第9話 宇宙の自問自答
凛子が宇宙の事
これからの人生の事を
考えている同時刻…
宇宙もまた
凛ちゃんとの関係について
考えていた
宇宙はかなり恋愛気質なので
常に恋愛をしていたい
男性ではある
凛ちゃんに対しても
かなり恋心は
抱いては居るのだが
なにか凛ちゃんとは今までの
女性とも恋愛ってもの自体とも
違うものを感じていた
凛ちゃんはとても魅力的な女性で
人間的も女性的にも
かなり好感を持っている
今までの宇宙なら
間違いなく気持ちを伝えて
自分の手の内に入れて
恋愛を成立させる動きをしていた
しかし凛ちゃんとは
とにかく話が尽きない…。
おしゃべりが止まらない…。
会話に夢中になってしまい
凛ちゃんが女性であること
自分が男性であることすら
忘れてしまう
ただの一人の僕自身で居られる
―何やら男女の性別を越えた
不思議な相手ではあった―
凛ちゃんとの関係を
大切にしたいと
宇宙は思った
凛ちゃんには
自分のダメで弱い所も
素直に見せていけるなと
思い始めていた
宇宙には実の父親が居ない
その事で宇宙は
かなり辛く苦しい幼少時代を
生きてきている
なので両親が揃っている家庭って
ものに強く憧れを抱いてはいた
母は物凄く真っすぐで愛情深く
宇宙を育てて来てくれたので
現状、こんな時に
父親が居てくれたらとか…
そう思ったことはなかった
周りの人たちも宇宙を
よく可愛がってくれたし
楽しい時間も沢山あった
だが母親がとても感情の起伏が
激しい人で
喜怒哀楽のふり幅も大きく
時には怒鳴り飛ばされることも
多々あった
宇宙はもっと
感情が穏やかで優しい聡明な
母親ならいいのになぁ~って
ずっと…
ずっと…
宇宙の心の奥に理想の女性像を
思い描いていたのだ
凛ちゃんはその女性像に
かなり近い女性かもしれない…
宇宙は凛ちゃんとの出逢いは
かなり必然的な出逢い
なのかもなぁ~と
しみじみ思った
凛ちゃんと出逢って
宇宙は何やらものすごく
哲学的な思考が
開花されつつある
元々、宇宙は哲学には
興味はあったのだが
これほどまでにも
深く考えたくなる気持ちに
なった事は
なかったように思う
宇宙は物事を
深く探求することが
好きなのだ
だから宇宙って世界にも
ハマって
沢山の本を読んで
しっかり知りたいと思った
凛ちゃんとはなぜか?
自分自身とは…って
所に常にベクトルを
向けられる感じがする
自分の事をここまで
真摯に見つめて知りたいと
思ったことがあっただろうか
相手(凛ちゃん)のことを
ここまで興味を持ったことが
あっただろうか
今まで僕自身の人生を
こんなに
真剣に考えたいと
思ったことはなかった
ここまでも
宇宙なりには考えたりして
過去、この女性と結婚したいと
ひとみちゃんに
プロポーズしたこともある
でもそんな事とは
全くちがう次元で感覚で
今は自分自身と真剣に
向き合いたいと思っている
凛ちゃんと話していると
いつの間にか…
日々の生活に追われて
流されて
惰性のような暮らしをして
いる自分に気づかされる
石田宇宙はここまでの
男なのか…
こんな自分に、人生に
どこか諦めてしまっている
そんな僕でいいのか
―これから僕は凛ちゃんと
どうなって生きたいんだろう―
―僕は
どこに向かって
行きたいんだろう―