愛犬”海”の物語
海の物語
名前は「かい」、漢字名も貰いました。それが「海」。
二つ名は「かいかい」 痒いのだ。
お母さんとお姉さん、お兄さん、そして、おやじの4人と1匹。
ではなく、あねさんがいた。
シベリアンハスキーの名前は「アンディ」。4人と2匹だった。
生後50日のシーズーの僕を、お母さんとおやじが手に取ってくれた。
「この子の目が、「僕を連れて帰って!」とせがむのよね。良いでしょ!」
おやじが「うん」と頷いた。それで、この家族の一員になった。
うまくいったぜ。目が語るのよ。
早速、家にはハスキーのあねさんが居て、顔合わせとなった。「今日から我が家の一員になった海君だよ」って。お母さんに抱っこされていたけれど、怖かった。
あの長―い鼻で迫ってきて、くんくん。
それから、お姉さん、お兄さん、そして「ばばさま」に紹介された。
どうして、お父さんじゃなくて“おやじ”なのかって。
それは、これからわかってくるからね。
お姉さんは優しくて、いつも撫でてくれる。
あごの下に手を添えて、頭を撫でられるとふにゃっと至福を感じる。
お兄さんは、敬礼です。なぜか身も心も平伏してしまうのです。「もう何も望みません。僕はあなたを見ているだけで幸せです。」って。
お母さんは、ご飯をくれたり水を替えてくれたり、世話をしてくれる。感謝です。
で、“おやじ”は嫌いです。僕のことなんかこれぽっちも考えてくれなくて、自分の都合で無理やり世話をしてくれます。でも遊んでくれます。
輪になったロープを咥えろと言うので、がっちと咥えると、左右上下に振り回してくれます。楽しーーい。で、血が滲むのを見て「まあ、ここまでにしてやる」とほざくのです。そんな日の夢は、ロープではなく”おやじの手”だった。
あねさんは、外にいて時々その長い脚を部屋に入れくるんだ。ひやっとする。
なんといっても、顔は怖いし、大きし、狼だもの。
たまたま僕が外にいるとき、おやじの手が緩んで、踏み石の上に降りた途端、素早く、あねさんの前足で抑え込まれたんだ。もう、ちびりもんだった。素早くお母さんが持ち上げて助けてくれた。
ばばさまは、取って付けたように「かあいちゃん」といって抱きついてくるのだけど、好きじゃない。
夏は、キャンプだよ。
皆で、蒜山と言うところに行った。
空気がきれいで、キャンプ地は芝生があって走り放題。お兄さんと追っかけっこして楽しかった。
お兄さんが取ったギンヤンマを見せてくれた。食べ物じゃないよって。
確かに匂いを嗅いでも食欲は湧かなかった。
そうそう、あねさんはすごいのだ。先日も泥棒を撃退したのだ。そりゃあの顔でそーっと近づいてきたら誰だって怖いよ。あねさんの小屋の屋根の凹みは、その時に逃げる泥棒さんが踏みつけた跡らしい。
あねさんが親父に武勇伝を聞いてもらっていた。
また、蛇退治も得意で、おやじがどういうわけかいつも感心してほめていた。なでなでしてもらっていいなあ。でも、僕には無理だけどね。僕は役立たずだって。しゅん。
3年して成獣になってから、脂漏症が発病したんだ。家族から臭い、べとべとだと言われるようになった。特にお兄さんには臭いが喘息に関わると言って、お母さんが頻繁にシャンプーするようになった。それまでは家の中にいたのだけれど、ある日、犬小屋をおやじが用意して、そこへ引っ越すことになった。
毎日が、犬小屋での生活になり、つまらない日々を過ごした。
あねさんが、毎日散歩に出かける時は、小屋の中でじっとしていた。
相変わらず、怖い。息遣いや足音が伝わってくると、身が縮む思いであった。
寒い冬には毛布を入れてくれたりして、まあまあ過ごせたけど、
背中が剥げてきちゃった。それを見て、皆はかわいそうだと言ってくれた。
2年ほどして、新居に引っ越すことになった。
最初、玄関のドアの外に小屋を置いて、住まわせてくれたけど、吠えるからと言って、ドアの中が住処になった。出入りの度に皆さんに会えてうれしい。
新居に移ってから、どうも番犬に目覚めたんだ。そして、とにかく変な様子がしたら、吠える、吠える。「吠えるな!」って言われても吠える。もう本能でどうしようもないのだ。
おやじにけられたり、お母さんに叩かれてもやまらない。夜になるとご近所から「吠えようよ!」ってお誘いがくる。それにドアの向こうを猫が「ふん、ふん・・・」と言いながら通ってゆく。
「俺様のエリアを通るな! ワンワン」ってなもんで。
また、おやじに蹴飛ばされる。度重なる刺激が、もう快感だわ。
臭いからと言って、毎週シャンプーをしてくれる。特に夏場は週2回。かまってくれてうれしい。
シャンプーもいろいろ試してみたけど、なかなか良い結果にならないそうだ。ドッグフードもいろいろ変えてみたけど、脂漏症には効かなかった。獣の油脂分が症状を悪化させるらしく、晩年はカツオ入りのキャットフードに落ちつたようだ。
そうそう、こちらにきてから、頻繁に散歩に連れ出してくれるようになった。楽しいけれど、冬の木枯らしの行軍は辛かったなあ。おかあさんが、引っ張ってゆくのだもの。嫌だと、踏ん張っても力負け。
こちらに来て、5年経った、ある雨の日、あねさんが亡くなった。
ご冥福を祈りました。
12歳ぐらいから少しづつ、足が弱ってきて、長い散歩は無くなった。
13歳の夏、急に食欲が無くなって、1週間飲まず食わずが続いたときは、「もう、ダメみたい」って言われた。でも、おやじがむりやりご飯を食べさすものだから、徐々に力が湧いてきて、復活したのだ。
バカおやじめ。
それから、15歳の春にも体調を崩したけど、持ち直した。もう老犬だよ。
17歳と7か月。やっと安らかに眠ることができた。
1か月前から、おかあさんが、沢山ご飯をくれるようになって、もう幸せ気分で過ごせた。
みんなありがとう。
庭の隅に、おやじが埋めてくれた。お母さんと、おねえさんが土をかけてくれた。




