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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ウィース編~上~
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No.039 新名称への道と映像世界



 


「っ!!やっぱり、出てきたか...!」

「えっ!?...何があったんですk!?」



 ユウとサーシャそしてたまにベイジが一緒になって話している中、突然ベイジが叫ぶと彼は鱗駝鳥スケールバードの向いている前方を確認した。

 ユウはそんなベイジの行動の意味が一瞬理解できなかったが、すぐさま強化魔法を発動し五感を鋭くさせると、瞬時に状況を把握した。

 それは隣に座っているサーシャも同じであった。(←弓使いの名称持ちのため)



「どうやら、お前らとのんびり話が出来るのもここまでみたいだな...」

「魔獣...ですかね。

 ...一つ、伺いたいのですが......お手伝いするようなことはありますか?」



 ベイジからの一言でユウはベイジの本来の動向理由を思い出し、何なら自分も戦おうかと提案した。別に多少くらい戦ってもユウにとっては別に問題はなく、逆にこうして自分は何もせず守られるというのは落ち着かないのであった。

 だがそんなユウからの言葉をベイジは、予想外の一言で断った。



「いや、その必要はないな。魔獣は一体だけみたいだし......どうやら、俺すらも必要なさそうだ...」

「えっ、それはどういう意味d "パーーーン" ......何ですか、今の音?」



 ベイジからの返答に困惑するユウは、その理由を聞こうと話し始めると、唐突にまるで何かが弾け飛んだ音が聞こえると同時に、魔獣の気配が消えた。

 どうやら誰かが何かしらの武器で攻撃し、魔獣を一瞬のうちに葬ったようであった。そのことに考えが至っていたユウは、今度は先ほどの音の正体についてベイジに聞くと、



「あぁさっきの音は、冒険者のディスパーさんが使った"液弾銃フリッドガン"ていう魔具で、周囲の水を利用して発射した弾が、魔獣の頭を吹き飛ばした音だな...」



と、恐らくその光景を見ていたのであろう事が分かるほど、その表情は若干引きつっていた。流石に、脳みそをぶちまけている光景というのは中々に衝撃が強いため、決して見たいものではないのだろう事が窺える。

 

 ユウはベイジからそう聞くと同時に、魔動車が先ほど現れそして瞬時に殺された魔獣のそばを通った。

 ユウがそれを見ると、確かに綺麗に頭だけ吹き飛ばされ、さらに魔核を取りだした痕跡が見られるむき出しの胴体部分を晒した状態で、魔獣であった"それ"は道の端に避けられていた。

 さらにそれは、若干腐り始めており、いくらなんでも腐敗が速いような気がした。

 

 ユウがそのことに疑問を抱きベイジに聞くと、



「こういう魔核以外取る部分がない生き物は、こうして腐敗魔法で腐らせておいた方が、周囲の魔物や魔獣の食料にならずに済むんだよ。

 だから腐敗魔法が使える奴がいたら、こうやって素材が必要ないのはすぐにでも腐らせて土に還すのが暗黙の決まりになってるんだよ」



と丁寧に教えてくれた。

 ユウはその話を聞き、"よく考えられているなぁ..." と感心すると共に、今後一人で旅することになることを考えたら、気をつけていこうと心に誓っていた。

 

 と言うわけで、あまりにもあっけなく終ってしまったが、そのお陰でディスパーという人物に若干興味が湧いたユウであった。

 

 ディスパーが持つ"狙撃手"という名称を見てユウは、



(後でサーシャに聞いておこう...)



