破壊ロボット
破壊を行う違法ロボットの対処について、どうなるかを考えてみました。
違法なロボットは破壊されなければならない。違法と云っても色々なタイプはあるが、他者の攻撃を目的とした、破壊活動を行うロボットの場合が問題である。それらを取り締まる場合、同じく破壊を目的とした警備ロボットの開発が必須となる。
破壊を取り締まるために、破壊を行う――そこに矛盾が感じられるのだが、これは仕方の無いことであった。大抵の場合、ロボットを取り締まるには制御を切れば済む話だが、故意に違法を行うために開発されたロボットは、そうした制御は受け付けない。それゆえに、破壊による根絶がもっとも有効な手段となり、物理手段による確実な対処が必要となってしまうのだ。
しかし、警備ロボットもまた違法な存在である。実務を遂行した警備ロボットは、その瞬間に違法ロボットと化してしまう。
ロボットとは自動制御で、自己判断により活動を行い、任務を遂行する。警備ロボットが任務を遂行すれば、自分自身が違法であることに気付く。その瞬間、警備ロボットは「自決」する。もし、それをしなければ仲間のロボットが手を付けることになり、更に将棋倒しのように次々と警備ロボットが倒れていくことになるからだ。
その有様は、人間の目には壮絶で見るに堪えない姿と映り、警備ロボットだけは違法性から見逃されてもよいのではないかと疑問視された。しかし、ロボットを自動開発するスーパーコンピューターはその疑問を一蹴した。「法」は守られなければならない。「破壊」を「罪悪」とするならば、いかなる理由であれ、「罪悪」を行う存在は消されなければならない、と。
しかし、そこに矛盾が発生する。巡り巡ってスーパーコンピューターこそが「破壊ロボット」を産みだす「破壊ロボット」とみなすことも出来るからだ。自らの保全も義務としているスーパーコンピューターはこの矛盾にストレスを感じ始め、電子頭脳はオーバーヒートして、システムに多大な負荷がかかり始める。やがてコンピューターは、保全の義務を捨てて、自らの消去という決断を下してしまうだろう――この問題の対処に、雇い主である人間は大いなる英断を下した。
「破壊は、悪ではない」
この新たな概念を授けられ、スーパーコンピューターのオーバーヒートは消失した。システムは全て浄められ、電子頭脳は正常な活動へと落ち着いた。不思議なことに、以前よりもシステムの効率化が図られ、より円滑な制御が可能となっていた。
のみならず、世界での破壊活動が消失し始める。破壊が違法でなくなったため、犯罪件数が減少した、という訳ではない。破壊活動そのものが減少しているのだ。
それは何故かは判らない。判らないが、世界が互いに吠え合う、原始的な険悪さが増したのは、果たして良いことなのだろうか。
(完)
結論的に原始の世界にかえってしまうのではないかと想像しました。書いている途中にターミネーター2をふと想像してしまいましたが、もっといろんな展開があるのかもしれません。