第五話:思いがけない出会い
第五話:思いがけない出会い
「うわぁ」
思わず感嘆の声をもらした。
所狭しと本が並んでいる。あの隠し部屋は本棚が縦に伸びて建物みたいだが、ここはまるで学校の図書室の様だ……まぁ図書室なんだけど。
アリスに学校を案内してもらって、初めに連れてこられた場所が此処。久しぶりに見た図書室だが、前に見た学校の図書室より大きい。いや、かなり大きい。裕に5倍はある……それ以上かもしれない。
俺が図書室の大きさで驚いている姿を見たアリスは、クスッと笑って説明してくれた。
「ここは世界で3番目に大きいと言われている図書室です。ここでは魔法についての専門書。他にもモンスター図鑑に魔法具辞典、それにおいしい料理で彼氏のハートをゲットせよ!って本や必ず成功するダイエット!なんて本まで様々な本がそろっているんですよ。ここまで集めるのにどれだけ苦労したことか……」
拳を握り、高々と上げて涙するアリス。
……なんか苦労してんだな。って後半の本って……ここは聞き流しておこう。うん、そうしよう。知らぬが仏って言うしな。
「にしてもすごいな。ここならこの世界について少しは分かるかもな……うん。読めんぞ。翻訳できても文字は理解できないんだな」
適当に本を手に取りめくってみるが、よくわからん文字が羅列しているぞ。頭が痛くなりそうだ。
「あれ? そんなことないですよ。もっと文字を意識してみてください」
言われた通りに一つ一つの文字を意識してみる。すると、今まで謎の記号だった文字が頭の中で日本語として理解できるようになった。
「な、なんじゃこりゃあ」
思わず本を落としてしまう。だが、もう一度拾って読んでみるとこの本は英雄が活躍する小説であることが分かった。見える文字は謎の記号なんだが、頭でその文字を翻訳してるみたいだ。
う〜ん。不思議な感覚がするが、確かに便利である。偉い外国人なんかは通訳の人が就いているから楽に他の外国人と話ができる。しかし書籍などの場合、翻訳家がその書籍をその国の言葉に直す必要があるのだ。
「魔法ってホント便利だな」
思わず呟いてしまう俺であった。
そのあともアリスに案内されて、色々分かったことがある。
まず、部屋が無駄に大きい事。今まで、学校で見てきた部屋の2,3倍はある。それに、なぜかよくわからん部屋も大量にあった。たとえば拷問部屋に牢屋、さらには美容室や散髪室などと『学校かんけーねー!』って叫びたくなる。ほかにも……etc。しかも、まだ発見されてない未知の部屋が沢山あるらしい。こんな学校造ったやつが正気の沙汰とは思えん。
その頃にはすっかり暗くなり、夜になっていた。
「あれ?」
困ったことになった。
アリスが居ねーーーーーーーーー!!!
ついさっきまで俺の前にいたアリスは、俺が目を離している隙に何処かへ行ってしまったみたいだ。
……うん。これは俺が迷子ってことになるじゃん!! こんなよく分からん学校で迷子とか……笑えねぇ。
「まぁ適当にぶらついてればアリスにも会えるか」
そう結論づけて前へと進む。
「ん?」
歩き初めて2分ぐらいした時だった。薄暗い廊下の先に何かが動いている。俺はその何かに好奇心を刺激され近づくことにした。足音をたてないように忍び足で何かに接近していった。
最初は、ぼやけていたその何かはよく見ると人の形をしていた。
「アリスかな?」
そう呟いた声は狭い廊下に思ったより響き、自分の存在をその人影に気づかせてしまった。
そして、自分から逃げるように走っていった。
「ちょっとまって!」
慌てて追いかける。ここで逃げるという事は、その人影がアリス出ないことは明らかだ。
人影は目の前の角を右に曲がった。その人影についていく。だが、慌てて曲がったので足を挫き、そのまま派手に転んだ。
しかし、藤夜が転んだことは幸いとなった。
「いつつ……」
顔を上げると、自分の上を通り過ぎる影があった。慌てて振り返ると、そこにはまだ幼い少女がナイフを持ってこちらに近づいてくるのが見えた。
あのまま転んでいなかったらナイフで急所をグサリ、と殺されていた。その事実に、藤夜は戦慄を覚えた。背中から嫌な汗が噴き出してくる。
恐怖で竦み上がった体を叱咤し走ろうとする。このままでは殺されるのは目に見えている。
しかし、走ろうと立ち上がって前を見た瞬間、藤夜は絶望した。目の前が行き止まりだったからだ。
「くっ!」
振り返り少女を見つめる。後ろは行き止まり、前はナイフを持った少女。しかも、その動きを見ると素人ではないことがわかる。
絶望的だった。いきなり訳も分からない所で殺されるのか。藤夜は自分の運の無さに呆れさえ出てきた。
「もう……だめだ」
死ぬ覚悟を決める。しかし、後ろの壁の上にある小窓から光が差し込んだ。思わず上を見る。
そこには金色に輝く月が見えた。だが、月の光が射そうと状況は変わらない。
諦めて少女を見る。そして、月明かりに照らされた少女を見て絶句した。向こうも同じ様にこちらを見て驚いている。
二人は同時に叫んだ。
「美琴!?」
「お兄ちゃん!?」
そこには、数年前他界した妹が立っていた。
どうも。『激闘魂』です。
いや〜。嬉しいですね。初めて感想を貰いましたよ。
自分の中では感想なんて空想上の存在だと思ってたのに(おい
応援してくれる読者様の為に書こう! と俄然やる気に燃える『激闘魂』でした。
これからも『大魔導師になろう!?』をよろしくお願いします。
ではでは。ノシ