第一話 新聞部VS写真部 (2)
新聞部VS写真部 (2)
2
放課後。新聞部は、いつもよりもまして、暗かった。新聞部前を通るものいない。それどころか新聞部全体的に異空間と化していた。そこから聞こえてくる、不気味な笑い声。
部長
「グラピ、準備がいいか?」
ショッカーの鳥みたいなマークから聞こえる声のような部長。
グラピ
「はい、予想通り米時は、取材に同意しました。あいつの馬鹿さは天下ものです。」
部員
「だが、あの写真部の取材に行って、何かメリットがあるんですか?」
部長の平手打ちが部員に。
部長
「ふざけるな! 写真部の取材には、メリットしかない。」
部員
「ど・・・言うこと?」
部員は穂をなでながら言う。
部長
「奴らは普通の部活動とはちがう、個性表現が大きな魅力だ。あいつらは恥じらいを知らない。この前俺が写真部一同がコンビニで・・・・・」
この前の出来事
米時
「うわっ! この女優、すげーきれいな足。やばくない」
コンビニ内の雑誌売り場で米時と春風が騒いでいた。水川と金村は、弁当を選んでいた。
春風
「その子より、こっちのほうがそそらないか? 思春期の青年を呼び込むような、この、甘い果実」
店員が米時と春風のほうを万引きGメンの目線で見ていた。だが、やつらは逆にエスカレートして・・・・
米時
「ふっ袋とじが・・・開いてみる?」
春風
「立ち読みだけはいいけど、袋とじは、ちょっと・・・・ね」
米時
「幸一に買ってもらおうか?」
春風
「そうしよ、そうしよ。あいつ、ジャンプとサンデーの区別がつかないくらいだし・・・・あっ、『ビジネスジャンプ』て言えば何とかなるな」
米時と春風は、水川にエロ本を手渡していた・・・・・
部員
「思春期男子なら普通でしょう。」
部長
「お前に反論権はない。その後あいつらは・・・・・」
水川
「何これ?」
米時
「幸一お兄ちゃん。このジャンプ買ってぇ?」
無理のある幼児の声を米時は演じたが、あまりの気持ち悪さに俺は感動を抱いた。
水川
「エロ本は、自分で買いなさい。」
米時&春風
『やだやだ、幸一お兄ちゃんに買ってほしいのー』
水川
「二人で頼んでも買いません。」
米時&春風
『店員さーん、このお兄ちゃんがエロ本を買ってくれなーい』
部員
「確かにこれは・・・・・ちょっと」
グラピ
「部長は、そんな風景をずぅーと見てたんですか? よほど暇なんですね」
部長
「この話に出てくる店員が俺だ。だから、見ないといけなかった。うん。」
部員
「でっ、何のメリットがあるんですか? 話の内容からするとメリットがよくつかめないんですけど」
部長
「つまりだ。こいつらを記事にすると、最近の新聞の売り上げの低下がウナギ登りに上がり、指示率もアップ。そして、こいつらの個性要素も手に入り、一石二鳥だ。分かったか? 我らは、あいつらを踏み台にして、上に立つんだ」
部長がホワイトボードに写真部を踏みつぶしている新聞部を書いた。
3
水川は家に帰ってすぐに部屋に入った。すると、幸二(弟)が部屋に入ってきた。
幸二
「兄貴。明後日の誕生日来るの?」
水川
「あいつが嫌がるだろ。行くわけない。」
幸二
「行くわけないって、家出するんだぜ。誕生日会。」
水川
「なんで、いつも友達の家でするのに。」
幸二
「いやーなんか、幸歌(妹)の友達が兄たちの顔を見たいやら、何ちゃらで、うちでやることになったんだ。あと、幸歌からの伝言『恥を見せるな』と」
恥を見せるな・・・・・幸一の心にブルーと言う名の部屋ができた。
幸二
「まぁまぁー。幸歌は恥ずかしいだけさ。気を落とすなよ」
米時と春風に言われたセリフと全く同じだ。
水川
「それ、米時に言われた。」
幸二
「米時さんもねぇー・・・・まっポジティブに考えれば、すむことだし」
水川
「携帯の充電器。前に貸しっぱなしだろ。俺使うから、返してくれよ」
幸二
「あっそれ、幸歌に貸してる。ちょうどいいや、いい触れ合いをしてこいよ。兄と妹の許されない愛・・・・見たいな」
水川
「ケータイ小説の見過ぎは、将来に毒だぞ。」
僕はしょうがなく、妹の部屋に向かった。幸歌は昔から、僕のことを極端に嫌っている。食事も別にして、と言われたこともあるし、一番ひどかったのは「幸一とタオル別にして」と言われたことである。普通なら「お父さんとタオル別にして」と、言うはずなのに、兄貴とタオル別とは・・・・・・何とも、痛々しい。
いつ嫌われたのか、まるで見当もつかない。
部屋の前に来ると、冷や汗をかいた。
水川
「幸歌、いる?」
幸歌
「何?」
水川
「幸二から借りた充電器。あれ、俺のだから、借りてんだろ? 返してくれないかな」
そう言うと幸歌が出てきた。ジャージ姿にイヤホンを首からぶら下げていた。
幸歌
「はい、これ。あと今度の誕生日会、下手に髪型とか変えなく手いいから。あと、自然体で」
水川
「わかった。」
そういうと、幸歌はドアを閉めた。
水川
「珍しいな・・・・」
〈3〉に続く