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書記さまはブラックコーヒーがお嫌い  作者: 黒石 アナ
優雅たれと、華は咲く
10/10

ワンコはストレス溜めたら壊れちゃうから、発散させなさーい

白須ちゃん、頑張って!

 

 「花襲は何をやっているんだ?新入生のしつけすらまともに出来ないとは…学園創立以来首位を独占している特待生共も、堕ちたものだな。」

 蔑んだ声音で告げるのは、アタシたち、いわゆる花襲の会のライバルである、今回の新入生歓迎会主催の生徒会長さまの御言葉だ。


 煌びやかな大ホールで行われる新入生歓迎会。新入生ちゃんを連れて来なかったことにだいぶ同じ組織の三年から叱責をもらったアタシは、今日の星座占いを恨んだ。


 最悪だ

 アタシがそう思うのも仕方ないと思う。

 

 新入生ちゃん…朱木薔さんが吐いたあと、りみちゃんを叱り、新歓の準備をしと、てんやわんやのうちに新歓が始まって…

 確かに今回はこちら側の失態だ。準備不足も否めない。なんせ貴重な特待生、しかも教科平均98オーバーの化け物をスカウトできるチャンスを不意にしてしまったのだから。

 日本最高峰の大学にも余裕で進学出来るこの怪物揃いの学園で、それらの偉業を達成できた人間は片手の数にも満たない。それほどの怪物。

 が、まさか食べ過ぎでゲロ吐いてそのまま寝落ちしましたー、なんて言えないわー。


 微かに顔を顰めたのを見咎めたのか、生徒会長殿がここぞと責め立てる。

 「ハッ、流石に花襲のネームドたるお前でも、バケモノじみた庶民の相手はきつかったのか?いや、それともただの虚言だったのか?」

 ネームドとは、各組織内で功績を挙げた者に贈られる異名だ。ネームド認定には各組織ごとに多少の違いはあるが、大方同じだ。組織内全てのネームド持ちが、選考された人物を満場一致で認めた場合にのみ、だ。

 そう。実はアタシ、意外と偉いのだ。そして面倒ごと押し付けられるのだ。ハッ、ならなきゃ良かった…

 

 それにしても…庶民、ね。


 「ええ、ですからその件は何度も謝罪を申し上げているはずです。しかし、こうなってしまったのはそちら方にも責任があるのだということは、認識していらっしゃいますか?件の新入生は、入学式のあと、直ぐに上級生に追いかけられましたと申しております。そのことで心に大きなダメージを負った彼女は、その翌日、まあ本日ですが体調を崩してしまったのですよ。また、彼女への侮辱は碧落寮全体への侮辱にもなると、理解しておられますか?」

 ニッコリと笑ってそう告げてやる。今度はあちらが顔を顰める番だ。


 ………ええ、まあもちろん捏造しますとも。流石に今回はこちらに非がありすぎる。ただでさえ立場が不安定な特待生寮なのだ。付け入る隙など誰が簡単に晒すものか。

 それに、ちょうど朱木さんが追われていたことを耳にしたのも運が良かった。そのおかげで、逆にこっちがコイツらの揚げ足を取ることができた。ザマあwww


 詮ないことを考えてしまう。それくらいにはこのキャンキャン吠える負け犬共がウザい。

 あーあ、どーっせアタシが花襲だから、朱木さん盗られるって思ったんだろうねぇ。そんなミエミエの不正をうちら花襲がするわけないでしょうに。……いや、下の方の子はするな。

 

 「この件につきましては、定例議会の議題にあげようと、花襲の会の方でも審議しております。毎年毎年、品性や格式もなく自らよりも立場の弱い者を追うなど、学園の品位自体を貶めているのではないかと、意見が出まして。」


 言葉を詰まらせる生徒会長殿を見て、してやったりと浅く笑う。伝統と嘯き、生徒会が特待生を追いかけ回していること、まさか花襲が知らないと本気で思ったのだろうか。いや顔ずっと顰めてる様子から見てそう思ってたんだろう。馬鹿が。


 言葉を詰まらせる生徒会の長に我慢がなくなったのか、氷河副会長殿(インテリ気取り)が口を挟んでくる。

 「そうですか。では、それは後日議会で報告をお願いいたします。しかし、今回の件は大問題ですよ。あなた方庶民の都合で振り回されるなど、あってはならないことです。」

 そして意味わからんことをほざく。眼鏡クイッヤメろ、寒気がする。

 「ふふ、面白いことをおっしゃりますね……?」

 あんまりに苛立ってしまい、目の前のインテリ気取りのネクタイを掴んで囁く。

 

 「アタシは今、花襲の会のネームド、〈牡丹一華〉としてここにいる。ルールを説くなら、まずここで庶民なんて言葉吐くんじゃねえよ。お前らもわかってんだろう。身分について取り締まるのは花襲だぞ。てめえら、しょっ引かれたいのか?」


 「っ、ですが、本当のことではありませんか?その特待生のせいで、諍いが今も起こっている。どう足掻いたとしても、今回碧落寮は責任を免れませんよ。」

 一瞬怯むが、すぐに言い返してきた。さすがインテリ気取り(副会長殿)と言ったところか…おっとルビと本文反対だわ。

 

 はぁ、あー、アタシ今日だけで何回溜息吐いたよ。マジで。幸せ何個逃したよ。慰謝料請求できるかな?幸せ強奪で。

 コイツらも一応ネームドなんだがなぁ。

 アタシが碧落寮の白須美海じゃなく、花襲の会のネームド〈牡丹一華〉の白須美海として来たって、どうして分かんないんだろうか。

 ほんとにそこが意味わからん、マジ卍


 「そこら辺にしておけ、白須。」

 