と、狙撃手に進化できる名称の一つ"弓使い"を持っているサーシャに、この後泊まる宿屋で詳しく聞こうと考えていたのだ。

 

 そんなこんなで、もうじき宿屋のある地点に着く頃である。




 

「練習あるのみ、か......まぁ、当たり前か」



 そう一人納得していたユウは、宿屋(というより旅館並みの規模である)の一室にある部屋の一つを借りている。もちろん自費だ。

 とまぁそんなことは今はいいとして......先ほどサーシャに狙撃手という名称になるにはどうすればいいのか?といった内容を聞いたのだが、


==========


「う~ん......正直名称は、それに準ずる武器を自分で磨いていくしかないですね...。

 ユウ君の持つ"武闘家"は自分の肉体で、ベイジさんみたいな剣を使う人の場合はもちろん剣の技術を。そして私はこの弓の腕を......各々地道に上達させていくしかないんですよ。

 まぁそれ以外だと、誰かに教えて貰うとかしかないですね...」


==========


という感じに、ユウの予想通りの答えが返ってきた。ちなみにサーシャの弓使いという名称は、弓を手にしたときからではなく、矢に魔力を纏わせることが出来てからであった。

 それは弓使いの名称が使える能力の一つであり、同時に弓を使う上で重要な身体の機能も上昇したらしい。



(となると、まずは狙撃手になれる名称の一つを取得することから始めるか......リン、出てきてくれ)



 ユウはそう決意すると、心の中でリンのことを呼んだ。まずは何かしらの武器を使えるようにならないことには、おそらく何も始まらないと考えたらしい。

 ユウの呼びかけに応じたリンは、 "ポンッ" という毎度の音を出して、通常の小型サイズになって出てきた。








「あ~る~じぃ~~~~~~!!もうっ!!すっっっごく、寂しかったですよぅ~......グスッ...」

「そ、そこまでかよ......なんか、悪かったな...」



 リンは出てくるや否や、ユウに飛びつき、飛びつかれたユウもそれを少しばかり呆れつつも、ちゃんと受け止めた。やはりユウを愛しているリンにとっては、ほぼ一日中ユウに抱きつけなかったことは堪えているらしい...。

 ユウもそのことは流石に察しているためそれほど強く言わず、リンの気が済むまでまずは頭を撫でていた。どうやらリンはその行為がお気に入りらしく、段々と表情が和らいでいき...



「あ~ん、主ぃ~~~♪もっとボクのことまさぐってくださ~い///それともぉ... "ボ・ク・が" 主の身体をお世話(意味深)しますかぁ~?.......えへへへぇ~~~///」



と、実に分かりやすくトリップしていた。もう既に目に関しては、蕩けきって簡単には戻りそうにない...。

 

 そんなリンを撫でながらユウは、



「......取りあえず、リモコン使いたいから一回落ち着いてくれ...」



と肩を竦めながらリンにお願いした。確かにリンの気持ちも分かるが、ユウ自身も本来の用件をそろそろ聞いて欲しいため、多少強引でも聞いて貰いたかったのだ。

 するとリンは



「了解です!ですが、もう少しこのままがいいので......えいっ!」



と、可愛らしいかけ声を出すと共に、ユウの左手へリモコンを出現させた。

 ユウはその事実に若干困惑すると、



「え?......え?」



と、"え?"しか言わない機会音声君に成り果てた。

 それもそのはずで、いつもならリンが自身をリモコンの姿に変えユウの右手に収まるのだが、現在ユウの右手はリンを撫で続け、代わりに空いた左手にリモコンが出現した。

 よってユウの反応は当然と言えて、別にアホ面を晒しているわけではないのだ。



「リ、リン?もしかしてだが......普通はこうやるのか?」

「ふみゅう~~~♪......へ?

 ......まぁ、通常はそうですね。ですが、別に主が今までやっていた方法でも問題はありませんよ?ただボクは主がそう念じていたので、今までそうやっていただけですから」



 ユウからの問いかけにそう答えたリンは、まるでなんでもないことのように話すと、再びユウの身体に密着してきてナデナデを催促してきた。

 ユウはそれに答えると共に、先ほどのリンの言葉に突っ込みたい気持ちを飲み込み、平静を装った。なぜならば...



(......ここで俺がリンにツッコんだら、たぶん色々ダメな気がする。......それだけは確かだ...)



