第一話 新聞部VS写真部 (1)
第一話に出てくるNEWキャラ
グラピ「新聞部部員。本名江口義忠」
生徒会長「名前のとおり」
水川 幸歌「幸一の妹 (2)で登場」
第一話 新聞部VS写真部 (1)
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昨日、久方ぶりに校内新聞を買った。この新聞は、値段の割には面白みがあり、愛読者も多数存在する。この新聞の売りは、細かい出来事を挿絵で表現し、独特な文章で読み進める気力を与える。だが、この新聞には『人権』は適用されない。なぜなら、袋とじに『今月のバカ大賞』や『000くんが▼×さんに、ラブレターを書いていた』などと、悪いところも多数存在する。だから、途中から買うのをやめていた。だが、昨日ぶらり、ぶらりとうろちょろしていたら、たまたま、新聞部の前を横切ると、咄嗟に新聞を買った。
教室で本を読んでいると、米時が微笑を浮かべながら、僕の机の前にきた。
米時
「幸一、昨日新聞買ったんだって?」
噂というものは恐ろしいものだ。だが、よーく考えると、机の上に新聞があったため、それを見て話題にしたのだろう。
水川
「衝動的に」
米時
「その顔だとまだ、袋とじに手をかけていないな・・・・・袋とじを開けてみそ」
米時はペーパーナイフを僕に手渡した。僕は袋とじを勢いよく切り裂いた。すると、大々的に「写真部の個性写真!」「あいつらなら、どんな写真も撮るぞ!」とゴシック文字で書かれていた。その下にはこの前撮った、プールに飛び込んだ時の写真が載っていた。
僕は誰が仕組んだか、すぐに見当がついた。
水川
「これ、お前が新聞部に流したのか?」
そう言うと米時は、びくっと、体が動いた。
米時
「いや〜その・・・・ほらっ、新聞部がネタがないから、ネタをくれって・・・・グラピが」
グラピと言うのは、新聞部部員の江口義忠のニックネームである。名前の由来は分からないが・・・・・そう言われている。
米時
「だから、グラピが一回取材したいって、言ってたし、今後の写真部のことを考えると・・・・・必要なことだろ?」
うまく丸めこまれた。
水川
「だけど、お前、正式部員じゃないだろ」
米時
「だけど、『仮部員』という名前にちゃんと『部員』て、入ってるから、別にいいだろ」
米時は、写真に全く興味がない。だが、ユードモデルには、興味があるらしい。
水川
「わかった。で、いつ来るわけ? グラピは?」
米時
「明後日の放課後。ソフトテニス部の部活動紹介の写真撮りの日。」
水川
「お前な・・・・・・簡単に言うけど、新聞部の新聞には、吉と凶があるんだ。それくらい知ってるだろ?」
米時
「あいつが土下座までして、俺に頼ってきたんだ。断るわけにはいかないだろ?」
こいつの言い分は時々嘘だ。
水川
「プライドが高い新聞部のグラピが土下座するわけないだろ?」
米時
「あっあったりまえだろ。だからこそ、俺は許してしまったんだ。春風もいいと言ってるし」
両方とも仮部員。仮部員のこの二人は団結心が高い。
水川
「じゃぁーいいけど、顧問の布本先生に新聞部の取材が来ることを伝えておけよ。そうすれば、変な事を書かれずに済む。」
米時
「そこら辺のことは、春風がやってくれるから、大丈夫だ。」
春風にやらせると、逆に怖い。
水川
「なら・・・・いいけど」
帰りの放送が流れ始めた。生徒会長の声に敏感に反応し鞄を片手に部室に向かう。途中で春風と金村と合流し新校舎の部室に向かった。
野原
「おっす!」
後ろから水泳部の野原に声をかけられた。
米時
「水泳部にうちわとかない? 部室がサウナ化する写真部に幸福を〜」
春風
「クーラーボックスでもいいや、足入れて冷やすから」
金村
「ドライアイスとかない? 手作りクーラーを作るから」
写真部部員たちは、別に水泳部に恨みはない。だが、水泳部にはクーラーも扇風機もある(クーラーは動かない)特に苛立っているのは、やはり、金村だと思う。
水川
「気にするな、野原。こいつらは嫉んでいるだけだから」
野原
「そのくらいわかるさ。写真部には、扇風機とかないからな・・・・・うちにある、電池で動く扇風機があるけどいる?」
金村の目の色が変わった。
金村
「てぇーめー。俺に喧嘩売ってんのか」
野原のシャツの襟をつかんでいる金村の目の色は、殺意に燃えていた。
野原
「今度、今度持ってくるから。なっ、なぁっ」
金村
「分かればいいんだよ、わかれば」
水川
「すまないな。」
野原は、何も言わずに部室に入っていく。
春風
「明後日の取材のために部室の掃除をしないとナ」
金村
「異議なし」
米時
「同じく。まずは、グラビアの写真とかは、それぞれの家に持って帰ること。」
我が部室は一件まともそうに見えるが、それは表側のイメージであり、裏側のイメージは発情期と思春期のいじり混じっている。中には等身大のグラビアアイドルの壁紙が貼られていたり、あちらこちらに、放送禁止用語が書かれている。女子生徒が来たら、すぐに出て行きそうな、いや、絶対出て行くだろう。
水川
「明後日・・・・・そういえば、幸歌の誕生日だ・・・・・」
米時
「幸歌、て幸一の妹の?」
春風
「兄に似ずにかわいく育ってくれた、妹のことか」
ところどころ、厭味が入っている言葉。
金村
「小学6年生にして英検3級を取っている。スーパー小学生の誕生日か」
水川
「別にどうでもいいけど」
米時
「いや、お前は誕生日を祝ってやれ。取材は俺達に任せろ」
水川
「あいつ、俺のこと家族と思っていないから」
米時&春風
『なら、行かないと』
水川
「なんで?いやがらせみたいに思われたくないし」
米時&春風
『それは違う。妹は兄の愛を感じたくて、照れているだけだ。』
こいつら・・・・練習しているかのような、ハモリ具合。
水川
「わぁーたよ。いくよ、いく。」
僕はしょうがなく、妹の誕生日に行くことにした。
(2)に続く