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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ウィース編~上~
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No.050 本音と優しい人

前半は視点が一回ユウとリンに戻ります。



「とまぁそんなことがあって、結局サーシャからの頼みは断ることにしたんだ」

「なるほど。まぁ当然と言えば当然ですね。普通は殆ど関わりのない彼女に対し、そこまで協力する義務はありませんし」



 ユウが夕食を摂る一時間前に起こった出来事それは、サーシャへ自身の気持ちを素直に伝えたことであった。それらをある程度リンへ話すと、彼女はその結果に『当然だ』と言わんばかりの様子で同意したのだ。

 聞く人が聞けば少々非情すぎる考えだと感じるものだが、一般的に他人への親切はそうそう出来るものではない。仮に出来る者がいれば、その人物は大層慈悲深い心を持っているか、逆に何か利益を求めているかのどちらかくらいしかないだろう。


 そんな中今回のユウの心というと、挙げた二つの内どちらにも当てはまらず、結果協力を拒否することにしたのだった。...しかし、



「まぁリンが言うように、サーシャとはそんなに関わりが多い方じゃないし、セリアやガルシオ、その他の世話になった人達に比べたら...言葉は悪いけど、協力する義理はない。だけど別に、彼女に対して完全に無関心、と言うわけでもないんだ」



とユウが、今しがたリンが発した言葉へそんなことを付け加えたのだ。それを聞いたリンは、『どういう意味ですか?』と言うかのように自身の首を傾げ、ユウの言葉の続きを待っていた。

 確かに、ユウとサーシャが全くの無関係だったら、そもそもユウがサーシャからの要求に関して、ここまで深く考えることはなかったかもしれない。それ以上にユウが、自らサーシャへ接触すること自体起こることはなかっただろう。ユウがサーシャからの頼みに対し真剣に考えた理由は、彼女(・・)からユウに接触してきたという部分にある。



「なっ!?...主、もしかして......あのサーシャとか言う女に()があるのですか...!?」

「う~ん......今のところサーシャに感じるのは、『物腰が低くて話しやすい子』くらいの印象だなぁ...」

「(ホッ...)ならば、どうしてそこまで気にかけるんですか?」



 自身の質問に対し一切慌てることなく答えてきたユウは、サーシャのことを『丁寧な知り合いの女子』程度にしか思っていない。その事実を数瞬の間に察したリンは、ユウの女性関係で一番の強敵はセリアであると認識すると共に、ならば何故ユウがそこまでサーシャを気にかけるのかが疑問に感じていた。


『知り合い』


 この関係はユウの中において他人と友人の中間にある存在で、損得で動く範囲の関係であると彼は思っている。事実ディランやネイサンからの頼みにおいても、彼らがユウからの要求を呑む、もしくは何らかの手助けをしてくることで、初めてユウの中ではそれらに釣り合う働きをしようと決意するのだ。

 これがもし友人であるならば、ユウは損得を考えずに相手の要求を呑む...が、それも限られた範囲でしかユウは了承しない。


 本当の意味でユウが行動を起こせる関係は、家族か好意を寄せる相手だけである。


 それ以外に、



「サーシャが話した内容はさ、そもそも俺の対処できるレベルを超えてるんだよ。袋猿とか言う連中が、一体どれほどの規模なのか俺には想像つかないけどさ、ディランさんに聞いたら国でも対策を取らざるを得ない存在みたいだし......そんな大規模な集団で動いてるような奴ら、巻き込まれるのは仕方ないとしても、そこへ自分から飛び込みたいとは絶対思わないって。

 仮にサーシャの妹を助ける手助けをしたところで、今度はサーシャやその妹に俺も含めた状態で、他の袋猿達から狙われるって考えたらさ......仕方ないかなって思ったんだ」



という客観的に見ると非常に後ろ向きな考えも相まって、ユウとしては今回の申し出は断ることにしたのだった。だがこれもユウの中では、寧ろサーシャのためにもなっていると考えているのだ。と言うのも、



「まぁ主の言うことも一理ありますね。そもそも、下手に手を出して、逆に相手へ刺激を与えちゃったら、それこそ助ける助けない以前にその妹さんが危険に晒されてしまいますしね。...まぁボク個人としては、殆ど関係が無いので構いませんけど」

