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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ウィース編~上~
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No.051 分からない感情と主観

※『No.036 ウィースの街と国認魔導士』における内容の一部を訂正しました。物語の進行上そこまで大きい変更ではありませんが、確認していただければ有り難いです。

 それでは今月分、投稿します。


「っ!?...あ、あの、ユウ君?その...」

「......っ!いやっ、これは、その!」



 今しがたユウが放った言葉に困惑するサーシャ。そしてそんな彼女の様子を見て、漸く自分が今口にした言葉の荒々しさを自覚し、どうやって取り繕えば良いか必死に考えているユウ。

 互いが互いに混乱状態にあるため、どちらもまともな単語が言えずに『あの』や『この』など、間をつなぐような言葉しか発せないでいた。


 しかしそんな状態もそれほど長く続くことはなく、最初に落ち着きを取り戻したユウが再び話しを再開させた。と言うのも、先ほどユウが放ってしまった言葉に若干ではあるが、現在進行形で怯えているサーシャにとっては、自身から話を切り出すことが困難だったからに過ぎないのだが...。



「...え、えっと。取りあえず、さっきの発言というか暴言というか......うん、ごめん...。ちょっと色々考えすぎてて、っていうか、感情が不安定だったというか...とにかく、そんな状態だったからさ。ちょっと言葉が荒っぽくなっただけで、ホント悪気があったわけじゃ無いんだ...」

「...いえ、私の方こそユウ君の気持ちを理解した気になって、それ以上考えようとしていませんでしたし...。それにユウ君からすれば、そこまで親しくもない私からこんな風に迫られても、ただ気味が悪いだけですもんね」



 ユウが先ほどの発言を取り繕うかのように言葉を羅列させていくが、それは言い訳というよりも自分の主張を押しつけて相手に無理矢理理解させようとする、少々傲慢な発言にも聞こえる。だがそれは、いつもの取り繕った雰囲気をしているユウならまだしも、焦燥や混乱によって外面が剥がれかかっている今のユウからすれば当然のことで、本来のユウが見え隠れしている現れなのかもしれない。

 そんなユウからの言葉を受けたサーシャであるが......まぁ当然というか必然というか、先ほどのユウが使った乱暴な口調。アレを向けられては、女性でありかつユウの性格を熟知しているほど親密ではないサーシャからすれば、そう易々と元の雰囲気で会話が出来るはずがない。実際彼女の反応を見ると、まるで見知らぬ人物と接しているかのように余所余所しいものであり、それが至極当然のものであることは明らかであった。


 目の前で明らかに先ほどとは違う反応...もとい、真逆な反応をしているサーシャを見てユウは "失敗した..." と考えていた。

 当初の予定では、自分の考えや周囲の状況、それらを上手く説明しサーシャの理解を得ると共に、今後とも知人以上友達未満くらいの関係を築きたいと思っていたユウだったが、今しがた見せてしまった自身の素の感情、それが彼女にどんな印象を抱かせてしまったのかを会話の中で察していた。それもそのはず、なぜならユウとサーシャは互いのことを、ほんの数日前初めて知ったばかりなのだ。

 初対面の相手...まぁ仮に、仕草や言動からその人の本来の性格を見分けられる方法を持っている人間でも、その人がどんなときに怒るのか、泣くのか、笑うのか......そんな当たり前であり、だがそれでも理解するのが難しい感情の機微など、おおよその予測だとしても早々出来るものではない。それはこの二人にも当てはまり、事実その分からない部分が起因となって、今この状況が作り出されているのだ。



「...別に気味が悪いとか、そんなことは思っていないよ。でもさ、サーシャはあまり自分の...というか自分たちの事情を話そうとしないし、それを抜きにしても俺に拘る理由が思いつかない今、サーシャの頼みは俺にとって受け入れがたいものなんだ...」

「アハハハ、事情...ですか......まぁ、その点は話さない私が悪いですもんね。......分かりました」



 ユウが先ほどのサーシャの発言に、どうにか落ち着きつつある頭で考えた自分なりの答えを告げると、サーシャはその言葉に何か思うところがあるのか、少しばかり自虐とも取れる笑みを見せると、最後に一言了承の言葉を放った。しかし、その言葉はこの会話の流れからして若干異質なものに感じられる。

 その発言の解釈、それはユウの告げた内容を自分なりにしっかりと受け止められた事実を伝えるもの。もしくは...