 というユウの気持ちを直訳すると、"寧ろツッコまれるのは自分である" という内容になる。......まぁ意外な事実というものは、結構その辺に転がっているため気にしすぎるとツッコミが追いつかない。

 よって、結構な割合で諦めが肝心である...。





「取りあえず......"入力切替ロールシフト"の入力4、っと...」



 ユウはしばらくの間リンのことを撫で続けるため、いつもの右手ではなく左手でリモコンを操作し、収納空間を選択した。

 ちなみにこの空間内に入れている荷物や武器は、画面表示メニンドゥによるメニューにて確認可能である。言ってみれば、ストレージみたいなものに似ている。


 とまぁ説明はこのくらいにして、早速ユウは、リモコンの収納空間内にある自身の持ち物を、メニューに表示しながら調べていた。



(う~ん...本当だったら、ディスパーさんみたいな銃タイプの武器が欲しかったけど、流石にミミ村には無かったんだよなぁ...)



 ユウはそう愚痴りながらも、昨日ミミ村にある幾つかの店舗を巡ることで購入していった物資の数々を眺めたいた。その中には、肉や野菜、パン?といった食料の他に、定番の回復アイテム(後ほど登場)や鉄製の剣、槍などの武器関連も入っていた。

 しかし武器に関しては、ユウ自身武器を使う名称を持っていなかったのであまり使うつもりは無かったようだ。

 それでも、



(やっぱり、あの統率蟻リードルアントと戦ったときみたいに、何かしらの武器を使えるようになった方がいいしな。徐々に武器も使って戦えるようにしていくか...)



というわけで、ユウ自身も現状の戦い方に危機感を抱いていた。

 実を言うと、ジョンとの特訓ではその殆どを身体強化や身体の使い方のついてであり、リーズとの特訓に至っては魔力操作や魔法の特訓であるため、武器を使う機会が一切無かったのだ。

 そんなわけでユウには、武器を使える名称が一つも無かった。


 そんな中ユウが最初に目を付けたのが、"狙撃手"という名称である。そしてユウは、その名称を持てるようになる武器を持っていたのだ。その武器とは......



「お、あったあった...。確か名前が......うん、忘れたからボウガンでいいや。どうせ、見た目そのまんまだし」



というユウの言葉通り、それはまさに地球における"ボウガン"そのものであった。それも"弩"と呼べるくらいに、だいぶ原始的なやつである。

 ユウ個人としては弓もいいかもと思っていたが、



(正直、弓なんて素人がやっても上達遅いだろうし、これの方が簡単そうだしな...)



という理由から、ユウはこのボウガンに決めて買ったのだ。ちなみにボウガンといっても、パチンコみたいにある程度小さいものや細長いものならばなんでも大丈夫らしい(武器屋の店主曰く)。


 そんなわけでユウは早速この新しい武器による戦い方を身につけるため、一度あるところへリモコンによる転移を考えた。



「リン、悪いけどこれからクルスの森に転移するから、もうそろそろ終ってくれ」

「......分かりました。そういうことなら、仕方ないですもんね...」



 リンに対しそう言ったユウの言葉から分かるように、ユウが予め登録していたクルスの森が転移先であった。その理由として、あの森が広いことや魔物や魔獣が強いことが挙げられる。

 そんなユウからの頼みにリンは、若干渋々ながらも了承した。そうして、リンがユウに同化すると



「それじゃ......ポチッとな」



という、別に出さなくてもいいような声を出しながらユウは、リモコンの"1"のボタンを押した。......ユウの年齢からしたら、だいぶ違和感ありげな表現ではあるが...。





 そこはクルスの森の、ユウが空中に投げ出され初めて降り立った場所であった。空を見ると若干曇ってはいながらも、雨の方は既に止んだようである。


 そんな所に、一人の人物が忽然と現れた。



「...っと、......いやぁ、始めたやったけど何か不思議な感じだな、突然視界が変わるっていうのは...」



 そんなことを一人呟いたユウは、初めて発動したリモコンによる転移に驚くと共に、リンから教えて貰ったこの能力の仕組みを思い出していた。



==========


 この転移はですね。主が一度行ったことのある場所ならば、基本何処でも転移が可能で、なおかつ本来転移に必要な"ゲート"も要りません。

 なぜならば、この能力は現在地と行き先を空間ごと隣接させるのです。


 具体的にいうと...現在地点を一つの部屋として、それ以外には"目的地"という部屋が無数に存在します。これはそんな部屋に続くドアを、"現在地"という部屋にあるドアから自由に選んで出ることが出来るということです。

 主がイメージしやすいものだと、エレベーターみたいな感じですかね?


