第4話 地方視察
日曜日。
長野原は、群馬県甘楽郡南牧村(ぐんまけん かんらぐん なんもくむら)にいた。どうしてこんな有名でもない村にいるのかというと、総理に付き添っているからである。
「いやいや、沼田総理これはこれはあ──」
「私を総理と呼ぶな!」
南牧村村長の長谷博が挨拶してきたが、長谷は総理と呼んでしまった。
これに沼田は毎度恒例の「私を総理と呼ぶな!」と叫んだ。
「ひぃ」
御年72の長谷村長は沼田のあまりの剣幕にかなりビビっていた。
「すみません、長谷村長。彼はこのような性格ですので」
長野原が長谷村長に謝罪の言葉を述べる。
「ああ、まさか本当にすぐに怒るとは思っていませんでした」
長谷もニュースなどでは知っていたが、本当にすぐに「総理と呼ぶな!」と言ってくるとは思わなかったようだ。
想像以上のことでかなりの驚きを持っていたようだ。
「さて、私が今日ここに来たのは地方創生のためです」
今日、群馬県南牧村に来たのにはもちろん理由がある。
群馬県西部、長野県との県境にある南牧村は人口約1000人の小さな村である。山間のむらであるが、わざわざここに来た理由というのは、この村が日本一高齢化率が高い村である。人口の66%程度が高齢者。つまりは、超高齢化社会の村などである。消滅可能性都市のランキング第1位になっている村でもある。
このような地域を見て何とか日本の少子化を止めなければならない。沼田はそのように思い、今回の視察が実現することになった。
「この南牧村はご存知の通り若い人が少ないのでどうしても人口増加が見込めません。それに人口減少の理由としてやはり山間の地域ということもあり目立った観光地や工場など仕事をする場所がないため、移住しても収入を得られるか心配で移住が進まない。そういった現状があります」
南牧村には目立った産業がない。そのため、若い人が住むには収入が見込めない。だから、移住も進んでいない。長谷村長はそのようなことを説明していた。
地方創生をいうのは、いいが山間の地域などには若い人が住むには収入を十分得られる仕事がない。それが問題と長谷は語った。
「ありがとうございます」
その後、長谷村長の案内で南牧村のいろいろな場所を見る。
山間の田舎だと感じた。
だが、長野原は都心部の生活で心にゆとりが持てないので、定年後にはここにきて心を落ち着かせるのも十分いいかもしれないと思った。
3時間ほど村内を車で案内してもう一度村役場に戻り村役場の職員から話を聞くとそのまま沼田、長野原、SPらは車で東京に戻ったのであった。
次回は変則的に30日水曜日更新です。