「今まで散々付きまとってしまい、申し訳ありませんでした。今後は貴方にご迷惑をおかけしないことを、今この場で誓います。......では、ありがとうございました!」



と言ってサーシャが取った行動が、もう一つの解釈である。それはつまり、今までのユウの言葉から、これ以上話を続けても自分の目的は達成されないこと、その事実を自分に言い聞かせ悟らせる意味であった。

 サーシャはその言葉を告げると同時に、今まで向いていた方向とは逆に身体を向け、そのまま走り去ってしまった。


 こうした場面だと、走って行ってしまう女性を男性が呼び止めて、男性の方が女性の求めている言葉を叫び、その後和解した男女が元通りになる。そんな展開が予想できそうなものだが...



「...(やっぱり、本心を隠しながら話をするのは難しいなぁ......たぶんこういうときって、サーシャを追いかけてさっきの言葉について謝罪するか、もしくは気の利いたセリフの一つでも言えば良いんだろうけど...)出来っこないよなぁ...」



といった具合に、去って行くサーシャの後ろ姿を見つめながら、この後自分がすべき行動の選択肢を挙げたはいいが、ユウ自身の内心がその選択肢を選ぶことに対し懐疑的である状態が、予測をぶち破っていたのだ。

 というのもユウは、今現在のように女性が泣きながら走り去っていくような場面など、フィクションの中でしか知らなかった。さらに言うと、そのフィクションにおける展開へのキーポイントは 『男性が女性に対して思い残したことがある』 であり、加えて『その思い残した事柄が女性の望んだものである』 というのが条件であったりする。


 まぁ全ての男女間におけるいざこざが、男性側が折れて女性の機嫌を取るという事に落ち着くわけではないし、そんな都合良く事が運ぶはずもない。

 同様に、男性側からの心ときめく発言に女性側が感銘を受け男性の下へと戻っていく。これもそんな簡単に実現するはずもない。何故なら、女性側が殆ど男性側の心から離れて行ってしまっている、かつ女性が去って行くのにほんの僅かな時間しかない状況。その間にどれだけの人間が相手の女性の心に届くような言葉を投げかけることが出来るだろうか。



 全く以て、無理難題にも程がある。



 若干言い過ぎかもしれないが、それほどに難しい所業であると言えるはずだ。だからこそ、そうした場面に遭遇した男女、同性同士、上下関係がはっきりした者同士など(...まぁ関係性はどれでも良いのだが...)、彼らは時間をおいて関係の修復・改善をしようと試みようとする。だが、



(俺の中の考え方は変わってないし、サーシャだってそれを感じ取ってくれたから離れていったわけで......うん、これ以上関わってもお互いに良いことないし、いいか!)



と、かの本人であるユウの内心はそんな状態であったが故、世間一般で言うところの"和解"という事態に発展することが、現時点において考えられるはずもなかった。

 ユウの言っていることは少々自分本位であるし、他者の気持ちを酌まないという、一般的には共感できない考え方だと思う。事実ユウのこうした考え方は日本にいたときも、新たな関係性を築こうとした際しっかりと障害になっており、同時にユウの"本心を見せたがらない性格"と相まって、近づくことも近づかれることも避けてきたのだ。

