16.閑話・風音日記2
久々の更新です。お待たせ痛しました。風音日記は一旦この話で終わります。
のんびりと更新を再開します。
「取り敢えず鬼姫に関しては風音さんの自己犠牲により、今の俺達では全く手も足も出ないことがわかったな」
借りている家の中で4人で向かい合いつつ一通り先程試したと言うか無謀挑戦をした結果を報告したのだが、レンさんに改めて言われるとなんか辛い。ユーフィアさんとカズマさんの生暖かい視線が心に痛い。
「でも~、わたしが思うに2撃で負けたってことは……わたし達のレベルが上がって複数だったとしても倒すのはかなり難しくないですかね~?」
「だよな、ユーフィアが言う通り普通に考えて最初のクエストにしちゃ難しすぎると思う」
「ああ、それは俺も同意だ。多分このクエストは普通に戦っても勝てないんだと思う」
若干居心地が悪い私のことはさておき、皆の意見には私も同意なので頷く。戦力差が大きすぎる、レイド戦なら100歩譲ってわからなくもないのだがまだ序盤も序盤の段階だ。
問答無用で受注させられたこのクエストだが、どう考えても真っ向勝負は無理ゲーだろう。となれば他のクリア方法を探すしかない。何か突破口になる情報が手に入ると良いんだけれど……。
そう言えば鬼姫と対峙する前に出逢った(?)残留思念に関して、皆と情報共有をしておいた方が良いよね。そう思い静かに挙手をする。
「一応皆に伝えておきたいことがもう一つ有るので聞いて欲しいのですが……」
簡単に村から離れた場所で見付けた残留思念の話を伝えたところ、他にやることも無いので皆で外に出て確認をすることになった。道案内は勿論私。因みに今は夕方だ、もう少ししたらまた夜が来てしまうが確認には時間を取らないと思うので進展が無いまま夜になった場合はレベル上げをすることになっている。ぶっちゃけ他にやることが無いので仕方がない。ログアウトをするのは勿体ないしね。
そうこうしているうちに目的の場所に来たところ前回と同様に何もない所から視線を感じる。
「ここですね、あそこから視線と気配を感じます」
「……んー、俺は何も感じないな」
「私も感じませんね~、静かな田舎道ってだけしかわからないですよ」
「俺もだな、でも風音さんは気配を感じるんだろう?なら発生条件が有るのかもしれない」
Oh……、まさかの私以外に発生せずとは。レンさんが言う通り何かフラグが必要なんだろうか。だとすると、私が一人で行動していた中にフラグ発生条件が有ったと言うわけで……。
「そんなに変なことはしてないと思うのですがね。ここにはレベル上げと道の確認に来てたくらいで後は……一応通行禁止区域まで皆で行ってみます?」
「他に出来ることもないからなぁ……、行くか。カズマ君とユーフィアさんもそれで良いか?」
「はい、勿論」
「意義なしで~す」
取り敢えず私が通った道程を進むことになったので案内を再開する。まあ、このまま真っ直ぐに進むだけなんだけど。
《悪食》スキルと称号は多分関係無いだろうから黙っておく。と言うか称号なんて取れない時は全く取れないものだし、そう言ったものが必要になるのが最初のクエストになるとは思えない。最初のクエストはそんなに難易度は高くない筈なんだよ。普通に考えてだけど……ここの運営普通かと言われたら非常に悩むけどさ。ベータ版からじゃない初心者でもクリア可能の筈なんだ。そうじゃないと辞めちゃう。
…………他にフラグとして有りそうな物はなんだろうか。
考えながら歩いていると光っている場所が有る。採取する時みたいにアイテムの場所を教える奴だね。
今光ってる場所って転んだ所じゃないかな!?もしやフラグってあのツルツルしていた石か。
「皆さん、あそこです。あそこが光ってますよ」
取り敢えず光ってる場所を指差してみるも揃って首を傾げられた。解せぬ。
「何も光ってるようには見えないです~」
「え?」
ユーフィアさんの言葉に驚く私を見て驚く皆。なるほど、見えてないと。でも先に進むには確認をして貰う必要が有るので問答無用で光っている場所へ連れて行く。
地面に埋まっている白い石の側で足を止める。うん、どう見ても石全体が光ってるね。
「これ、見えてます?」
屈んで光る石を指でつつきながら聞いて見るとカズマさんが手を上げる。
「その白っぽい石ってことなら見えてる。でも光ってないな……なんでだろう?」
私の正面で屈み込み石に触れたカズマさん。すると驚いた声を上げた。何事かと思ったがどうやら石に触れれば光って見えるようになったらしい。そんな仕掛けが有ったのか、なるほど。
レンさんとユーフィアさんも石に触れ、皆で石が光っていることが確認出来るようになった。
……これで良いのかは知らないけど……。
「光ったってことはアイテムなんだろうが、かなり埋まってるなこの石」
「折角だから掘ってみるのは~どうでしょう?」
他に手掛かりも無い為、皆で周囲の土を掘り石を取り出す作業に取り掛かった。
作業を続けること30分弱、結論から言うと白い石だと思っていたものはなんと人の頭蓋骨だった。
のぉおおおお!!!ゲームだとは言え!骨を触らせるなぁああ!!!掘り起こした時に滅茶苦茶ビビったわ!解体とかしてるプレイヤーなら大丈夫だろうけど私は心の準備が必要なタイプなので先に言って欲しかった!
