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No.006 豹変と戦い

前回の続きです。

もし見にくかったり、こうした方が見やすいなどの意見がございましたら、どうか感想のところに、ご教授ください。



 ・・・そうして始まったジョンとの特訓では、当然重力の強さは感じるが、ユウは思ったより自分の身体が動くことに気づいた。しかし、それには訳があった。


 実のところ、召喚された時点でユウの肉体はボロボロだった。当然である。あんな危険な世界間旅行をしてきて、身体に負担がかからないわけがないのだから。


 一般的に肉体は、そのままの状態で召喚されると思われているが、実際には内側から外にかけて損傷がひどく、適切な処置を行わなければ精神と一体化してもすぐに死の危険が訪れる。

 そこで今回は、リーズによって身体を、強化魔法と回復魔法の2つによって完全に修復され、以前よりも強化された身体となっていた。


 なぜ、リーズがそのことを話さなかったかというと、単純に話しづらい内容だったからだ。そこは、察してあげて欲しい。

 


(まぁ、今は置いておこう。それよりも今は、少しでも早く動けるようになることだ。)


 

 そんなことを知る由もないユウは、少しは疑問に思いつつも、今は目の前にある課題をクリアすることに集中しており、実際それどころではなかった。

 なぜなら、開始からおよそ二時間以上も経過しているのに、その間ジョンはほとんど最初の位置から動いていないのだ。ちなみに、休憩は一切挟んでいないのに、である。



(しかし、やっぱり思ってた通り、ジョンさんは強いな。俺がこんなに必死になってるのに、余裕綽々だ。まぁ、俺が動けないことが一番大きいけど、それを抜きにしても重力がさっきの所の十倍って考えたら、すごい自然な動きだもんなぁ。

まるで、重力なんか全然感じてないみたいだ。当たり前だけど、やっぱし悔しいな...)


 

 そんなことを思いながら、ユウは少しずつ自身への憤りを溜めていった。

 それでも、二時間以上の間重力が十倍のところで動き続けているユウも、十分異常ではあるが、ジョンとの比較がユウにそのことへの考えを阻害させていた。


 しかしそんな中、溜まりすぎたそれがとうとう爆発する事態が起こった。

 

 きっかけはジョンの、ユウを気遣っての一言であった。



「ユウよ、ひとまずはこの辺りでいったん休憩に入ろう。もうかなりの時間続けているのだ、そろそろ身体に何らかの支障をきたしていてもおかしくない。リーズとも、無理をしない約束であっただろう?」

「えぇ、ですがもう少しだけ続けさせてください。」

「...ユウ、君は先ほど、私が同じことを言ったときも全く同じ言葉を返していたな。しかもそれが5回。今のも合わせると既に6回も同じことを繰り返している。さすがに君の頼みだとしても、これ以上続けることは認められない。」

「い、いや、待ってください!あと、本当にあと少しで成功しそうな気がするんです!ですから、どうか、もう少しだけお願いします!」



「...それも、今ので6回目だな。...はぁ、ユウよ、正直に言わせて貰う。

普通の者はこの重力に慣れるだけでも苦労するのに、君はたった数時間でこの重力に慣れてきており、僅かながらも私の動きに少しは反応できるような場面があった。だがそれもほんの二回のみだ。

実際今のユウでは、課題を達成するのに良くても数週間はかかる。それをこの数時間で、覆せるはずがないだろう。


ましてや、ただでさえ長時間動き続けて身体も頭も鈍ってきているそんな状態では、絶対に成功などはあり得ないな。

そのひたむきな精神は賞賛するが、自身の力を見定められず、ただがむしゃらに動き続けても意味が無い。そんな考えでは、これから先一人で旅をしたいなど他者から見ればただの笑い者だ。」



「...今何と?」

「...うむ、では今のユウにも分かりやすく言い換えよう。」



 今のジョンは、強者だからこそ分かる、自分との明確な実力差があることを知っているからこそ、自身の限界を把握できず意固地になっているユウの行動に、少しばかり怒りを感じていたのだ。だからこそ、



 「今の君の愚行は、酷く滑稽だな。」



と、そんな冷たい言葉として放たれた。



「...」



 ユウはその言葉にただ俯くだけだった。そんなユウに対しジョンは続ける。己の感情を吐露するように、



「自身の力も把握できないようでは、旅に出て少しでも強い魔物に遭遇したら、その力を測れず死ぬだけだ。そんなことも分からないのか、まったく...。

 少し頭を冷やせ、この愚か者。」



と、続けた。

 しかしジョンは内心、

 


(今のは、少々言葉に冷たさを含んでしまったか?

いやしかし、感情が先行しすぎている今のユウは、現時点でその気持ちを改めさせないと、きっと後悔することになる。それも、"死"という最悪の形で...。それだけは阻止しなければ。

たとえ本人が気にしていなくとも、無理矢理こちらに連れてきてしまったことに変わりは無い。そんな結果で、彼の人生を台無しにさせないためにも、今は耐えて貰うところなのだ。)

 


と、ユウのことを第一に考えていた。

 しかし今のユウは、そんなジョンの気持ちを察することなど出来ず、自身への憤りを募らせ、ある時点を超えて、




 "プチッ"




と、限界を超えた。



「...うっせぇよ、くそが...」

「?どうしたユウ、いきなりそんn」

「だあぁあああああああああああ!!