「いやぁ、リンはその辺考え方がシビアだよなぁ......まぁそういう俺も、その考え方と殆ど似てるし、反論は出来ないけどな」



と言うことであった。ユウとリンの話しを掘り下げて解説すると、つまり、中途半端な行動で事態を混乱させるよりは、最初から関わらない方がいいと判断した、と言うことだ。

 これは、ミミ村で起こった飢餓狼やことにも関連付いている。と言うのも、ユウがあのとき飢餓狼を倒すため空間を停止させた際、同時にジルト達の動きまで止まってしまった。それの何処が悪いかというと、動きを止められたことにより、ジルト達がレビアの存在に対処する時間が取れなかったことにある。

 それが全ての原因とまでは行かないが、そう言った事実も起因して結果レビアを取り逃がすことになったのだ。


 これはユウがリンの持つ能力を知られたくないという私事によって巻き起こった事であり、ユウの中ではそうした自身が持つ状況判断の無さや、要領の悪さを加味した上で、サーシャの申し出を断ることにした。


 まとめると、ユウは彼女の頼みを引き受け完遂させる自信が無いのだ。だから、事態をこれ以上悪化させないためにも、ディラン(ベテラン)に事の収拾を託し、自身はできる限り下手な手出しをしないことを決めたのだった。



「ではどうして、今もそのことに関して悩んでいるんです?」

「ん~~~、...そう言われると、俺自身何故かは分からないんだけどさ。それでも心のどっかで、サーシャの見せてきた必死な表情に対する罪悪感みたいなものがあるのかも知れない...」



 ユウの中では既に答えが出ている事であるはずが、実際ユウの顔に出ている感情を言葉に表すと、まさに『納得いかない』とでも言うかのように、その表情は晴れない。そんなことを今までのユウの仕草などから感じ取っていたリンは、何気なくユウに問いかけたのだった。

 その問いかけに対するユウ自身も、自分の気持ちがよく分からないようである。と言うのも彼自身、自分の判断が間違っているとは思っておらず、例え世間一般からすると受け入れがたい考えだとしても、それは彼にとって紛れもない"信念"であった。それは日本にいたときから変わらず、自分の抱えられない案件に対しては常に周囲を頼り、決して自らの力を過信することなく、事態を確実に収束させてきたのだ。


 この考えはおそらく周囲の人間からすると"逃げ"なのだろう。それもそのはず、自分から挑戦することなく、またその能力を伸ばす機会を放棄しているのだから、周りからするとユウの行為は非常に情けなく、同時に臆病なものに見えるはずだ。

 だがユウ自身、自分の行動が周りから決して高評価を受けるものだとは一度も思ったことはない。寧ろ、そんな行動を起こす自分の臆病さがあまり好きではない程だ。それでもユウが、この自らが定めた信念を貫き通す理由として、物事の確実性、正当性、そして完全性を最重要目標としているからにある。


 これはユウの過去の体験に基づく考えだが、長くなるのでまたの機会に話すことにしよう。



「まぁそうは言っても、彼女...サーシャさんからの頼みは聞かない方が良かったですって。そもそも主自身、"できる限り目立つ行為はしたくない"がモットーなんですから、やるやらない以前の問題ですって」

「なんだよ、リン。分かってんなら、そんなに掘り下げて聞くなよ......とにかく、この話はこれで終わりだ。時間的に風呂使わせて貰える頃だし、さっさと入って寝るぞ」



 ユウの疑念を余所に、リンはユウの確信となる部分を言い当てると、そう結論づけた。聞く人によっては若干キツい言い方かもしれないが、言われた本人であるユウ自身その言い分は理解できるようで、それほど気にしていないようだ。

 さて少々強引ではあるにしろユウは、自分が夕食を食べてからだいぶ時間が経ってしまっており、そろそろ寝る準備をしなければいけない頃なのを思い出した。そして前述のように言って立ち上がると、風呂(大浴場)へと向け、リンと共に部屋から出ていったのだ。



(まぁどうせこの気持ちも、称号に付いてきた名称のせいかもしれないし、深く考えないようにするか...)