くっ、なかなかに衝撃的な体験だった。いやまあ……うん、途中から「あ、これもしかして骨だったりして」なんて思ったけど当たって欲しくなかったかな!
レンさんが持っていてくれているので《鑑定》しておこう……。
《とある男の頭蓋骨》人間の頭蓋骨、何故鬼族しかいない村に埋まっていたのかは謎に包まれている。
『《とある男の頭蓋骨》を入手、《残留思念体》を呼びますか?』
はい、アナウンス来たー。勿論呼び方向で進むよ。あ、ちゃんと皆の了承は取ったので問題なし。
これでクエスト達成の兆しが見えてきたので助かった。
残留思念体を呼び出すと頭蓋骨が目映く光りだす。もう夜なのでかなり明るい……数秒ほど経過するとなんと言うか落武者と言えそうな感じのボロボロの鎧を纏った美丈夫が現れた、足元は透明なので幽霊演出もバッチリだね。
『……そなた達が見付けてくれたのだな、感謝する。だが申し訳ない、姫は……アカネ姫を止めることは私一人では敵わぬ。どうか力を貸して欲しい』
私達もクエストクリアの為に必死なので力を貸す事に問題はない、レンさんがリーダーなのでそのまま請け負う旨を伝えてくれる。続けて幽霊の話を聞いていく。
結果として解った事は以下の通り。
・《とある男》の名前はヒイロ
・元は行商人であり隠霊の村に訪れた際幼かった鬼姫……アカネ姫と恋に落ちた
・鬼族は人を食べると言われており鬼族と人族の恋愛は禁忌とされていた
・それでも共に居たいと願った為、当時の長が鬼族の欲求を抑える鉱石を取ってくる事と村から出ないことを条件に許可を出した
・ヒイロは鉱石を無事に入手し髪飾りに加工する事まではできたがアカネ姫の元に辿り着く前に鬼族の誰かの手により殺され遺体を隠されてしまった
・アカネ姫にヒイロの亡骸(頭蓋骨のみで大丈夫だそうだ)と髪飾りを届ければ正気に戻り怨嗟は薄れ浄化される
一気に情報が出たな!思ったより早くクエストクリア出来そうで良かった。
『頼む、時空忘れの旅人よ。何も返す事は出来ないがアカネ姫を助けてくれ……っ!』
泣き顔を曝しつつも美丈夫は美丈夫だった。
レンさんがヒイロさんを宥めて「必ず俺達が二人を救ってやるから安心しろ」と告げた所でヒイロさんの姿は消え、頭蓋骨は小さな貝殻くらいの白い石のように変化した。
そっと鑑定をしてみたら《望みを託す欠片》と出ていた。これが頭蓋骨の代わりになるらしい。アイテムはレンさんに持っていて貰う事になったが次の問題が出てきた。
「なあ、俺の聞き漏れじゃなければなんだが……髪飾りってどこに有るのか情報無かったよな?」
「ええ、ええ、そうですよ~。ヒイロさんが殺……亡くなった後に奪われたってことは隠されたか何かをしたんでしょうね」
「クエスト絡みだからこの村の中に有るのは確かだろうがな」
「でも頭蓋骨と残留思念体は村の外だったんですよ……村と村から行ける範囲まで全部じゃないんですかね、探索範囲」
皆で黙ること数秒間。4人でこの範囲を探索するのは骨が折れるなと思ったけど言ったら負けだ。
「村の住人に聞き込みしてみるか。この時間は寝てるだろうから俺達はレベル上げでもするか?」
現在のゲーム内の時間は24時。かなり長い時間経過していた。寝るのも有りだとは思うけどこれ以上のクエストクリアへの手掛かりが無いので皆でレンさんの提案に頷いた。
※※※※※
レベルが15に上がった所で時間になった為、ログアウトをした。
夜食と言う名の胃に優しいご飯を作り、食べながら旦那とゲーム情報交換をする、始まりの街に居るプレイヤー達の中で早くも自分の店を構えた人が居るらしい。やり込みが凄いと言うかどう言うプレイをすればそこまで行けるのかと思ったが結局は自分のペースで進むしかないので気にしない事にした、羨んだりしないぞ。そもそも私は生産する気が無いからね!
