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第7話 アメリカ大統領3


 レセプションの翌日。

 いよいよ今日が本番の日であった。何が本番であるのか。それは、大統領との日米間での問題について話される日であった。

 長野原は、昨日から胃がずっとキリキリしていた。

 今日も沼田がいつもの発作を起こしてしまわないか。心配で心配で寝ることができな、くもなかった。万全だった。睡眠時間はきっちり8時間取っていた。どうせ、心配したところでいつもの発作は起こるのだから。

 長野原はすべて諦めていた。


 「おはようございます、そ……沼田さん」


 朝ということもあり油断してつい総理と言いそうになってしまう。だが、長野原はぎりぎりで『総理』という禁句を口に出さずに済む。


 「おう、長野原おはよう」


 あの発作的な衝動さえなければ本当にいい人なのに。

 長野原は沼田を見てそう思う。


 「さて、今日の予定は?」


 「大統領との会談です。おそらく関税を下げろと要求してくるはずです。あと、思いやり予算を増やせと」


 「……日本は世界に比べても思いやり予算が多い方だと思うのにどんだけ増やすんだか」


 沼田は呆れてため息をつく。


 「まあまあ、あの国は自国ファーストですから」


 長野原はとりあえず沼田の怒りを収めようとする。


 「はぁ、会いたくないなあ」


 沼田は弱気のまま首相官邸へと黒い車で向かう。

 沼田は私邸に住んでいる。そのため、私邸から出ようとすると毎日毎日朝マスコミが出待ちしている。


 「総理! 今日の会談うまく行きますか!」


 「総理!」


 「総理!」


 「私を総理と呼ぶなああああああ」


 「……またか」


 相変らずバカなマスコミが沼田を怒らせる。総理、総理。何回も総理と連呼する。

 そして、沼田がいつも通り「私を総理と呼ぶと叫ぶ。

 あーあ。長野原は1人憐れむ。呆れる。

 マスコミはその場で唖然とする。

 その隙をつき車は官邸へ向かって進む。


 ◇◇◇


 首相官邸。

 

 「大統領きまーす」


 首相官邸の玄関にて沼田は立っていた。隣には中村外務大臣、上野副総理がいる。


 「hey!」


 ご機嫌な表情で車から降りてきたアメリカ大統領ウーノに対して沼田は握手する。


 「ウーノ大統領よろしくお願いします」


 「こちらこそよろしくな沼田総、さん」


 長野原が事前に総理と呼ぶなとウーノに言っておいたおかげでウーノはぎりぎりで総理と言わないで済む。

 首相官邸の会議室で日米首脳会談が始まる。

 内容は予想した通りであった。


 「もっと、日本は駐日アメリカ軍に対する費用をもっと増やすべきだ」


 「それについて、日本は他の国に比べても十分出しています」


 「いや、規模的に見てももっと出すべきだ」


 「そ、そうは言っても」


 一方的にウーノが自身の主張を言うだけであった。沼田は一切主張することができない。世界の警察。世界を引っ張っているリーダーであるアメリカファーストなだけある。


 「いいか! 日本はアメリカの言いなりになっていろ」


 ついにウーノはいら立って暴言を吐く。

 その言葉は日本にとっては到底認めることができない言葉である。


 「その言葉はアメリカの本音でしょうか?」


 「そうだが」


 「日本が中国についてもいいと?」


 「そんなことやれるもんならやってみろ」


 ウーノは感情的になり激論する。


 「確かに難しいかもしれません。だが、日本は別にアメリカだけを向いている必要はないと思います。まあ、離れようとしたらあなた方は妨害しようとするんでしょうね。でも、国民に真実を伝えれば変われるはずですよ」


 「……わかった。今回は思いやり予算について例年通りでいい」


 「それならば日本側としても承諾できますね」


 その後は互いに不敵な笑みを漏らしながらも話を進める。すべて終わったのは5時間後であった。

 その間、長野原は緊張していた。

 会議の内容について? 違う。また、総理が発作しないかについて心配していた。だが、何事もなく終わった。

 ウーノは会談が終わると不機嫌なままアメリカへと帰っていた。


 「ふぅ、何とか終わったか」


 羽田空港でウーノが帰国したのを確認すると沼田はそのまま私邸へと帰ったのだった。


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