第8話 シクドロソング
1曲目が終わると、すぐに次の音楽が流れ始めた。明るくポップな音楽に合わせて歌われるのは『シクドロソング』。メンバーの自己紹介ソングだ。
メンバー一人一人がセンターに立ち、ファンに向けて自己紹介をしていく。この曲は、私がシクドロを知るきっかけになった曲だ。
「私今、シクドロっていう歌い手グループにはまってるんだよね」
幼なじみとドライブをしていた時、彼女はスマホを触りながら私に言った。幼なじみにはちょっとした癖があり、しっかり話を聞いてほしい時に必ずスマホの画面を3回撫でる。
「待って、今近くのコンビニに停めるから」
私は近くのコンビニを見つけ駐車した。
「飲み物買うけど、一緒におりる?」
「うん」
幼なじみとはよく夜にドライブをする。そして大事な話をする時は、コンビニの駐車場で何かを飲みながらと言うことが多い。
「歌い手にはまるとか珍しいね」
私は、カフェオレにストローを刺しながら言った。
「うん。最初はゲーム配信を見てたんだけど、その配信者が歌い手のメンバーだって知って見てみたんだ」
幼なじみはにこにこしながらスマホに『シクドロ』と文字を打つ。
「これ自己紹介ソングなんだけど、試しに聞いてみない?」
「聞く」
幼なじみが再生画面をクリックし、音楽が流れる。
「あ、男の人達なんだ。てっきり女性のグループだと思った」
「私普段、女性アーティスト聞くこと多いもんね」
初めて聞いた時は、この程度の会話で終わった。
幼なじみとのドライブから1週間程経った頃。仕事中にシクドロのことが頭をよぎり、独特な声の人がいたなと思い出す。休憩中にシクドロを検索し、すう君という人の声だと分かった。
家に帰ってから彼らの音楽や企画動画を色々検索し、気づいたらシクドロの沼にはまっていた。
ライブ中にこのエピソードを思い出し、次は幼なじみと一緒にこの光景を見たいなと思った。