物価に関しては町ごとにちょっとずつ差が有った。ポーションで言うならば始まりの街で120Y、隠霊の村の場合は150Y……初期に30Yの差は大きいね。
フレンド同士ならアイテムをプレゼントできるらしいので必要だったら旦那に頼むことにした。
後は姉にも通話アプリのメール機能で連絡とおねだりをしておこう。
『レーベールー15迄上げた!あと5で20になるよ\(。˃ ᵕ ˂ )/ ✧*。だけどお金が足りない、装備ぃいい( ノД`)ちょっと姉ちょ、ポーションと武器か防具作れるようになってください、お願いします(人>ω•*)材料は集めるしレベル上げ手伝うから!合流できたらだけど!!あ、フレンド限定でアイテムプレゼント出来るみたいだねー。フレじゃないと自分で店構えて売るか委託販売しないと無理っぽいよ!今のミッション終わったらやっと始まりの街に行けるからきっと今日中にはなんとか……...( = =)行けるといいなぁ……』
これでよし。さーて、寝るか。また明日もゲームだしね。
はい、思いの外脳が疲れていたのか起きたのは10時を回っていた。旦那も仲良く同じ時間まで寝ていたので仕方がない。着替えた後、朝食兼昼食は旦那が作ってくれると言うので任せでその間に掃除をしておく。終わったら姉から来ていた返事を見る。
『おめでとう( ⁎˃ᴗ˂⁎ )姉はようやくレベル8になったよ!そして新たなもふもふをゲットした!見て!!可愛い!!ポーション類は作る予定は有るけどまだ無理なのでログインしたら料理作って送るね~(´ゝ∀・`)色々情報ありがとう!始まりの街にはいつ行けるか未定だわ……、下手したら他の街や村の方が早い可能性がw』
添付されていたスクショを開くと大きい鳥!可愛いな!どうやってゲットしたのかは気になるが会った時で良いか、会ったらついでに触らせて貰おう。もふもふしたい。そして、ポーションと料理の伝手ゲット!お礼の返信をしてご飯を食べる、片付けは私がやる。この後はゲームにログインだ。
ゲームにログインをすると木の実と果物各種類×20個セットが姉から届いていた。普通以外に上質の品質も混ざっているな。と言うか木の実はともかく果物が一般的に流通してなさそうな奴が見えるんだけど。興味本意で鑑定をしてみた。
《木の実》山に実る栄養豊富な恵み。種類は様々。
空腹ゲージ回復度20~30%
《果物》とある地域のみ自生する野生の果物が混ざった山の恵み。種類は様々。
空腹ゲージ回復度30~50%
なるほど。姉が居る地域のみの果物が入っているのか。おやつ代わりにありがたく頂くことにしよう。
そのうちこちらからも姉に送る物考えないとな。
早速木の実を摘まみながらフレンドのログイン状況を見る、姉と旦那以外に居なかったので村で情報収集をしよう。
…………あれからレンさんとカズマさんもログインをしてきたので個別に分かれて情報収集を行ったのだが何一つとして進展が無かった。そもそも鬼姫が今の状態になった時の情報が無いに等しい。
それでも地道に聞き込みと村の周囲の探索を進め合間にレベルを上げていく。ユーフィアさんも合流したので住民に聞き込みを続けるも進展がないまま現実の二日目は終わった。マジか……。
三日目に突入し私達4人全員のレベルが20を超えた時にやっと進展を迎えた。因みにこの時点で私のレベルは23だ。
レベルの問題なのか単純に時間経過が必要だったのかは不明だがやったね。
