お誘いと思い出す関係性
「それで大智君の浮気相手に会ってきたんだ」
「そうですって、何でちょっと怒ってるんですか?」
「別にー? 私は怒ってないですとも」
朝から有栖先輩と長渕咲に会ってきたことについて話していた。
しかし話の途中から明らかに有栖先輩が不機嫌になっている気がする。
「やっぱり怒ってますよね?」
「……だって颯斗君、その子のことずっと褒めてるんだもん」
ぷくっと頬を膨らませて怒る有栖先輩が今日も可愛い。
思わず膨らんでいる頬を指でつつきたくなる。
「颯斗君、聞いてる?」
「聞いてますよ。有栖先輩が怒っていたのも分かりました。なのでこの質問で彼女関連の話は、とりあえず最後にします。長渕咲という名前に聞き覚えはありますか?」
これ以上は長渕咲の話をしない方がいいと思った俺は直球で聞いてみることにした。
聞き覚えがあれば逆恨みの線が一気に強くなる。
「長渕咲……、聞き覚えがないかな? 私の記憶が間違っている可能性もあるんだけど」
「それならいいんです。長渕咲が大智を誑かしたのは、有栖先輩が長渕咲にとって邪魔だったという話もありえると考えただけなので」
「確かにその線は考えても見なかったかも。ただ私に聞き覚えがない以上わからないね。もしかしたら名前が変わってる、とかかも」
「言われてみるとそれもあり得ますね。また色々と調べないといけないかもしれません」
「そうだね。その件はとりあえずお任せするとして、私まだちょっと怒ってるんだけど」
俺はふと1度目の関係解消になった遠因を思い出した。
あの時は確か有栖先輩が大智の話しかしていなくて嫌気がさしたんだっけ?
あれ? もしかして今の状況って相当まずいのではないだろうか。
「……何すれば許してもらえるでしょうか?」
「そうね。私のいいところ10個あげたら許してあげるかも」
そうして俺は最終的に有栖先輩のいいところを30個上げるまで解放して貰えなかった。
最も有栖先輩のいいところを30個あげるなんて簡単なことなのだが。
◆◆◆
春もそろそろ終わりを告げようかとしている夏間際、うちの学園では文化祭のシーズンが始まる。
他の学校では秋口が多いと聞くが、うちでは何故かこのシーズンに開催していた。
雨で折角組み立てたキャンプファイヤーが台無しになることも度々あるらしい。
「それで私はとりあえず大智君と文化祭は回ろうと思うの」
「それがいいでしょうね。大智はまだバレてないと思っているわけですし。変に疑われる行動はまだするべきではないと思います」
「それで相談なんだけど、ね?」
「なんでしょう?」
「その、一緒にキャンプファイヤーを踊ってほしいなって……」
うちの学園のキャンプファイヤーは少し特殊だ。
気になる男女が一緒に踊るというところまでは正直何処であっても変わらない。
ただその間にキャンプファイヤーの火が雨で消えて仕舞えば、永遠に2人は結ばれることはないと言われている。
「有栖先輩、それって」
「勘違いはしないでね。出てみたかったけど颯斗君しか周りに誘える人が居なかっただけだから」
それだけ言うと有栖先輩は走って去っていってしまった。
考えれば考えるほど俺と有栖先輩の関係は薄い。
俺と有栖先輩は所詮は大智に復讐する為の協力関係でしかないんだから。
久しぶりに心から顔出した黒い感情を抑えながら、俺は文化祭当日を迎えた。
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