聖剣様との邂逅
拳が迫ってくる。
体は動かない。
受付の眼帯おっさんがなんか叫んでる・・・
あっ、これ・・・走馬灯か・・・。
「いやぁぁぁぁぁ!?あぁぁ。あぁ?」
目が覚めると、俺はベッドの上にいた。
え、目が覚めると?ベッド?俺はさっきまで冒険者ギルドにいたはず・・・
「あ、気付かれました?」
一人の女性が来た。白衣っぽい服を着てる。
「あなたは・・・。」
「ここで勤めている治療師です。」
治療師?医者みたいなものか。
「えっとここはどこなんですか?」
「ここですか?クリエイム国立病院ですよ。」
びょう・・・いん・・・?びょういん・・・え、病院!?
「な、なんで病院に!?」
「あなた、冒険者に殴られたこと覚えてない?はっまさか後遺症が・・・」
「それは覚えてますけど・・・。」
「そう、よかった。あなたの傷結構酷かったのよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、鼻、頭の骨が折れて、殴られたあと吹き飛んで壁にぶつかった影響か足も複雑骨折。体中傷だらけになったわ。」
「そ、そうなんですか。」
「えぇ、とても最低ランク冒険者に殴られた傷とは思えなかったわ。あの時、聖剣様が駆けつけて治癒魔法をかけていなかったらどうなっていたことか・・・」
「そ、そうなんですか・・・。」
危うく死にかけたってことか・・・
ん?
「え?最低ランク?」
「ええ、そうよ。最低ランク。毎日毎日鍛えもせず酒だけ飲んでるのに、どこであんな力手に入れたのかしら・・・。」
最低ランク。つまりあの中で一番弱い奴ってこと?え、マジで?
つまり俺はそいつに、一発なぐられただけで、死にかけたってこと!?
「えぇ・・・。」
これが事実とするなら・・・。
お、俺YOEEEEE!!マジで弱いぞ俺!?冒険者になろうなんておこがましい位に弱い!!
いや待て、もしかしたらあいつが実力を隠した強者なのかもしれない・・・。
現実に叩きのめされてうなだれているとき、突然扉が音を立てる。うるさい。俺は今ショックを受けてるんだ・・・
「入ってもよろしいだろうか。」
「はい、どう・・・ぞ・・せ、聖剣様!?」
・・・聖剣様・・・助けてくれた人だっけ?
「私は冒険者のレミと言います。最初に応急手当をした者ですが・・・体は大丈夫ですか?」
「あ、はい。助けてくれてありがと・・・」
訪れた人。その姿は
整った顔。筋肉質、しかし太さは感じさせない腕。白い肌。銀色の鎧。青い瞳、金色の長髪。髪は1つでまとめている・・・。
女性だ。
俺を救った聖剣様って・・・女騎士か!!まじか!しかも美人!素晴らしい!!
しかも、
それはだめだな。恩人だし。
「だ、大丈夫なんですか?」
のぞき込んできた。やば、やばいちかいちかい。美人がのぞき込んでくると心臓に悪いぜ・・・
「だ、だだだだ。う゛んっ、大丈夫です。」
「そ、そうでしたか、それはよかったです。」
ほ、ほ、微笑むな~!!ドキドキする。美人さんの微笑みは心にタックルかけてくるからやめて!!
「こ、こちらこそ助けていただきありがとうございます!」
「いえ、同じ冒険者がやったことなので・・・。冒険者の一般人への暴力沙汰は御法度なのに・・・。本当に申し訳ないです。」
やめて謝らないで!心が痛い!ほら、治療師さんが何謝らせてんだみたいな顔してるから!!
「だ、大丈夫です!あなたが悪いわけじゃないですし!・・・それにあれは俺が煽った所もありますから。」
優しい人だなぁ、聖人のようだ。少なくとも俺からしたら。女神かな?女神にしかみえん。
「本当にすみませんでした。
・・・でも正直に言わせてもらうと、その実力で冒険者はちょっと控えた方がいいと思いますよ。」
ゴフッ。クリティカルヒット。心が抉られる!いきなり女神結構きついこと言ってきた!!
まあでもそうだよなぁ・・・。すげー思い知ったもん。死にかけたし。一発殴られただけで。
これもこの人の優しさか・・・。
「そ、そうですよね~。」
「人には向き不向きというものがありますから。その貧弱な体で無理しすぎですよ?」
・・・すっげー心抉ってくる。プライドが砕け散ってゆく・・・。
「それに、能力値とか天職とかを見たら、自分に向いていないことも分かっていたでしょうに・・・。」
「ステータスのことですか?だって見るもなにも冒険者にならないと見れないじゃないですか・・・。」
「え?」
「え?」
なんか変なこと言ったか俺?
「いや、冒険者になってカードを貰って・・・。」
「確かに冒険者カードはありますけど。能力値の閲覧には関係ないですよね?」
「え?」
「え?」
え?
な、
え、
な、なんだって!?え、いやこういう時は冒険者ギルドでステータスが分かって、そのステータスがすごくて!「すげー!なんだこいつ!」「期待の新人だー!!」ってなるもんだよね!そうだよねぇ!?
・・・そんなこと誰も言ってませんでしたね。というか聞こうとも思いませんでした。
考えてみたら、まずこの世界にもステータスがあると思い込んでいたのが、やばいよな。
結果的にはあったけど。異世界系ラノベの読み過ぎだ俺。
「辺境の村から出てきたにしたって、あまりにも酷いですね・・・」
「スンマセン・・・」
舐めすぎだ。異世界舐めすぎなんだ俺は。こういうのはもっと情報を集めてから動くべきだったんだ!門番のカールさんに教えて貰ったりすればよかった・・・。
「はぁ・・・。心配ですね・・・。とりあえず、あの惨状を見るに、あなたは冒険者はやめた方がいいです、冒険する前に死んでしまいます。あと能力値を早く見にいったほうがいいと思いますよ?天職を知れますし。」
「はい・・・。すいません、能力値ってどうやって見るんですか?」
「・・・誰にも教えて貰えなかったんですか?・・・神殿で女神に祈りを捧げると見れますよ。」
「ありがとうございます!」
俺にとっての女神はあなたですね!!助けてくれたし!親切に色々教えてくれたし!
「とりあえず、大丈夫そうでよかったです。では、私はこれで。」
「はい、ありがとうございました!!」
・・・行ってしまった。すげーきれいな人だったなぁ。親切だったし。
色々きついこと言われたけど、俺のためだし。
「はぁ、しかしこれからどうするかねぇ。」
「とりあえずもう大丈夫そうですから。退院出来ますよ?治療費は殴った冒険者の罰金分で足りましたし。」
治療師さんマジっすか?
「・・・退院します。」
早い。この世界、退院も、そこまでの判断も早い!そして治療師さん冷たい!そんな接客だと患者に嫌われるよ!?
「何か?」
「ナンデモナイッス。」
はぁ、とりあえず神殿行くか。
神殿ってどこなんですか?