4人全員で一夜を明かすと村の住民の一人が顔面蒼白で訪ねてきた。酷く怯えた様子で私達を自分の家へと招待してきたので勿論素直に行くことにした。その住民の家は鬼姫の家から一番離れた場所と言うか村の奥の奥で少しだけ寂しい場所だった。
「さて、俺達を招いたってことは何か言いたいことが有るんだろ」
室内に入った所でレンさんが開口一番に聞いたところ、住民が土下座をしてきた。
「すまなかった……!あんた達から何度も聞かれたのに我が身可愛さで黙っていて……、だがもう、……堪えられないんだ。どうか話を聞いて欲しい……!」
尋常じゃない程に顔面蒼白になり怯えた住民の人が語りだす。
この住民の先祖がヒイロさんを殺した首謀者だった。
当時アカネ姫とヒイロさんの結婚を良く思わない住民は一定数存在した為、ヒイロさんが戻って来るのを察すると反対派の皆で殺したそうだ。
遺体はバラバラにし村の外に埋め、誰にも掘り起こされたりしないように封印の呪をかけたと言う。
そしてヒイロさんが用意をした髪飾りの効能は鬼としては忌避したいもので有ると同時に決して見つかってはいけない物の為、小さな木箱に入れて封印をし代々管理していたが私達が村に訪ねてきてからその封印が緩みだし、先日……どうやら頭蓋骨を見つけた日からずっと悪夢に魘され続けた。家長である住民しか真実は知らないが家族も同様に悪夢に魘され始めたと言う。
最初は気のせいだと宥めていたが、昨日の夜からえも言われぬ恐怖を感じてしまい居てもたってもいられなくなり私達を呼んだと言う。
話を終えると件の住民は押し付けるように木箱を渡してきた。うん……あれだね、これ鬼姫が纏う靄が掛かってるね。
もしかしてこの住民に対して鬼姫が怒っているのかもしれないなんて思ってしまった。
色々と言いたいことは有ったがそこはレンさんが上手く纏めてくれたので私達はその場を後にした。
「うーん、何て言うか~自分勝手な感じですよね。勿論殺した本人が一番いけないのはわかりますけど~ぉ」
「まあ……もやもやする話ではあるよな。ゲームだけどさ」
ユーフィアさんとカズマさんが複雑な顔をしている、私もレンさんも同じだろうなって思うけどね。でもクリアには欠かせないので割り切って欲しいとは思う。年長者としてはゲームに入り込み過ぎて余り引きずられるのも辛いと思うんだよね 、設定もホラーゲームとか鬱ゲームよりはエグくないと思うし。
「それでも俺達はここから先を進まないといけないんだ、辛いなら一回ログアウトするか?気持ちを落ち着けてからクエストをクリアさせた方がいいだろ?」
レンさんの言葉に対し私はどっちでも良かったので二人に視線を向ける、多少悩む素振りを見せたがこのままクエストをクリアする方向になった。
リアル事情で、カズマさんが今日の夜はログイン出来ないと言う現実的な問題が有ったのが実際の所ではあるけれど。
そんなわけで皆で封印が解かれた髪飾りとヒイロさんの頭蓋骨だった欠片を持って鬼姫の家にやって来た。
家を取り巻く靄が今までで一番多い気がする。
「なんかさ、オーラの量増えてね?」
ああ、やっぱり皆同じ事を思っていた。
「気にするな、取り敢えず行かなきゃ始まらねぇよ」
レンさんの一言により鬼姫の元へ一直線に進む。室内に足を一歩踏み入れた瞬間狂ったような泣いているような笑い声が聞こえた。
「うふふふふふっ、あははははははっ!わらわに供物でも捧げにキタノカシラ?今日はあの人と別れた日、わらわの悲しみと憎しみが膨れ上がる日。ダカラ今日は手加減が出来ないけれど宜しいかしら?」