 だから、というほどのことでもないかもしれないが、ユウはそんな気持ちを当然他人...ここで言うところのサーシャにあたるが、


『彼女も同じように思っているのではないか』


 もしくは


『あれほど拒絶してしまった自分のことなど、もうまともに話すことさえ避けたいのではないか』


 そう感じ取っていった。




――――――――――――




 『人の感情』...それを完全に理解できるのは、やはり本人のみである。中には人間関係に慣れたせいで、他人の心情を予測可能な人間がいるかもしれない。そんな人達のことを表す言葉として、"客観的視点"というものがある。そしてその対となる言葉が"主観的視点"だ。そして、この二つの言葉における最大の違いと言えば、思考の基準である。


 主観的とは二つの意味があり、"古来から"や"人間の心理的性質から"など、既に定義づけられている・明らかにされている物事を基準にすることと、自分という一個人に頼った考え・感情を基準にすると言う意味がある。今回の場合、後者を比較に挙げていこう。

 では逆に客観的に関してだが、こちらも同様に二つの意味がある。それが、前述に挙げた主観という考え方に縛られないというものと、特定の立場にとらわれない思考をしようとする意味である。


 この二つを突然挙げたのには理由があり、思考を繰り広げることにおいて、やはり基準・起点となる考え方というものの存在がこの状況下だと重要視されるべきだからだ。


 先ほども言ったように、人の感情とは完全に理解できる存在として本人くらいしかあり得ない。というのも、物事に対する考察において必要なものとは、基準となる知識・経験であると言える。しかし人の感情などは、人と対話する・人を観察するといった経験を踏まえても、中々に理解が難しいところなのだ。それこそ今回のユウとサーシャのように、互いのことをよく知らない関係性ならば、互いの心情など自分の知らない言語を読み解くのと等しいほどに困難な技能と言えるものだった。


 そんな状況で登場するのが、主観的視点と客観的視点の二つである。


 今回ユウはサーシャの感情を、"自分ならどう感じるだろうか"という主観的視点による考察の下、判断を下していた。だがそれは本来、客観的視点で以て判断すれば良かったかもしれない。そうすれば、一般論の思考の下ユウとサーシャ、互いが互いにわだかまりや不満を抱いて別れることはなかったかもしれない。

 しかし今回はそんな単純に解決できることではなかったのだ。その原因となっているのが、ユウの経験不足、互いに曲げられない思いの衝突、ユウの価値基準が挙げられる。


 まず始めにユウの経験不足だが、これは別にしもの方の話題とかではなく、ユウの人生における女性との接触に関係している(言っておくが、断じてエロではない)。

 ユウは自他共に認める純情系男子チェリーであり、異性との関わりが世間一般のそれより些か下回っているのだ。まぁだからといって全く耐性がないわけでは無く、日常生活に支障を起こさないレベルには達している。だがそれを加味した上で、異性という存在に関する経験が少なかった。

 経験が少ないだけで、ここまで大それた理由の一つに挙げられることへ疑問を抱かれるかもしれないが、それが『ユウ・クオリティ』である。結果、異性が持つ感情の機微に疎いことに加え、それを補うために自身の感情、つまり主観に頼った思考に陥ってしまったのが原因と言える。


 次に互いに曲げられない思いの衝突だが、これはユウも、そしてサーシャにも当てはまることである。曲げられない思いとはつまり、本人の信念と言えるものだ。信念とは覆されることを嫌い、変えられることに恐れを抱く存在で、それらを避けるため固執し、執着し、変えられないように主張する。よってそこには、特定の立場にとらわれない客観的視点が介入する余裕はなく、結果無意識のうちに主観的視点のみで判断をしてしまいがちだ。

 ユウが持つ、サーシャへの手助けにおける責任発生への危惧、周囲の状況を加味した上で自分がやるべき事なのかどうかの結論、ユウが感じていたサーシャに対する心の傾きという三つの考え方。サーシャの持つ、妹をどうにか助け出したいという必死さ、それを果たすためのユウへの異常な固執、事情を全ては話せないという我が儘の三つの感情。二人が持つ考え・感情は、それが他人から同意を得られないものだったとしても、それぞれが持つ曲げられない、譲れない思いであるからして、早々簡単に割り切れるものではなかった。


