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No.005 重力と特訓


 「......なに、これ...」



 そんなリーズの言葉から始まり、盛大に陥没した地面があちこちに出来上がっていた。疲れ果てたユウとそれほどでも無いジョンは、愕然としているリーズに向け、

 


「ハァ、ハァ、俺として、は、何が、何だか、ハァ、ハァ...」

「う、うむ。私はなんとなく予想は付くが、まさかここまでとは...」



 と言った。



 何が起こったかを知るためには、今から数時間前に遡る必要がある。



 数時間前、リーズ達に連れられてユウは、先ほどの部屋を出て石畳で舗装された通路を歩いていた。

 


「ねぇリーズ、特訓するならさっきの部屋でもいいんじゃない?特に何も無かったし、それなりの広さはあったよね。」

「うん、別にあそこでもいいんだけど、ユウとしては早く旅に出たいでしょ?」

「まぁ、それに越したことはないけど、それと場所を変えることに何の関係があるの?」


「えっとそれはね、さっきも言ったように、これから行く場所の方がユウが早く強くなれるかなって考えたからなんだ。それと、特訓するなら空間自体の耐久度が高い方がいいから、さっきの場所よりは、これから行く場所の方が向いてるんだよ。」

「ふ~ん、そっか。じゃあ、その方がいいね。

 ジョンさんとしても、今向かっているところの方が肉体の強化に適しているんですか?」

 


 そうして、リーズと話しながらユウは、未だに何も話さないジョンに対し疑問を投げかけた。



「ん?...あぁ、確かにそこならユウの特訓、特に肉体の強化には向いているだろう。」

「へ~、そうなんですか。それは、かなりありがたいですね。俺としても、魔法に対してもちろん興味はありますが、危険な所を旅して行くには、それに対応した身体を作る必要がありますから。

 きっと、大変だとは思いますが、頑張って鍛えようと思います。」

「う、うむ。おそらく想像以上にきついとは思うが、私も可能な限り協力はしよう」

「はい、よろしくお願いします。」



 そんな問答をしながらも通路をしばらく進んでいくと、リーズが、



 「さぁ、もうそろそろ着くよ。」



と言ったのを聞きユウは、これからの特訓に対して気を引き締めるのだった。



 通路を抜けるとそこには、だだっ広い空間が広がっていた。

 足下は壁際の方から段々畑のようになっており、段差の部分は石造りだが、それ以外のすべての地面はむき出しのままである。さらに、所々岩石が丸出しで飛び出ており、大きいものでは2~3メートルほどにもなるような、岩まである。

 そして、極めつけは、



「さぁ着いたよ、ユウ!ここが、これからユウの特訓場所になるところだよ。」

「...」

「ん?どうしたのユウ?」

「いや...、なんとなく、というよりも、確実に身体が重くなった感じがするんだけど...」

「あぁ、言ってなかったけどこの空間、というかこの場所はわたしが作った重力魔法の"魔具"で、実際の重力より相当強くなってるから、かなり身体が重く感じるはずだよ。」

「...この際その"魔具"とか言うものに関しては気にしないでおく。

 ていうか、もう立ってることも辛いから座ってるけど(というか既につぶれているが)、それすら辛いってどれだけ重くしてるの...」

「ん~、ユウに説明するなら、大体さっきまでの重力の十倍くらいかな?」



と、リーズのとんでもない方法によって、そんな効果が付け加えられており、



(なんか、○ラゴンボールの○王星みたいな感じだな...)


 

と、ユウに某アニメの某惑星を彷彿とさせるような空間となっていた。

 さらにリーズは、



「ちなみに、時魔法の力が少し加わってるから、この中の時間の流れはだいぶゆっくりになってるよ。どう、すごいでしょ?かなり魔力消費しちゃったけど、今回に関しては作った甲斐があったよ。こうしてユウのためになったんだから。」


 

と話した。

 それに対しユウの反応は、



(...違うな。これ、○神と時の部屋だ......ていうか、もう正直限界なんだけど...)



と、そんなことを思いながら、重力の強さに満身創痍だった。



「さてユウよ、この場所来ておいてなんだが、もし限界なのであれば、もう少し時間をおいてからでも構わないが、どうする。」


 

 そんなユウの状態を見てジョンは、今すぐ始めなくても良いことをユウに伝えた。当然、へばっていたユウはいったん様子見をすると思われたが、



「...いえ、このまま始めさせてください。」



と、ジョンに自身のやる気を示した。



「...良いのか?正直に言って今の君は、この空間にいるだけでも相当疲れが窺えるが...」

「えぇ、確かにこんなことは初めてだったの、はっきり言って辛いです。」

「ならば、」

「ですが、特訓が大変なことは既に受け入れていたことです。そして、それを受け入れた上でこの場所に来たのは、俺自身です。ですから、このまま始めさせてください。」

「しかし...」

「それに先ほども言いましたが、この世界を旅する上で強靱な肉体は、いずれ必要になっていくはずです。それには相応の鍛錬が重要になってきますから、今回のようなことは、いずれ通らなければなりません。ですので俺は、この場での特訓に早く耐えられるようになりたいのです。」



 そう言ってユウは、凄まじい重力に抗いながらも、なんとか立ち上がって見せた。

 それを見たジョンは、



「...よし。 

ならば私も、ユウが早く旅へと出発出来るように、精一杯役目を務めよう。」


 

と、ユウのやる気にあてられ、自身も決意を固めた。


 

「だが、やるからにはあまり手加減をし過ぎると、かえって成長が遅れるからな。だから、容赦は一切しないから、覚悟しろ。良いな?」

「はい、よろしくお願いします!」



 こうして、ジョンによる(地獄の)特訓が始まった......となる前に、



「そういえば、俺がジョンさんと特訓している間はリーズは何をやってるの?