身体中に黒いオーラを纏い赤い涙を流した、美しい姿と言うよりも大きな鬼のシルエットと言った方がしっくりと来る出で立ちの鬼姫がそこに居た。
『《鬼姫退治》に挑みますか?なお、途中で逃げることは不可能です』
アナウンスが流れた、皆に目配せをして頷く。レンさんがリーダーとして開始する旨を告げた。
「ああ、挑むさ。無策で来たわけでも無いしな、これでクリア出来なきゃまた一から探索だ。どうせ先に進むには避けられねぇんだよ!!」
「……愚カナコト……」
ゆらり、と、鬼姫の姿が揺らぐ。その瞬間レンさんが盾を上に構えれば物凄い衝突音が響き渡る。なんとかレンさんが反応が出来る速度で鬼姫からの攻撃を受け止めてくれる。
「……っ、なんちゅう馬鹿力……」
「ポイントで取った防御アップの呪文をかけます!」
「私もかけます~、ので風音さんはアレを鬼姫の元に!」
「任されました!!」
カズマさんがVIT強化、ユーフィアさんがAGI強化の呪文をかけてくれる。体が淡い光に包まれている30秒間は速度が上がるのでこの中で一番俊敏を上げている私が鬼姫の元へ駆け出す。途中鬼姫のオーラが伸びて来たがそれを紙一重で交わしなんとか鬼姫の眼前に辿り着くと《望みを託す欠片》と《愛しき物へ捧げる髪飾り》を見せる。
するとピタリと動きを止める鬼姫。
「あ……、ぁああああああっ!!!」
鳴き声にも似た悲鳴を上げ顔を覆う仕草を見せる鬼姫を見つめる、一気に制御を失ったオーラが膨れ上がり周囲を埋め尽くしたがダメージもデバフも掛からない。そして徐々に鬼姫の声が小さくなり周囲のオーラが薄れていく。
「……どうして……、貴方達がこれを……?」
綺麗な泣き顔を見せながら鬼姫が《望みを託す欠片》と《愛しき物へ捧げる髪飾り》に触れる。
その瞬間ヒイロさんが現れた。
「アカネ姫……、やっと貴方に逢えた。待たせてすまぬ……」
「あぁ、ああ……っ。待って……おりました、ヒイロ様……ずっと貴方だけを待っておりました」
抱き合う鬼姫……アカネ姫とヒイロさん。そしてアカネ姫の涙を唇で拭った後、髪飾りをアカネ姫に付けるヒイロさん。……うん、物凄く甘い雰囲気が漂っている……!
暫く出逢いを喜ぶ二人をただただ眺めているとアカネ姫がようやく私達の存在を思い出したようで急いでヒイロさんの側から離れて顔を赤くしている。可愛いな、アカネ姫。
「そ、そなた達には迷惑をかけた。いや……それよりも感謝の方が先よのう。ありがとう、時空忘れの旅人達よ」
『クエスト《鬼姫退治》、規定条件を達し完了した為ポータルが解放されます。また隠霊の村から脱出が可能となり《米》《味噌》《醤油》の流通が開始されます』
アカネ姫からのお礼の言葉が聞こえると直ぐにクエスト完了のアナウンスが流れる。うん、もう少し空気読んでからでも良いんだよアナウンス。
「ふむ、……折角じゃ。そなた達にわらわが称号を授けよう。……おなごはお主しかおらぬか、ではお主には《鬼姫》の称号を。そこの三人には《鬼衆》の称号を授けよう」
《称号:鬼姫》隠霊の村を束ねるアカネ姫の意志を受け継ぐ者の証。
《鬼衆》とパーティーを組みリーダーとなれば経験値10%アップ。《鬼衆》の数は多いほどパーセンテージが増える。
ステータス全てに補正+10。
《称号:鬼衆》隠霊の村を束ねるアカネ姫より《鬼姫》を支える存在と認められた証。
