エピローグ
九月二十三日、秋分の日。
今日はアキハルの誕生日だ。そして彼岸でもあり、獏句、フユキ、無真、雨延は墓参りに訪れていた。
墓地をある程度進み、やってきたのはナツキの墓。花とお菓子を供え、線香に火を点け、手を合わせる。
「……ナツキ。君の大切にしていたわんちゃん……カナタは、そちらへ行けたか?」
夢を食べられる事件が解決した後、カナタは現実世界への執着が消えたからなのか、消滅……成仏した。残されたのは物言わぬぬいぐるみだけ。そのぬいぐるみはアキハルが引き取り、自宅に置いてある。
そして獏句は無真から、カナタが夢を食べていたことから連想して、心の薄片を使うのではなく“悪夢を食べる”ことで魔力の補給をしてはどうかと提案され、現在は無真と協力しながら試験的に活動している。
「天国でカナタくんと幸せにね」
フユキがしゃがみながら笑って話しかける。無機質な墓だが、こちらもどこか笑っているような気がした。
「そうだ。アキ兄、これ……」
祈り終わった後、そう言ってフユキが取り出したのは先月に買ったイヤーカフ。持ち主の思いを表すように、品のある銀色が煌めいている。
「ミサクくんと一緒に選んだの。誕生日おめでとう、アキ兄」
それに沸き立ったのはアキハル……ではなく、獏句の面々。
「え⁉ ミサク、アンタいつの間にデートなんてしてたんだよ! ひゅーひゅー!」
「ばっ……違う、決してそんなんじゃない!」
「春だねぇ……いや季節は秋だけど」
「墓場でやかましいぞ」
アキハルの注意にようやく静まる。コクアとモスケはまだニヤニヤしており、ミサクは腰に手を当てながらやれやれといった様子だ。それを横目にアキハルもため息を吐いた。
「全く……ありがとう、フユキ」
「う、ううん、どういたしまして!」
嬉しそうに笑うフユキの後ろで、コウガがふと何か閃いたようで一つ提案する。
「……そうだアキハルさん、せっかくですしナツキさんについて色々教えてくださいっすよ!」
「そうね! ナツキちゃんの追悼も兼ねて、よかったらお話しましょ!」
「某も気になっていたところです。皆、どうせ話をするなら、近くのカフェにでも寄らぬか?」
次々に賛成の声が上がる。
「ふっ……長くなるぞ?」
何せ、大切な妹のことだからな――アキハルは自慢げに笑う。そうしてその場を後にした一行と佇む墓石を、秋の温かな日が照らしていた。




