第二話:ここに来た訳
第二話:ここに来た訳
確かにそこまでは覚えている。じゃあここはいったい……。
とにかく今は、自分の状況を確認することを最優先にしよう、と藤夜は考えた。
まずこの状況から3つの説が考えられる。
1.これは夢である。
2.死後の世界。
3.異世界……。
ってどう考えても『異世界』じゃないだろ! うむむ……、少し混乱してたみたいだ。とにかく落ち着かなければこの先どうなるかわからんからな。
……あの状況から察するにここは死後の世界なんだろうか。ということは俺は死んだってことだな。
いや、やっぱ死にたくなかったな。夢であってほしい。
などど思考にふけっていると、男の人が俺の頭を掴んできた。
「○△?+@%」
何かブツブツ呟いた後、俺の頭を思いっきり掴んでくるので抵抗する。
「痛い、痛いって」
「おっと、すまんすまん」
そう訴えると、男の人はさっと手をどけてくれた。……あれ?
「私の言葉がわかるかね?」
「はい。……すみません。あなたたちは何なんですか? ここは何処なんですか? そもそも俺は何でここにいるですか」
「そういっぺんに質問するな。まぁまて、順々に答えてやるから」
一転して親しげな顔をすると、こちらに手を差し伸べてくる。握手……ということだろうか。
よくわからないが、とにかく手を握ってみる。
「ようこそ。魔法の国『ホド』へ」
「は? 今なんと?」
「ふむ、混乱するのも無理はないだろう。しかし、真剣に聞いてほしい」
神妙な面持ちになって話し出す。
「ここは、貴方の世界とは違う。そう、異世界と言ったほうがいいのかな」
「へ?」
何だそれは。異世界? ハッ、ばかばかしい。マンガじゃあるまいし。なるほど、こりゃ夢か。そうかそうか。普通に夢だ。そうに違いない。
「ちなみに夢じゃないぞ」
お〜お〜。いっちょまえに言っちゃって。そんな口きいていいのか〜。夢から覚めたらお前らは消えるんだぞ〜。
「ばかばかしい。これが夢じゃなきゃなんだっていうんだ」
そう言って頬をつねる。あ〜イタイイタイ……あれ? おかしいな? 痛いはずないのに。
「これでわかったか」
「お前ら、俺に何をした」
「お前をこの世界へ召還した」
「目的は何だ」
「申し訳ないのだが……このアリス校長が偶然ながらにも隠し部屋を見つけてな」
すると隣にいた女。アリスが申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい。つい先ほど『転移の書』というのを見つけて、興味持っちゃって使っちゃったの」
「そうですかい。でも、俺は元の世界に帰れるんでしょうね」
「……はい。……一応」
そうか帰れるのか。よかった。帰れなかったらどうしようかと思ったよ。でも……。
「一応って何ですか、一応って」
「残念なことに私ではあなたを元の場所へ戻せないの」
「……どういうことです?」
「転移って言ってもなんでもうまくできないわ。これは……異世界からランダムに自分の思った所へ飛ばすこと……」
つまり、異世界から呼び寄せれても帰ることができないと……。
「てことは……俺は、そのランダムに選ばれたということですか?」
「はい」
と残念そうな顔をした。ランダムに選ばれた……ってどんだけ運悪いんだろ俺。
「でも一応って言いましたよね」
「ええ。その隠し部屋にもう一冊時空移動の本があったのです。その名を『時空移動の書』」
「ってそのまんまじゃないですか!」
おもわずツッコむ俺。
「で、それで帰れるんですね」
「一応」
「それじゃ帰らしてください」
「今は無理です……」
今? とはどういうことだろう。いぶかしんでいると、足元を見ながらとんでもないことを言う。
「この魔法は、詠唱者。つまりあなたしか元の世界へ帰れません」
「どゆこと?」
「この魔法は自分の記憶の中の場所しか行けません」
つまりドラ〇エのル〇ラみたいなもんか。
「この転移系魔法は大変魔力を消費します。今回の私も、もう魔力がありません」
すると、今まで黙っていた男がおれの将来を絶望で染め上げることを言いのけた。
「ちなみに、この方はこの世界の魔導師の上に立つお方。魔導師の中の5本指に入るお方です」
「……え〜と。どうすればいいんだ?」
「申し訳ないのですが、大魔導師になってください!」
「……は?」
非日常から脱却した俺の人生はここから始まる。アリスのとんでもない言葉と共に。
感想などなど、よろしくお願いします。