 そんな冷めた考えを持ったユウは何処か心の温かみを失った人間に見え、少し怖い印象を抱かざるを得なかった...。





 時刻はまた数時間前に遡り、ユウがリンに話していなかった『その後』の話。それは、



「し、しないって...どういう事ですか?」

「文字通り、手助けも協力もしないって事。でも、安心して。ちゃんと領主の人に確認を取ったら、袋猿の件に関して数日前から担当の人に調査や捕縛をするように命じていたらしいし、俺が出なくてもサーシャの願いは自然と叶えられるはずだよ」



という問答から始まった。

 ユウがサーシャからの頼みを断ったはいいが、その時に放った言葉、『助けることはしない』。これにサーシャは疑問を感じ、まるでオウム返しのように聞き返したのだ。対するユウはその問いに対し前述のような言葉に加え、



「それに、俺がサーシャのことを手伝ったとして、最後まで望み通りの働きが出来るか不安なんだよ...」



と、自分の中にあるいくつかの不安要素の内、最大の理由を打ち明けた。それは先ほどユウがリンへ話したように、ユウは自分の力を過信することにとても後ろ向きな考えをしている事に繋がる理由であった。言い換えてみれば、非常に臆病な性格とも言える。

 そんなユウであるからこそ簡単に人の頼みを受けきれず、最終的には自分の力と達成レベルを加味した上で、引き受けるか別の人に託すかを決めたのだ。


 そうは言ってもユウ自身最初にサーシャから聞かされたときは、どうにかして助けてあげたいと少しばかり思っていた。が、袋猿の規模や既にその対策が実行されている現状を把握した今となっては、自分がしゃしゃり出るほどでもないし、寧ろ場を混乱させないためにも極力接触はしないように心掛けようと考えていたのだ。

 それ以外にも断る理由はいくつか存在するのだが、それを今この場で話すと、確実にサーシャが悲しむし、ユウ自身その発言はあまりにも自分本位過ぎる内容と確信しているため、控えようと決めていたようである。



「そ、そんなことありませんて!...だ、大丈夫です!ユウ君とても強いですし、ユウ君と一緒に話していたときからずっと、ユウ君はとても他人思いの優しい人だっていうのは伝わっています。だから今回の件だって、私や私の妹の安全を考えた上で断ってくれたんですよね?」

「ま、まぁ、そんな所だよ......うん...」



 ユウが漏らした"不安"と言う言葉にサーシャは反応すると、直ぐさまそれを否定するように、自分が見てきた『ユウという人物』のことを思い出し、そこからユウがどういった考えの下判断を下したのか。それを疑問で返すことで、確認の意味を込めた感謝を示したのだろう。

 だがそれに対するユウは、若干歯切れの悪い曖昧な肯定をすると一瞬その表情に陰を出した...が、直ぐさま元の真剣な表情へと変わったため、その変化は殆ど感じられなかった。実際サーシャも "あれっ?" くらいの印象であったし、そこまで気にしている様子でもなかった。と言うのも...、



「...それでも今回の件、どうにか引き受けて貰えませんか?別に領主様がしていることを頼りにしていないわけではありませんが、それでもユウ君が協力してくれるのであればとても心強いと思うんです!」



という、ユウの思いやりを加味した上で再度頼み込もうとしていたからだ。

 サーシャの頼み、つまり彼女の妹を袋猿から助け出すという目的は、突き詰めてしまえば何もユウだけに頼み込むものでも無い。寧ろ冒険組合やそれこそ(だいぶ進言は難しいが)ディランのような領主や国へ依頼や要請をすれば事足りる案件である。

 では何故サーシャはそれを実行しないのか。そして仮にそれらを考えないものとした上で、どうしてここまでユウに固執するのか。ユウはそこが気になっていた。



「心強いって......そもそも、なんで俺にそこまで固執するの?もし本当に緊急なことだったら国...は難しくても、組合や知り合いに頼めばいいじゃないか。それこそ何処かの団体に頼みづらいのなら、俺やこの前のベイジさんへ頼んだみたいに、他の強そうな冒険者達へ個人的な依頼をすることも可能だろ?」

「そ、それは......まぁ確かにその方が早急ですし、確実性はありますね。ですがそこは、......実際報酬が用意できないって言う、結構シビアな理由があるんですけどね...」