うっせぇって言ってんだよ!!そんなこと言われなくっても、俺が弱いことは、俺が、一番、よく、分かってんだよ!!」

「...」



「だって、しょうがねぇだろうがよ!

出来ないことは誰だってすっげぇ悔しいのに、結局出来ないままなんだよ!

だったら出来るまでやり続けるしかねぇじゃねぇか!それで身体壊しても自分で責任とってやるよ!!そんなこと怖がってたら、一生弱いまま終わっちまうからな!!

だから俺は、死に物狂いでやんだよ。それを阻むんだったら、絶対突破してやる...」



 そんなユウの豹変に、当初は戸惑っていたジョンだが、ユウが最後の言葉を言い終わる前には、既に構えの体勢になっていた。

 それだけ今のユウは、勢いだけではないほどに圧を放っていた。



「ならばその意思、私にぶつけてみろ。それでもクリアできないようなら、私の考えが正しいという証明になるからな。」

「はっ、言ってろ糞が!!ゼッテーてめぇに触れてやるよ...やり過ぎてぶん殴っかもしんないけど、それは俺知んねぇからな、文句言うなよ。」

「ぬかせ、そういうのはやってから言うものだ。」

「(ムカッ!)あ~、そうかい。

じゃあ、遠慮無く行くぞ、ごら゛!!」



 そう言って両者は向かい合い、ユウがジョンに向けて構えたその瞬間、



 ユウの姿が消えた。



 いや、正確に言うと見えないほどの早さで動いたのだ。

 だがジョンは、その姿を確実に捉えていた。



「ふん、動きを捉えられるようでは私に追いつくことは出来ないぞ。」


 

 そう言ってジョンは、ユウからの攻撃を避けるべく、先ほどと同じくそれほど移動しないで躱していた。が、それは今のユウに対しそうそう長く持つような行動ではなかった。


 

「くそっ、舐めてんじゃねーーよ!!そんなんで避け続けられると思ってんのか、ア゛ア゛?」

「そんなに言うなら、一発くらい当てて見せろ。それが出来ないようなら、私としてはこれで十分だ。」

「チッ、腹立つな...。

いいさ、お望み通りに最大威力でぶっ放してやるよ!おら、受けてみろ!!」



 そう言ってユウは、ジョンに対して全力の攻撃を繰り出した。もう既にユウの中で、触れればいいだけという考えは無くなっていた。

 そんなユウから次の攻撃が来る瞬間、ジョンは、



(む、この攻撃は少々危険だな。少しばかり余裕を持って避けるか)



と、そんなことを考えていたが、それは遅すぎた。

 ジョンの中には強者故に、先ほど自分との差がありすぎるユウに対して、"油断"と言うものが生まれていたのだ。それは、ジョンの判断を鈍らせるものだった。



「っらぁ!!」

「くっ!」

 



"バァコォオオオオオオオオオオオオオ!!!"




 そんな爆音を轟かせて、ユウによる一撃はジョンにヒットしないまでも、周囲の地面を陥没させ、小規模のクレーターを作り出した。地球にいた頃のユウでは、到底出来ないような破壊である。それどころか、地球上の人間ではとてもではないができる者は存在しないだろう。


 そんな破壊の波はジョンにも届き、爆風によってジョンの身体を吹き飛ばした。しかし、さすがジョン、吹き飛ばされながらも空中で体勢を立て直し、危なげなく着地した。

 そして同時に、そんなユウに対し心底感心してもいた。なので、



「ふむ、今のは見事だった。 

私の身体に触れることは出来なかったが、それを上回るほどの肉体強化だ。それならば、最初の課題はクリアしたと言ってもいいだろう。

おいユウよ、一度落ち着け。今日はもう十分だろう。このくらいにして切り上げるぞ。」



と、満足した様子でジョンはユウに提案した。だが、



「あ゛?まだ終わっちゃいねぇだろうが。てめぇをぶっ飛ばすまで続けてやるよ!!」



と、未だに感情が高ぶった状態が抜けないユウは、そんなことを言い出して、またジョンに向かって突撃した。今度は先ほどのように、すべて同じ早さで動くのでは無く、スピードの緩急を使って接近するようだ。


 そんなユウの行動の変化を感じ取ったジョンは、



「ふん、先ほどのように単なるがむしゃらな行動では無く、少しは頭を使うようになったか。

いいだろう、その意思が途切れるまでとことん付き合ってやる。」



と、そんなことを言っていた。

 ジョン自身は、今のユウが通常の状態では無いことは知っていたが、それでも、僅かな成長の予感を感じ、付き合うことにしたのである。

 それにジョンも、自身の気持ちが高ぶっていることに無意識的に反応し、今の状態を楽しんでもいた。



「うっしゃあ、んじゃ、覚悟しろやぁ!!」

「...来い、ユウ!」



 そうしてユウとジョンの戦い?は、地面にいくつものクレータを作りながら、ユウの豹変が解けるまで続いた。


 

 そして話は、前話の冒頭へと戻る。



なんか行ったり来たりしてますが、ご了承ください(汗)

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