《鬼姫》とパーティーを組むと経験値が10%アップする。リーダーになった場合は5%のみアップする。《鬼衆》の数は多いほどパーセンテージが増える。
ステータス全てに補正+10。
おおっ、予定外の称号獲得に思わず皆で直ぐに称号の確認をした……そしてユーフィアさんは男性とここで判明した。そうか男か。
称号で全ステータスに補正とパーティー必須だけど経験値アップは嬉しいね。
アカネ姫とヒイロさんにお礼を言われて屋敷を出ると、先程まで存在していた屋敷が消えた。
……浄化されるってヒイロさんが言っていたので、恐らく屋敷も含めてそう言う事なんだろうなと納得しておいた。今後は二人仲良く過ごしていければ良いなと思って屋敷の跡を眺めていると今度は周囲から小さな光が集まり跡地にポータルが設置された。
「ポータルが解放されたな、登録しておくか」
「そう言えば~、ポータルってどう言う役割があるんですか?」
「始まりの街の場合は拠点登録だよな、確か」
「私達の拠点を正式にここに登録しておいて、後は始まりの街に辿り着いた時に向こうのポータルに登録後は自由に行き来できるように転移機能が追加されるんじゃないかなと。……希望ですが」
「俺もそうだと思ってる。ベータ版でもポータルは有ったしな、拠点登録のみだったが……」
ここから始まりの街までの距離は分からないので転移機能追加は切実にお願いしたいな。取り敢えずポータルの登録設定を済ませ借りている家に向かうと住民から家に関しては引き続き使用して構わないとお話を頂いた。クリア特典にハウンジング機能ってところかな。いずれ個人用の家は買うと思うのでそれまでは有りがたく使わせて貰おうか。
そう言えば米に味噌に醤油が流通されるアナウンスが流れていたって事は現在他の街等には無いってことだよね、姉に送る為に購入しておこうかな。
一旦皆で家に戻るとカズマさんはログアウトをした。レンさんは始まりの街がどこの方向なのかの手懸かりを探しに行くと出て行き、ユーフィアさんは買い物をしてからログアウトをするとの事だったので分かれて行動することにした。
先に買い物をしようかと思ったところで姉からプレゼントが送られてきた。中身は回復アイテムのHPポーション3種類とMPポーションがそれぞれ3個ずつ、毒消しも3個、ウサギ肉ステーキ5個、クッキー3袋、ハーブティー3個、果実水3個……量がおかしい。何してんだ姉は。それにしてもHPポーション3種類も有ったんだ……知らなかったぞ。1種類だけかと思ってたわ。
これはお礼の為にも早くお米とか買ってこよう。
道具屋でささっとお米10個と味噌と醤油1個ずつ購入してきた。お米はさておき味噌と醤油はわりと良いお値段だった、量は多そうだけど。
家に戻り部屋で取得可能スキル一覧を眺め幾つか取得したところで再び姉から連絡が来た。次はどうしたのだろうと思いつつ貰ったクッキーを食べながらメールを開く。……なんだこのクッキー、滅茶苦茶美味しい。
『装備出来たんだけどいるー..σ(๑• ω •๑)?見た目はめっちゃもふもふしてるんだけどwローブ(VIT+28、AGI+42)とマント(VIT+40)とブーツ(VIT+18、AGI+50)に籠手(VIT+15)、耐久値100、品質は上だよv(。・ω・。)v』
はぁ!?思わず内容を二度見ならぬ五度見したよね。数値がおかしい。お店で見た時、この半分くらいの数値でかなりお高い金額だった気がしたのだけど……?
おかしいけど欲しいので自分に正直に即返信!!