 最後にユウの価値基準だが、これは単純明快であり、ユウの考え方の基準が"主観"を重要視しているからだ。とは言っても通常のユウの外面は、人の感情の機微を注視し、場の雰囲気に波風を立てないよう振る舞うことである。しかしそれは、対象が多数であった場合のみだ。

 今回のように、こと個人間、こと自分の生活・立場に関わることとなると、物事の優先事項における一番はユウ本人、つまり自分自身となる。

 自分本位。自分勝手。他者を蔑ろにする傲慢なる者。そんな言葉が聞こえてきそうな信念だが、そもそもの話自分と他者は立場が違わない限り、その存在価値とは平等であるべきである。ここで立場の違いを範囲外にしたのは、その人間が持つ社会的...とまでは言い過ぎても、その場における重要性などが上ならば、他者であろうが自身であろうが平等とは言い難いからだ。


 さて、立場を抜きに考えると自身と他者は平等と言ったが、そんなのは当たり前だと反論を受けるだろう。そう、まさに至極当たり前、当然のことなのだ。

 平等とは等しく分け与えられること、大小があってはいけないこと。ならば、気遣いや思いやりだって平等にあるべきだろう。しかし、そんな形のない感情をどうやって平等に扱えば良いのかというと、少々難しいところだ。が、それの対象が自分自身ならば問題は無い。なぜならば、その感情が一体どんな利益をもたらすのかを、自分を対象にすればその感情により結果的に不利益になろうが、結局は自分の許容範囲内で収まることだからだ。

 そんな感情を他者に捧げてしまったら、どんな事態をもたらしているのかを知ることが出来ず、もしかしたら予想していたものとは違うことになってしまう恐れがあるからだ。他者には他者の、自分には自分の感情があり思いやりがある。ならばそれを互いに自分のために使えばいい。そうすれば、一方に偏りすぎることも無く、自分、他者、それを見ている第三者からしても至極平等に映るはずだ。

 

 ユウは常に、自分と他人は『(イコール)』で結ばれた存在と認識している。つまり自分と一人の他人は、重要性が同じ『1』であって、その『1』が片方のみ増えてしまったら、それは『=』ではなく『自分≦他人』となる。だからこそユウは、こと個人間における優先順位はお互いに自分を優先させればいいと思い、多人数であればユウは躊躇いなくそちらを優先することにしているのだ。

 


 ユウは自分が好きであると同時に、他人には他人自身を好きであって欲しいと願っている。それは、人とは立場に違いが無い限り常に平等であるべきと言う考えと、他方の重要性が増えれば自分のことばかりを優先していてはいけないという、少し独特すぎる倫理観というか価値観というか、理解が難しい思考が基になっているのだ。

 まぁ、自分と同じような考え方を他者も当然持っているはずだ、という考え方こそ横柄で傲慢で主観的な、周りが見えていない自己中心的な考えなのかもしれない。だがそれが今のユウであり、人間としての寿命をまだ折り返し地点にすら到達していない人生経験が途中の者の限界であったのだ。




――――――――――――




 サーシャはユウの気持ちを察して身を引き、対してユウはサーシャの気持ちの半分も理解していない上、自らの考えを曲げることを拒否している。こんな状態で二人が話し合うなど、きっと時間的にふん単位にすら届かず、結局は同じ事を引き起こすだけだろう。そして、頭が冷えている現在でもこれなのだから、後日や今度など、時間の経過による解決が果たしてどれほどの効果を発揮するのか。そんなことすらも殆ど予想できるほど、その期待は酷く乏しいものであった。


 そんなことを頭で考えているのか、ユウは



(取りあえず、急いで屋敷の方に戻らないとな。一応遅くなるかもしれないって言っておいたけど、夕飯や泊まるところを提供して貰ってる身なんだから、あまり勝手な行動は印象よくないはずだし...)