 「チッ」

 「いや、ひどくね?それは、ひどくね?一瞥もくれずに舌打ちって、心が、しんじゃうから。」

 「チッ」

 「……えぇ…」

 「チッ」

 その声を聞いて、すぐに舌打ちする。何しに来たんだよ。そして反論すんな、うぜえ。

 やって来たのは、三本柱が一つ、風紀委員会のネームド様だ。風紀委員会二年統括、ネームド〈冷月〉当麻止(とまどめ) 立夏(りっか)。一年の頃、特待生に絡んでいったチンピラ風紀。アタシがおもいついたさいきょうのくそやろう!みたいな奴だ。あ、やべ。舌打ちが止まらない。

 「チッ」

 コイツを視界にも入れたくねえ。こんなピンクの頭髪プリン野郎がネームドなんて、アタシは認めない。ずええぇったいに認めない!

 睨みつけるアタシにタジタジな〈冷月〉(笑)な方wwwを嘲る。


 「アンタさぁ、マジで何しに来たの?風紀委員会がこの話に突っ込む隙間ないんですけどぉ。」

 「イヤイヤ、そんなことないからね?まだ特待生ちゃんには何処の手垢もついてないからね?オレら風紀委員会も有能な人材はいつでもどこでも募集中☆だからっ!」

 「うぜえ、まじうぜえ。そのくっさい口さっさと閉じろや。」

 「臭くないですぅぅ!オマエと同じ歳ですぅぅ!?ていうか聞きました?アンタのところのネームドサン、とてもお口が悪うございますが、っててぇええなぁぁ、ついでに足癖もわるいんですけどぉ!?」

 うっさい害虫を駆除する為に、いつのまにか足が動いていた。でも、仕方がないさ!キモいのが居たら嬲る、それが女子。

 アタシがウンウン頷いていると、何故かキモい(以下略)が囀る。て、おい、上司に告げ口するとはふてえなぁ、テメエおい?アタシの右足が最高速度で唸るぞ。


 「ぶ、フフッ。あ、ああすまない。うちのは総じて狂犬が多いんだ。でも、仕方ないよね。しょうがない。君が来た時点で彼女がこうなるのは目に見えていただろう、風紀委員長殿?」

 バーイアタシの上司

 さっきアタシを怒った奴。ついでに笑い堪えるんじゃねえよ。もうバレバレなんだよ!


 「確かにな、それはこちら側の責任だ。すまないな、花襲のお館殿。だが…ここにいらっしゃる生徒会会長殿と副会長殿にも、責任はあるのではないかと思うのだが。」

 バーイキモい(以下りゃ)の上司オマエ、何故コイツが先にくるの止めなかった?まじでなんで止めなかった?だがいいこと言ったからゆるーす!


 んで、矛先の向いた馬鹿二人はというと、

 「そ、それは、」

 おお、右往左往してるーwww

 さっさとKIERO☆ヨ

 

 「っ、特待生も含め、碧落寮についての疑惑も後日改めて。

 くるりと踵を返す二人。


 はいはいバイバイキン、バイバイキン

 でも、ちょっとヤバいかも。もし新入生ちゃんの噂流されたらマジで終わりだ。


 アタシが唸っているといつのまにか話は進む。会議は踊る。

 「感謝しているよ、風紀委員会。花襲の者が絡まれていたのを助けてくれて。」

 なんか意味わからん言葉が聞こえたぞ?

 「フッ、そういうことにしておこう。だが、次は諍いを起こさぬよう気をつけてくれ。…あと、うちの者も絡んでしまっていたしな。」

 ああ、そういう…だが納得は出来ん。なんでアタシが聞かん坊みたいになっちゃてるのよ!?

 

 わちゃわちゃしてると、急にキモいが喋り出した。

 「でも、マジなのか?平均98って」

 しかもこっちに寄ってきて、おかまみたいに手逸らして、こそこそっと

 「……不正、したんじゃ、ないの?」

 プラス上目遣い。

 

 とりあえず、殴った。


 アタシが駆逐した奴を抱えた風紀委員長が、しかし真面目に言う。

 「だが、そう思う奴が多いのは事実だ。うちにも信じるアホはいる。コイツみたいにな。学園を信じないってわけじゃない。ただ、心の問題だ。そう簡単に解決はせんだろう。」

 唇を噛み締める。ああ、指摘の通りだ。これはアタシのミス。否定できないところもある。

 「まあ、気張れとその特待生に伝えといてくれ、俺たちは仕事に戻る。」

 …そういや警備してたのに、こっち来たんだ。


 「で、お上がなんのようですか?さっき仕事できないノロマって言ってたやつに。」

 なんとなく哀愁漂う風紀の長を尻目に、我らがあるじに尋ねる。

 雰囲気が変わって、唇を吊り上げた御主人が告げる。

 「いやーね、その眠り姫さま?絶対捕まえといてって言おうと思って。」

 「はぁ!?無理でしょ、それ。特待生ですよ?」

 アタシの答えを予想して、主人殿は笑う。

 「君っていう前例があるでしょ。それに、そのおひいさま、椿と桔梗に縁があるっぽい、てゆーかある。」


 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 


 だから、よろしくね、って笑う上司の顔が浮かぶが、もう遅い。

 抱えたりみちゃんに憐れみの視線を向けられて、涙が出そうになる。

 もう、遅い。

 だって、生徒会って出しちゃったんだもん。

 蹲るアタシをそっとりみちゃんが撫でてくれる。



 ……あー、絶対あとで怒られるぅ

 最悪だぁ

ありがとう、白須ちゃん!主人公出てこね。しかもヒーロー出てこね。

やべ

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