保護”や、
世界に隠された“異常な競争ルール”が少しずつ明らかになっていきます。
とはいえあらすじでもうネタバレくらってますけどね!
毎日 or 隔日更新予定ですので、気に入っていただけたら
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それではまた、次回の更新で!