「...まぁ、それもそうか...」



 ユウからの問いかけに対し、俯きながら酷く悔しそうな声でそんな言葉を吐いたサーシャは、とても見ていられる様子ではなかった。


 以前冒険組合の所でも話したように、組合に依頼すると言うことは、受注する冒険者への達成報酬と組合へと納める分、この二つを事前に用意する必要があるのだ。ちなみに言うと、この"報酬"は金銭価値のあるもので、かつその価値を分配できる代物であれば、別段お金でなくとも構わない仕組みとなっている。


 そんな現実的な理由がネックとなって、組合や直接冒険者達に頼むという手段が執れない、そんなサーシャの現状をユウは彼女からの言葉で理解した。だがそれも、



「けどさっきも言ったように、今は国自体が動いてくれているんだから、今更俺みたいな奴に頼むことないって。サーシャが俺に固執する理由はよく分からないけど、今はこうしていることよりも、国軍の人達と協力して妹さんを助け出す方が大事なんじゃない?」



と言う言葉から分かるように、今更ユウが関わる必要も理由も道理もないため、ユウの心は揺るがない。それどころか、わざわざ報酬を用意しなくとも、国が協力してくれるのだから良かった、と思っているほどだ。それは決して自分が協力しない事による安堵感からではなく、サーシャもサーシャの妹も一番安全でコストのかからない方法で救われることに対する、純粋な喜びから来るものだった。


 今まで散々冷たいことを言ってきたユウだったが、別にサーシャのことを嫌っていたり無関心だったりしているわけではないのだ。確かにセリアやガルシオ、ジルトやシルビアと言った世話になった人物達と比べると、ユウの心の中におけるサーシャの位置づけはそこまで高くはない。が、このウィースに来るまでの間、一行の中で一番親しくなったのはサーシャだったのだ。

 だからこそユウは普段ならば素通りするような今回の事態に対して、サーシャとサーシャの妹そして自分にとって今一番有益な状況を考えた結果、こうした結論を導きだし提案しているのだった。


 ユウが話を締めくくろうと考え、サーシャへ国軍と早急に連絡を取るように言うと、彼女は






「それじゃあダメなんです!!」



と、否定の言葉を発した。その言葉は振動となり、ただでさえ静かな水路近くの通り沿いで建物の壁に反響し、非常に耳に残る響きとなってこだましていた。


 だがそれも直ぐさま音の凪と化し、周囲の人々も時間が時間のため家へ帰る人達や、また店内にいる人達などは自分たちの話に戻るといった具合に、その殆どが既にユウたちの方を気にしている様子はない。しかし、 



「っ!!?......え、えっと...」

「......っ!!ご、ごめんなさい!!急に大声を出してしまって...」



という感じで困惑するユウと、自分が今しがた無意識のうちにやってしまった行為に気がつき自然と顔を俯かせるサーシャ、この二人だけが未だに元の状態へと戻れないでいた。と言うのも、ユウはサーシャがここまで大声を出すこと...と言うよりも、鬼気迫る様子で言葉を発すること自体予想していなかったのだ。

 ほんの数日しか会話をしてこなかったユウとサーシャではあるが、相手の表面的な性格くらいは把握しているつもりであった。だからこそサーシャはユウのことを、『強くて心優しい人』という印象を持ち、逆にユウはサーシャを『話しやすくて優しそうな子』と勝手にイメージしていたのだ。


 誰だって相手の内面を初見で看破することなど不可能に近い。それこそ心理学の分野に精通している人のように、相手の言動やものの見方から分析できる程の技力が無ければ、性格など到底判断できるものではないのだ。その理論はユウとサーシャ(この二人)にも当てはまり、ユウの本性としてはサーシャの抱いているものとは違い、臆病で合理的、物事をキチンとしたいはずが何処かで決定的にズレていたり欠けていたりする性格なのだ。

 それに彼女がユウに抱いている『強い』という印象も、何割かはユウ本来の力ではなく、魔具リンの力も起因しているため、純粋なユウの力量は一般よりも少し上くらいが限界である。


 そんな感じにサーシャが抱いている『ユウという人物』が現実とズレているように、ユウが『サーシャという人物』に抱いていた印象も、外面と内面が全く一致しているわけではないのだ。


