第8話 手術(凛子編)
『ズキッ』
何…この痛み…。
凛子はお風呂で
髪を洗っていて
シャワーのお湯が
顔に当たった
だけなのに…
今まで感じたことの
ない激痛を
数秒間ほど感じた…。
さっきの痛みは
なに?
凛子はとても
不安になった
ネットで検索してみたら
脳腫瘍と出た…。
えっ???
ガン?
ひとりで考え出したら
不安になってきて
夜、夫の星夜に
病気の事を話した
何科に行ったらいいのか
わからないので
脳神経外科に受診してみることにした
しかし夫は怖いのか…
一緒に診察室までは来てくれなかった
凛子は内心とても心細くて
心の中で…
『宇宙…た・す・け・て』
と叫んでいた
そんな夫も最初は
非協力的だったが
会社の人に相談したら
叱られたみたいで…
途中から病院にも積極的に
足を運んでくれた
結局、はっきりした病名は
分からなかった…
しかし、激痛の発作は
止まらなかった…。
凛子は激痛の痛みを
とにかく和らげたいので
ネットで調べると
ペインクリニックって
病院があることを知り
早速、受診してみた
最初はごくごく少量の
飲み薬をのみましょう
ってことで服用し始めたが
一週間も経たない間に
体に赤い湿疹が出て
高熱が急激に出たので
救急病院に連れて
行ってもらった
そしたら何かは?
分からないけど
緊急入院させられて
その症状の原因を
調べるために
毎日、検査の日々だった
その当初、
鳥インフルエンザが
流行っていたので
感染症かもしれないと
余計に疑われた為に
隔離病棟に移されて
大変な思いを凛子は
したのだった
検査結果は薬疹と
診断された
いわゆるペインクリニックに
処方してもらった
薬のアレルギーの
症状だと言うことがわかった
高熱は段々、下がったのだが
全身ケロイド状態で
赤くただれて
顔も醜いというものでは
ないくらい…
鏡を見るのが好きな凛子も
鏡を見るのが怖くなった
もう精神はドン底に
落ちてしまい…
生きる希望までも
失いかけていた
もうどうしたら
いいのか…
分からなくて…
そんな時、一番に
凛子の脳裏に
浮かんだのは
宇宙だった…。
そう思った瞬間…
ショートメールを
打った…。
『宇宙〜
た·す·け·て』
宇宙はなんて
声をかけて
あげたらいいのか…
思案した…
凛子は
宇宙の文面を読んでいたら
少し落ち着いてきた
ポツリポツリと
ゆっくりながら
少し前まで
すごくひとりで
心細い気持ちだったことを
素直に打ち明けた
宇宙は
ゆっくり聞いてくれた
凛子は勇気を出して
宇宙に、今はケロイドで
醜い顔であるけど
お見舞いに来て元気づけて
欲しいとお願いしてみた
宇宙は即返事で
『うん、今度の日曜日に
会いに行くからね』って
書いてきてくれた
凛子はその夜はいつもとは
珍しくぐっすり眠りに
つくことが出来た
宇宙は約束通り
日曜日に
お見舞いに来てくれた
凛子は、わたしの顔…
酷いでしょ?
気持ち悪いでしょ?
ごめんねっていうと
宇宙は、ホント凛子は
強いよ!って
言ってくれた
僕は持病の腰の
ヘルニアを持っているけど
怖くて
病院で検査とかも
受けてない…
きっと手術しましょうって
言われると思うから
怖くて
行けてないって
でも凛ちゃんは
ちゃんと検査をして
それで手術を来週受けるから
とても勇気のある女性だと
思うって
宇宙は凛子を絶賛
しまくったのだった
宇宙パワーは
すごいやぁと思った
凛子はかなり
気持ちが楽になれて
元気になれた
1週間後、凛子は無事に
手術が終わって
ホッとしたのも束の間…
薬アレルギー体質な
凛子は頭痛薬を
飲むことが
できなかった為に
氷枕で冷やしたり
しながら
痛みと戦った…
辛くて
苦しくて…
あぁ〜
人は病気になると
本当に孤独なんだなぁ〜
って事を痛感した
それと
日頃、些細なことを
悩んで苦悩してた
凛子が嘘のように
悩むのではなく
考える自分に
なろうと…
物事の考え方まで
変わり始めた
何かの本で
昔読んたことがあった
その本に…
人は死というものを
現実的に目前と
した時に
考え方が大きく
変わるようになると…
まさに今の凛子は
そうだった
凛子はいつも
自分自身のピンチの時に
どのように寄り添って
くれたかどうか?
かなりシビアに
人を観察する所が
あるのだ
宇宙が居なかったら
この病気とも前向きに
向き合えたか…どうか…
分からない…
宇宙という
存在は凛子にとって
日に日に
大きな存在へと
増して行っているのは事実
ある本に書いてあったのを
ふと思い出した
人には9年サイクルと
いうものがあって
凛子はちょうどその9年サイクルの
分岐点に立たされていた
宇宙との事もあるが
凛子自身の人生そのものに対しても
今日までの9年の生き方を
これからの9年も同じようにするのか?
はたまた全く違う自分の生き方に
意識を変えていくのか?
考える時期でもあった
この入院という時間を凛子は
大切に使いたいと思ったのだ
―これから私達は
どうなっていくんだろ?―
―わたしは
どこに向かって
行きたいんだろ?―