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トラップババア

作者: 逆福

私の家の近所には知り合いの間でトラップババアと呼ばれているおばあさんがいる。道に自転車や植木鉢を倒して置いておき、通行人が倒れているものを直したり、触った時にはすぐ駆けつけてきて盗もうとしたなどと因縁をつけて絡んでくることから、そのような名前で呼ばれるようになった。通報される事もあるようだが注意で終わるため改善することはないようだった。何故そんな事をするのだろうかと疑問に思ったが、友人が言うには元々きつい口調の人だったため、様々なグループで長続きしなかったらしくその人付き合いの不足を埋めるためにやっているのではという事であった。友人の家から自宅に帰る途中に噂のトラップババアの家がある、普段ならば通らない道であるため、ああここかと通り過ぎようとするとおばあさんが道にあった倒れた自転車を片付けているところだった。絡まれたらいやだとさっと通り過ぎようとしたが、ちらっとおばあさんの方を見てしまいその時目があってしまった。申し訳なさそうな顔をしていたおばあさんから、すぐにあっと目をそらして通りすぎると後ろから「ご迷惑をおかけします」と声をかけられた、そのまま振り返らず通りすぎたが聞いていた噂とは印象が違うなと感じていた。


数日後、私はまた友人の家に来ていた。色々な事を話していると、ふと先日見たトラップババアについて思い出したのでその時の事を話した。友人も一度トラップババアを見た事があったが険しい顔で怒鳴りちらしていたという事であり、やはりあの時見た印象とは違うようであった。帰り道にまたあの家の前を通ると黒い礼服を着た人々が出入りしているのが見えた、どうやら葬式のようである。それなりの人数が来ているように見えたので、それなりの交流ががあったのだろうという事が察せられた。噂は噂なのだろうと考えなから家の前を通りすぎるのだった。


「あの家ゴミ屋敷になってるらしいよ」

友人の家で話しているとそんなことを言われた。おばあさんは亡くなったのではと思って以前の葬式のことについて話すとあの家には二人のおばあさんが住んでいたらしいと教えてもらえた。一人が噂のトラップババアであり、もう一人がトラップババアが置いていた物を回収していたおばあさんだったらしく、先日のはそちらのおばあさんの葬式だったということである。回収する人間がいなくなったせいでどんどん物が溜まったいき今はゴミ屋敷と化しているらしい。友人の家から帰る途中なんだが周りが騒がしかった。あたりから消防車のサイレンが響いておりどこか近くで火事が発生したようであった。まさかとは思いあの家に向かうと、家の前は封鎖されており燃え上がっている家の消化活動が行われていた。


翌日のニュースであの家は全焼、火事の現場から遺体が一つ見つかったということであった。溜まっていたゴミの中に可燃性の物が混じっていた可能性か高いといわれているようだ。

それからしばらくたってまた友人の家から帰る途中、あの家の前を通る。家は跡形もなく空き地になっていた。入り口があったであろう場所を通りすぎると、ばたんと何かが倒れる音がしたので振り返るとこちらを鬼の形相で見ているおばあさんと申し訳なさそうに頭を下げているおばあさんが一瞬見えた気がした。


「あの空き地全然売れないんだって。なんでもトラップババアの幽霊が出るらしいよ」



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