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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。
この連載作品は未完結のまま約4年以上の間、更新されていません。
今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい。

”みそっかす姫”は帝国の皇子に溺愛される〜龍の姫君シリーズ〜

作者:冴月アキラ
 その時、朱凜の全身は怒りで熱くたぎっていた。

 ちょっと前まで、謁見の間の絢爛さに呆気にとられていた田舎者の姫の顔はそこにはなく、琥珀色だった瞳を怒りで金に輝かせながら、壇上のやんごとなき立場にあるだろう者達を、今にも噛みつかんばかりに見据えている。

「……もう一度、お伺いできますでしょうか?」

 朱凜は、荒くなってしまいそうな声音を全力で押さえ込みながら、問うた。
 
「うむ……こうして輿入れしてきてもらった朱凜姫には非常に申し訳ないのだが、第一皇子、フェルナートとの婚礼を取りやめたいと思っておる」

 そう告げたのは、御年四十四歳になるガーヴィルグ帝国の皇帝、ランヴェール三世だ。男として脂ののったは堂々たる偉丈夫だが、さすがに自分が言っていることに非があるのは理解しているのだろう。顎の髭を撫でながら、その視線はどこか泳いでいる。

「何を……っ」

 あまりに無責任な物言いに、思わず朱凜は声を上げそうになる。けれど、すぐ隣にいた外交官がそれを手で制し、視線で『お願いですから堪えてください』と訴えてくるので、朱凜は口を噤み、琥珀色に戻った瞳を落とした。

(どうしていつも、こうなるの……)

 十七になるのに背も伸びず、凹凸もほとんどない身体、姫としての手習いごとなどはことごとく駄目で、よくできた兄弟、妹と比べられ、”みそっかす姫”と祖国で呼ばれていた朱凜にとって、この婚礼は唯一自国のために自分が役に立てるチャンスだった。

 だから、苦手な勉強も、この国に関することは頑張り、教師からもお墨付きをもらうくらいにはなったのだ。
 それなのに、結局ガーヴィルグ帝国でも朱凜は”みそっかす”でしかなく、第一皇子に相応しくないという烙印を押されてしまった。

 朱凜は固く目を閉じた。襲ってきた虚無感で身体が一気に重くなる。
 もうこのままどこかに行ってしまいたい——そう思った時だった。

「——遅くなりました」

 凜然とした声と共に謁見の間にやってきた、青みを帯びた鈍色の髪の男——アースヴィルド第二皇子は王に向かってこういった

「フェルナート兄上と朱凜姫との婚礼を取りやめるのならば、私が朱凜姫を娶ってもよろしいでしょうか?」


 思いがけない第二皇子の提案から、”みそっかす姫”と呼ばれた朱凜の新しい物語が幕を開ける——
プロローグ:婚約破棄?
2021/02/15 17:00
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