予想界の頂 序章
毎年開かれる競馬予想大会 〜予想界の頂〜
参加者は一般からも参戦できる為、競馬ファンを集めた強豪ぞろいの予想大会。
その西日本地区の予選を超えた童夢志保と三原雫。
準決勝戦を目指すも一ノ瀬夢杏・兎鉄たまきペアの前に苦戦する。
目線の先のカメラを意識すればするほど士気が高揚するが、緊張に慣れていないあたしは意識が飛びそうになる。
発汗がすごく手に汗が染みわたるのがわかる。
手術台の上?と言わんばかりに浴びるスポットライト、この場から逃げ出したい。
これって夢なの?
夢であって欲しい。
夢だったら逃げる必要は無いじゃん。
あたしは目を瞑り、再びゆっくりと目を開く。
目の前に広がる大勢いの観客席、スポット照明があたしを照らす。
「やめてよ。夢じゃないじゃん!」
ついつい声に出してしまう。
横を見ると冷静な雫が机のプリントを見ている。
反対側の机を見ると女性が既に話し合っている。
今回のルールは馬連という馬券種を的中させなければならない。
馬連は何頭も競走する中で1着と2着を選び出さなければならない馬券だけに高難易度だ。
輪をかけて1人が選べる頭数が2頭だけというルールが難易度を底上げしている。
その代わり2人が相談して2頭づつ選定する仕組みは戦略性があり、オッズボーナスも重複する頭数による。
2人がそれぞれ違う2頭を選択した場合、競馬の書き方でいうと◎〇▲△となる。
この場合はボーナス無しのオッズx1倍となり6点ボックス同等と同じである。
◎の1頭が重複し、2頭目が別々の場合は表記としては◎◯▲この様になり3頭ボックスと同等となる。
ただし◎の馬にオッズボーナスが付き◎ー◯▲の買い目がオッズの3倍の得点が付与される。残りの買い目である縦目と言われる組み合わせが的中の場合、記載は◯ー▲となり、この場合はボーナスは付与されずオッズx1倍の配当となる。
3頭ボックスと同一の買い目となるが、組み合わせによってはボーナスが付与される買い目である。
最後に逆転狙いであればこの買い目!
2人ともが選んだ二頭が同一の場合。
記載は◎◎〇〇となり、◎-〇の1点買いとなるが倍率は大きなボーナスが付与されオッズはなんと5倍である。
この組み合わせは自信がある場合や逆転狙いの時のようなココぞという場で力を発揮する買い目である。
先月の東日本エリアBブロックは朱龍学園の2人とalisaprojectのアイドルコンビがベスト8戦進出となったのはあたしも知っている。
この大会は数回の期に分けて開催される。
1期開催は東日本地区代表8組と2期開催は西日本地区代表8組が出場し、各地区戦の上位2組が準決勝進出となり、4組で準決勝が行われ、決勝にすすむ2組が残り。
最終決勝戦では一騎打ちとなる予想大会のトーナメント方式の予想大会だ。
東海地方より東を東日本エリア、関西地方より西を西日本エリアとエリア分けをしている。
あたし達のお座敷学園は西日本エリアに所属している。
もう一度あたしは雫の顔を眺める。
その視線に気づいたのか雫が話しかけてきた
「志保さん、どう思いますか?私的には先行より、差しにチャンスがあると思いますわ。」
大きく深呼吸をして目を閉じた。
思考が回らない。
「待って」
その一言しか出なかった。
やるしかない。
机の上のあたしの手に自分の手をかぶせてくれる雫。
「志保さんわたくしも同じですわ。もう、後戻りはできませんわ。」
目を開いたあたしは左後ろ上方のデジタル掲示板を見た。
「雫、もうやるしかないよね。」
あたしは言葉と共に雫の見ているプリントをのぞき込む。
プリントの左上に書かれているヘッダーの文字は電光掲示板と同じワードだった。
「雫、やろう!やってやろうじゃん!」
かぶさっていた雫の手を逆に強く握りしめた。
かすかに聞こえる聞きなれた声が多数耳をよぎる。
「SHIHO ファイトデース!」
「志保ちゃん頑張ってー!」
声の先には横断幕と見慣れたメンバーの顔ぶれがこちらを見ている。
ぷっ
笑ってしまった。
ふふふ・・・
同じ方向を見つめる雫も笑っていた。
「ほんと、プリムは和ませてくれるなぁ」
「ですわね!」
ハート形レンズのサングラスをかけて応援しているプリムの姿は緊張がどピークのあたし達を和ませてくれた。
「ほんと、プリムにはやられっぱなしだな。」
「ですわね!志保さん、どうします?残りレース数がありませんわ。」
雫は後方のデジタル掲示板を見ながらそう言った。
童夢、三原ペア 7800
一ノ瀬、兎鉄ペア 11400
この得点はボーナスを含めた的中配当の合計を示している。
その差は3600点・・・
「志保さんごめんなさい、タッグワイドじゃなくタッグ馬連だけに足を引っ張っちゃって」
「雫、何を言ってんだよまだ負けたわけじゃないじゃん!やってやろうじゃん」
目に入ってくる光を受け止め、あたしは雫にそう言った。