さすがに、ずっとこの場所で俺たちの特訓してるところ見てるわけじゃないでしょ?」

 


と、ユウが言った。それに対し、しばらく放置されていたリーズは、



「...ふぇ?」



と、突然の呼びかけにお決まりの反応(かわいい)を返した。



「あ、あぁ、そうだね。

 別に見ていてもいいけど、わたしはわたしでやらなきゃならないことがあるから、いったんお別れかな。といっても、別の所にあるわたしの自室で作業するだけだから、ユウが魔法を習いたいときはいつでも来ていいよ。

 ここに来る間にあった通路脇の扉で、この場所から一番近いやつがわたしの自室だから。...ノ、ノックはちゃんとしてね!」


「?さすがにノックぐらいは言われなくてもするつもりだったけど。

 まぁ、とりあえずは了解。けど、しばらくはジョンさんの元で肉体の強化をある程度仕上げてから、魔法については教えて貰おうかな?」

「ん、分かった。それならわたしはその間自室で作業してるから、食事の時になったらわたしの部屋の向かいにある部屋に集合ね。」 

「了解。」「うむ。」

「うん、それじゃ各自行動開始!」



 そういって、ユウ達はそれぞれ次の行動を開始しようとした、が不意にリーズが、


 

「それよりユウ、特訓てその格好のままやるの?」


 

と、ユウに問いかけた。



「ん?もしかしてまずい?」

「いや、特訓なら着替えてからの方がいいんじゃない?だってほら、ユウの着てる服って、ユウが唯一元の世界から持ってきたものでしょ。」

「ん~、別にこのままでも動きやすいし、いいかなと思ってたなぁ。

 けど確かに、部屋着として数年以上の付き合いだからかなり思い入れはあるし、着替えられるならそれでもいいかな。」


「ん、それじゃ今から何か動きやすそうな服作るから、ちょっと待っててね。」

「えっ、服を作るって...あぁそうか、生成魔法で作るのか。

 けどそれって、長時間持つの?魔法って、現象を起こすことだから、生成者が近くにいないと形を保てないんじゃ...」

「おぉ~、この短い間でそこまで分かるようになったんだ!すごいなぁ~。

 けど大丈夫。こういった物とか形がはっきりしてるやつは、周囲を魔力で覆えば形状を維持できるんだ。

 ただ、やるにはそれなりの魔力を練らなきゃいけないから、普通は非効率だね。今回はユウに合った服がないから、こうした方法をとったの。」

「そっか。ありがとう、リーズ。」

 


 そうしてユウは、生成された服を受け取り、今まで着ていた服(中学時代の部活Tシャツとトレパン)をリーズに手渡した。



「それじゃ、わたしは部屋に戻るけど、あんまり無茶はしないでね、ユウ。」

「もちろん...って言った方がいいと思うけど、そういう考えじゃ強くなれないからね。それ相応の無茶はするつもりだよ。」

「...まぁ、知ってたけどね。

 だけど、身体壊してまでやることは、かえってユウの成長を遅らせることにもなるからね。十分注意して取り組むこと、いい?」



「...了解。まぁ、あまり期待しないでね。」

「...はぁ~、とりあえず特訓頑張ってね。

 じゃあジョン、後はよろしくね。本人たっての希望だから、容赦は無用みたいだよ。」

「もちろん、そのつもりだ。リーズも、何の作業をするか知らないが、無理はするなよ。」

「うん、それじゃまた後でね~。」


 

 そう言ってリーズは、ここまで来た道を戻っていき、自身の部屋のあるところへと向かった。



「...さて、ではさっそく始めようか。」

「はい、改めてよろしくお願いします。」

「うむ。では最初の特訓だが、まずはこの重力になれて貰うために少し走り込みをするか。」

「そうですね。なにより、この空間に慣れなきゃいけませんからね。

 ではしばらくの間、壁に沿って走っていた方がいいですか?」

「いや、それではただの自主練習になってしまう。それよりも、もっと実践の動きに近い方法で鍛えよう。」



「?具体的に言うと?」

「そうだな......っよし、

 では、最初の課題は、"動いている私に僅かでも触れること"だな。」


 

 そうジョンが話すとユウは、



 (鬼ごっこみたいな物か...)



と考えていた。しかし、



「それと、時々私から簡単な魔法攻撃をするから、それらを耐えるなり避けるなりするように。」



と言うジョンからの言葉により、



(...序盤からハードモード...)



と、だいぶ心が挫けそうになるユウであった。


というわけで、序盤のリーズの言葉は次回にて判明します。

では。

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