と、これからの予定を考えつつ思考回路をそちらへとシフトさせ、その足を屋敷の方へと向け駆け出していた。その足が向くのはサーシャが去って行った方とは正反対の方向であり、その様子はユウがサーシャに追いつくことが今後無いかのように感じられるものであった。





 またまた時間はズレにズレ、現在はユウが屋敷にて入浴中の時間である。

 そんなサービスカット(?)はさておいて、今この場所はサーシャの泊まっている宿屋であり、彼女の借りている宿屋の一室である。


 ユウから逃げてきた...もとい、自身の話にケリを付けた後サーシャは、現在自分が泊まっている宿へと真っ直ぐ戻ってきて、今に至る。そんな今の状況は...



「(お金は少ないし、お店は殆ど閉まってるから夕食も摂れないし、何よりあれだけ目を付けていた人への接触も自分から切っちゃったし......)はぁ~、......これからどうしよう...」



と、随分と色々問題を抱えているようだった。ちなみに言わなくとも分かると思うが、"目を付けていた人"とはユウのことである。サーシャ自身、あのとき自分からユウの下を去った際、それなりに決意を持ってやったことであるはずが、どうやら彼女の中では今更『後悔』と言う感情がわき上がっていたようだ。

 だが今更ユウに自分から接近したとして、今後の展開が先ほどのものと変わる可能性はあまり望めない。寧ろ自分から避けてしまった上、ユウ自身にこちらへの思い残しが感じられなかったのは、今こうしてたった一人でいる状況を顧みれば、一目瞭然だと言うことくらいサーシャも理解していた。だからなのか、一人今後への不安を口に出すことで、解決策が思い浮かばないというやり場のないモヤモヤを、どんな形でも良いからとにかく吐き出したかったのかもしれない。


 しかしサーシャの抱えている問題はユウが言ったように、既に解決への道が用意されているものでもある。


 "サーシャの妹を袋猿から助け出す"。


 この依頼は結局の所、誰に頼むでもなく国側が対策を講じてくれているのだ。確かに具体的に救出とは明言していないが、根本となる袋猿をどうにかするのだから、その後の攫われた人や物に関して、家族や持ち主に引き渡されるのは、おそらく疑うほどのことでもないはずだ。仮に不安なのであれば自分自身が国軍の方に掛け合って、共に行動すればいい話である。

 だがサーシャには彼女なりの事情があり、その事情が原因なのか、国や組合が関わることに随分後ろ向きな考えを示している様子だ。


 ところで、この話題における一番重要な問題点、『果たしてサーシャの妹はこの街の袋猿に攫われたのかどうか』が、全くの未解明なままである。

 今の今までユウはこの問題点に関して特に追求してこなかったが(というか、その考えに至ってすらいなかったのだが...)、そもそもサーシャの妹がこの街にいること自体、現段階において確証はないのだ。それこそ、サーシャ自身が言っているだけで、何も手がかりは提示されていないし、もしかしたら別の街や国にいるかもしれない。


 果たしてサーシャの話は全て真実なのか。仮に真実であるのならば、彼女の抱える"事情"とは何なのか。そして、彼女がユウを選んだ理由は嘘なのか、真実なのか。









『...!!......!!?』

「...それにしても、もう夜遅くだって言うのに随分と騒がしいんですね、外は。...何かあったんでしょうか?」



 サーシャが自室のベッドに腰掛けて今後の行動を決めかねていると、先ほどから聞こえてきた音が次第に大きくなり、窓を閉め切っていても騒ぎ声らしきものが聞こえて来るほどになっていた。だがそれはサーシャが言うように、日が沈みきって随分時間が経過した夜遅くに聞こえてくるような音ではなく、これほどの大きさであれば何かしらの事件が起きた可能性が考えられる。

 そんな可能性に対しサーシャは、



(仮に......仮に、騒ぎの原因が袋猿に関係しているとしたら...!)



と内心で考えが湧き上がった瞬間、彼女は貴重品だけを持って自室を飛び出していた。

 

 



 それは、既にユウが夢の中へと旅だ立とうとしている時のことであった。


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