 そんなことを今しがたのサーシャの様子から、僅かだが察したユウは、



「...取りあえず、少しこの場から移動しようか...」



と、一先ず話を中断することにして、歩みを進めた。と言うのも、今しがたのサーシャによる発言に若干ビビってしまったユウは、自らの足を止め、彼女の方を凝視するだけで精一杯だったのだ。

 計算外・予想外など、自らの対応できる範囲外からの不意打ちに弱いユウは、予期せぬ突然の出来事が非常に苦手である。それは彼自身の普段の行動にも影響しているが、その説明は近いうちにすることにしよう。



 さて、ユウの発言によって少しだけ興奮が落ち着いたサーシャは、ユウに続く形でその後を付いていく。そしてそれから暫くの間、お互いに話すこともせずにゆっくりと歩き続け、不意に



「...仮に...仮にですよ?私がユウ君に対して報酬を用意できるのでしたら、協力、してくれますか?」



と、ユウの背後からそんな声が聞こえてきた。その声の主は当然の如くサーシャであり、彼女が提案してきた内容をすぐに把握したユウは、



(やっぱり、そう来たか...)



と、その発言が来ることを予測している様子だった。と言うのも、先ほど組合や冒険者への報酬という話が出たときから、なんとなくこの話題がまた出てくることをユウは少しだけ予期していたのだ。

 だが、サーシャ自身"報酬として用意できるものを自分は持ち合わせていない"ということを先ほどの会話で明言しているし、そもそも女性が男性に『報酬』という掛け金を用意すること自体危険なはずである。

 そんな事情を加味した上で、こうしてサーシャがユウに提案してきたと言うことは、それほどにユウに固執しているか、もしくは彼女なりの新たな作戦なのかもしれない。



「念のため聞くけど、その報酬って言うのは俺が勝手に決めていいものなの?一応俺も男だし、要求する報酬もサーシャなら色々察しが付くと思うんだけど...」

「そ、それはっ!......ま、まぁ、ユウ君も男の子ですし、当然そう言ったことに関して覚悟していないわけではありません。......もちろん、そうした報酬をユウ君がお望みなら、私は...」



 ユウがサーシャの本心を探るため、若干男の狼部分を臭わせるような発言をしたが、ユウの本性としては狼どころか飼い犬レベルよりも低いくらい、草食系男子だった。というか、そう言った事柄に対して臆病なため、断食や絶食系男子とも取れる性格である。

 そんなわけで、サーシャから"覚悟は出来てる"発言を聞かされたユウ本人はと言うと...



「......(いや...いやいやいやいやrt!!)」



...と言うように、内心この後の展開をどうしようか本気で焦っていた。

 実際の所、こうしたやり取りに関する経験が一切ないユウ自身、この後をどうするか全く考えておらず、予想ではサーシャが引き下がるか、悪くても言い淀むくらいはすると思っていたようだ。だがそこに、サーシャ自らの


"覚悟はできています"


 こんなことを言われた後の対応などユウの中では準備されているはずもなく、



「と、とにかく!あまりそういう報酬設定の仕方は取らない方がいいよ?特に男は女性に対して情欲とかが大きいしね」



といった強引過ぎる、急ごしらえの説得を披露する羽目になったのだ。話したユウもこれでサーシャが納得してくれるとは流石に思っておらず、取りあえずこの発言に対して彼女が反論の言葉を考えている間に、どうにか新たな説得文を考えようとしていた。

 だがそんな時間は訪れることはなく...



「だ、だから!私はユウ君になら、その......捧げても構わないと覚悟しています!ですから、どうか引き受けてください...」



と、酷く震えた声でサーシャが懇願してきた。その様子は自らの依頼をユウが受けてくれないことに対する怒りと、自身が言ってしまった内容を撤回することが今更不可能なことに気づき、それでも尚突き通そうという意思が込められ、どことなく鬼気迫るものが感じられる。

 しかし、何故彼女はここまで必死になるのか。その依頼とは、自分の持ち物を捨ててまで他人に縋ることなのか。そして、彼女の狙いとは。



 そんな分からないことだらけの疑問に加え、現在彼女に対する説得文を一切思いつかないまま回答を迫られているユウは、頭の中が混乱し、つい...









「いい加減にしろ、このクソが!!」



と口走っていた...。



これで今月は終了です。

最後のセリフに関しては......ちゃんとフォローします...。

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