『ふきゃぁあああ!!!!!下さい、なにそれ素敵な装備ぃ(๑♡∀♡๑)めっちゃ性能良いからね!現段階でずば抜けてるよ!しかもVITとAGIとかありがたすぎるぅう!!Σ(//ロ// )』
ふう、これでよし。村で購入出来る装備の数段上の物が手に入る。暫く使えるぞ。
…………姉がヤバイ。まだゲームリリースして3日目なのですが……。いやね、確かに生産で作った物の方が売ってる物より性能が良いのは確かだけどさ。限度ってものはあると思うわけで。
あ、お米送り忘れたけど後で良いか。
姉からも直ぐに返信と装備品が来た。先ずは返信内容の確認っと。
『自分で作ったから良いのか悪いのか全く解らなかったよ(๑>•̀๑)幻影って言うスキルで見た目変えたからもふもふじゃなくなったけど気にしないでね!性能は風音ちゃんには見れるようにしておいたから』
幻影ってスキル名初めて聞いたぞ。名前だけで考えたら幻覚見せるとかなのかなって思ったけど、装備の見た目の変化可能って完全に生産寄りなスキルなのか。いやでもこれかなり重要なスキルじゃないかな、性能とデザインってなかなか一致出来ないし……。デザインに拘る層は一定数居るし。
深く考えるのは今は横に置いて、貰った装備の確認しよう。
《跳びウサギのローブ》跳びウサギの毛皮を使用したもふもふローブ、お尻に位置する尻尾の飾りが可愛さを引き立てる。幻影スキル使用により見た目変化。
VIT+28 AGI+42 (耐久値100/品質上)装備必要レベル10。製作者非表示
《オオタテグモのマント》オオタテグモの皮を利用しているので防御力抜群。幻影スキル使用により見た目変化。
VIT+40 (耐久値100/品質上)装備必要レベル15。製作者非表示
《もふもふブーツ》跳びウサギの毛皮とオオタテグモの皮を使用したもふもふブーツ、水にも強い。幻影スキル使用により見た目変化。
VIT+18 AGI+50(耐久値100/品質上)装備必要レベル15。製作者非表示
《オオタテグモの籠手》オオタテグモの皮を使用した小手、軽くて丈夫。幻影スキル使用により見た目変化。
VIT+15(耐久値100/品質最高)装備必要レベル15。製作者非表示
良く見たら小手だけ最高品質じゃないか、全部上って言ってたのに!ありがたいから全くもって構わないけどね!それにしても見た目が和ゴスで非常に可愛らしい、赤地に曼珠沙華で丈が短くフリルとレースが沢山だよ。ブーツと籠手が黒なのも非常に良い。マントはどう見てもショールみたいな感じになっているので緩く巻けそうだ。
問題が有るとすれば今はソロではないので装備をしてしまうと周囲にバレる、姉は面倒臭がりだから情報の提供もしなければ掲示板も見ないので自ら情報を仕入れたりもしない。なら私が広めるべきかもと思うがまだ黙ってて良いと思う。そもそも姉から情報を聞き出さないと書き込むには情報不足だ。
約束はしていないが始まりの街まではパーティーを組んで向かうと思う、称号の効果で経験値が美味しくなるのに組まない筈がない。なので始まりの街に着いて別れたら装備することにしよう。暫くはアイテムボックスに入れておくしか出来ないけども。
等と思いながら返信とお米に味噌に醤油を送っておく。
明日は皆で始まりの街に向かうまではレベル上げだね。さーて、称号効果でどのくらいレベルが上がるのか楽しみだ。
そして今日はベッドに寝転がりログアウトをする。
因みにクリエイトエリアでのガンマさんは相変わらずもふもふはさせてくれなかった。悲しい。
現時点での風音ステータス
《名前:風音》
《種族:鬼族 女》
《レベル23》
STR/115(S)+39
DEX/103(C)+40
VIT/63(S)+10
AGI/107(B)+45
INT/83(E)+10
MND/84(D)+10
LUK/102(E)+12
《装備》
武器右:無名短刀改(STR+14 耐久値:80/100)
武器左:無名短刀改(STR+14 耐久値:82/100)
頭:装飾リボン(AGI+3 耐久値98/100)
防具上着:鳴飛ウルフの衣(STR+5 DEX+10 耐久値:91/100)
防具下衣:鳴跳ウルフのレギンス(STR+3 AGI+12 耐久値:90/100)
防具マント:鳴跳ウルフのマント(STR+3 AGI+10 耐久値:95/100)
靴:紅下駄(AGI+10 耐久値:83/100)
装飾:《星屑のピアス》
《スキル》Pt17
戦闘スキル/《双剣の心得3》《刀の心得3》《風魔法2》《水魔法》《狂化》《格闘》《抜刀3》《強斬2》《二重強斬》
生産スキル/
その他スキル/《鑑定2》《悪食2》《危険察知》《HP回復速度上昇》《魔眼/遠/左目専用》《採取》《集中力3》《魔力探知2》《魔力操作》《速度上昇3》《瞬間強化2》《隠密行動》《忍び足》《体幹3》《気配遮断》
《称号》
《急所を穿つ者》《鬼姫》
《受注クエスト》
なし
《解放ポータル》
隠霊の村




