第5話 これはなんだろう?
凛子は石田さんに出逢ってから
いつもと変わり映えのしない
そんな退屈な日常から
一変してかなり
振り回されることも多く
一喜一憂する日々ではあるが
なんだか生きてる!!って
思える感じで
凛子の人生に潤いがでて
輝きを増しているのは確かなのだ
石田さんは相当
起伏の激しい人間では
あると思う
今まで出逢った人間の中で
ダントツ1位なぐらいに
だから凛子は
石田さんに出逢ってから
振り子のように
揺さぶられることが多い
凛子は、いろいろ
こと分かりがいい人間に
なりすぎて
自分が素直な
喜怒哀楽の感情を
封印している事に
どんどん気付き始めている
石田さんと過ごしていると
楽しい気持ちにもなるが
とても重苦しい気持ちにもなる
だけど前より段々、
自分自身の事が
ちょっとずつ好きになっている
凛子はかなり
自分は合理主義的で
機械的な所が多い事に
気付かされている
今まで確かにいろんな人には
出会っては来たが
石田さんのような
人間臭い人間に
人生を振り返ってみても
出逢った事は
なかったように思う
そもそも
『第四の扉』って何なんだろう?
私には絶対に
開けることが出来ないと
あそこまで断言するような
難しい事ではあるんだろうなぁ
そんな哲学的な事を
ひとり瞑想に
浸ってた凛子だったのだ
凛子はこういう時間が
物凄く好きなのだ
おっと…
仕事に集中しなきゃだわ…
ガラーとドアが開いた
石田さんだとすぐわかった
石田さんはドアの開け方が
豪快だからだ
まるで子供が
走って来て勢いよく
ドアを開けるぐらいの
ドタバタ振り~
『山川さ~ん、あのねあのね』
『石田さん、お疲れさまです。
どうされたんですか?』
『僕って血液型AB型なんですよ』
『あ~そうなんですか…
私の父親が同じ血液型です』
『へぇ~奇遇だなぁ』
それだけ言って
また足早に去って行った
石田さんって
ほんと毎回、子供みたいで
僕を見てみて~
みたいな人だなぁ~
こないだ言ってた…
『第四の扉の話』は
どうなったんだろう?
もしかして?
真面目な私だけが
まともに受け止めて
考えているだけ
なんだろうか?
石田さんの真意がいまいち
分からない…
単純な人なのか?
複雑な人なのか?
でもこういうことを
考えさせてくれる
相手であることが
凛子にはまた
楽しくて
たまらなくなるのだった
そのうち…
『第四の扉』の事も
分かって来るでしょう
そんな凛子の気持ちが
分かったのか?
凛子が会社で休憩していると
『ブルルルル…』
着信音が鳴った…
誰かしら?
『あっ、石田さんからだ』
『山川さん今何してますか?』
『今は禁煙ルームで紅茶を飲んでいます』
『石田さんは何してますか?』
『僕はコーヒーを飲んでいます』
へぇ~石田さんってコーヒーが
好きなんだ…。
『ブラックですか?カフェオレですか?』
『ブラックです』
『紅茶はミルクティーですか?レモンティーですか?
ストレートティーですか?』
内容はめちゃめちゃ
些細な事なのに
なんだかとっても学生気分の
手紙のやり取りをしているような
15分の休憩を物凄く
ふたりで楽しんでいた
凛子の周りにいる
岡本さんは、
『何ニヤニヤしてるの?』
と聞いてきた
岡本さんはめちゃ
勘が鋭いのだ…。
要注意しなくては…
こんなに大人になって
クスクス笑える時間が
持てるなんて…
凛子にとって
石田さんとの
出逢いのおかげで
日常がどんどん
色鮮やかなものへと
変わってきて
仕事に行くのも
楽しくなってきたのだった
『ピロリ~ピロリ~』
あっ、石田さんからだ
『山川さん、
今すこしお時間いいですか?』
なになに改まって…
なんだろう?
『はい、いいですよ』
と凛子はラインに返事をした
石田はかなりドキドキしていた
いつ言おうか…
何週間前から考えていたのだ
『実は~
呼び名を変えませんか?』
『僕の事は『宇宙』と
ふたりの時は、そう呼んでほしいです。』
凛子はその文章を読んだだけで
顔が赤くなってしまった
『はい…ただ…今まで石田さんって
言ってたので、まずはラインから
呼び名を『宇宙』って書くように
してもいいですか?』
『もちろんです。
ゆっくりでいいです。
山川さんの事も名前で呼んでも
いいですか?』
凛子は頭が真っ白になった
石田さんが私の事を
名前で呼ぶようになるなんて…
ドキドキしてしまう…
『はい、凛子でも凛ちゃんでも
いいです』
『よし!じゃあ今日から
凛ちゃんと宇宙で
やり取りしていきましょう
ではおやすみなさい。
また明日ね。』
凛子は
宇宙、おやすみ~と
スタンプを送った
今まで石田さんだったので
宇宙と文字で打つだけなのに
緊張してしまう…
これも慣れてくると
大丈夫になるのかなぁ?
宇宙は私の事を
どう思ってるんだろう?
好感はもってくれているのは
分かるんだけど…
てか私自身は
宇宙の事を
どう思ってるんだろう?
これは…
『恋』なんだろうか?
でも…
なんか今までの恋愛の『恋』
とも流れも気持ちも
違うようなぁ…
宇宙とはなにか
色んな事がすべて
始まり方から
現在に至るまで
不思議な感覚なのだ
宇宙も凛子と似たような
そんな気持ちで
居るんだろうか…
そんなことを考えていたら
いつの間にか
あっという間に時間が経ち
そろそろ寝なきゃと
慌てて床につき
『宇宙~おやすみ
また明日ね』と心の中で
呼びかけて
ぽかぽかした
気もちで眠った凛子だった