 あっ、ちなみになんですけど、この能力は主がいることで発生した魔力痕を辿って転移しているので、どうやっても主が行ったことの無い場所には転移が出来ません......まぁ、例外はありますが...。


==========



(てな感じか、リン?)

〈そうですね...。概ねそんな所ですが少しだけ付け加えるとすると、登録先はイメージ省略の上、永久的に転移が可能です。が、それ以外だとあまりに長く赴かない場合念じても転移が出来ません。その理由として、主の魔力痕の薄れが原因ですね...〉



 ユウからの確認にリンがそう付け加えると、ユウはその内容をしっかり頭にたたき込み、忘れることが無いように努めた。

 正直リモコンの能力は絶大であるのだが、その情報の多さに未だ所有者であるにもかかわらず、使いこなせていない自分をユウは理解していた。だからこそこの誰にも気づかれないところで、少しだけリモコンの能力を使ってみることも予定に含めていたようだ。


 そんなユウは早速リモコンの能力の内、最初にどれを発動させるか悩み、ひとまずは"映像世界テレビジョン"の能力で使っていない能力を選んだ。

 まずはメニューを開きユウの視界を"映像"として映し出すと、ユウは『早送り』と書かれたボタンを押した。


 すると、メニューに先ほどまで映し出されていたユウの視界がどんどん移り変わっていき、その視界の端から緑大猩グリーンフット々が飛び出してきた!

 だが、



「ホントに、メニューを開いた状態でやると、俺の行動がどんな結果になるのか見られるんだな...」

〈はい、その通りです!ですがメニューを開いておかないと、時間そのものが進んでしまうの気をつけてくださいね?〉



という二人のやり取りから、その光景はユウに起こるはずの未来を映し出していたことが分かる。

 その名も "先見世界フライング" という能力だ。つまり、一種の未来視が出来る能力とも言える。





 さて、続いてユウが押したのは『早戻し』と書かれたボタンである。すると、今度はメニューに映し出されたユウの視界が、まるでテレビの早戻しのように逆再生されていく。

 そして...



「おぉ!もしかして、過去まで遡れるのか!?」

〈そうですね。

 ですが最大で遡れるのは現時点から1日分だけですし、それ以上は難しいのです...〉

「......ま、まぁ、それだけ出来れば十分だろ...」



というやり取りから、映像が元の時間よりさらに前に戻せるのである。それでも流石に限界があるようで、リンは肩を落とし、ユウはそれを見て "十分チートだろ..." と内心考えていた。

 


「それに、この能力の本質は別だしな......」

〈まぁ、それもそうですね...〉



 そう言ってユウとリンは、お互いに同じ事を考えていた。それは先ほどリンが言った、"メニューを開いておかないと時間そのものが動いてしまう" という部分に秘密がある。

 

 それはつまり、この二つの能力は時間を進めると同時に、 "戻す" 事も可能なのだ......。

 この戻す能力は、 "再戻世界ルーピング" という。



〈まぁこれを使うと、主がとんでもない量の魔力を消費しますから、あまりお勧めできませんね...〉

「あぁ、俺としても滅多なことが無い限り使わないだろうな...」



 そう言い合った二人は、流石にメニュー以外では使いたくないと思っていた。ユウだって、わざわざそんな辛い思いをしてまで実際の確認作業をしたいとは思わなかった。

 

 ......それでも若干興味がある辺り、今後無意味に発動しそうな雰囲気がユウから感じられる...。



「スキップや秒送りは......また今度でいいか」

〈...あれ?いいんですか、主?なんなら今すぐにでも使えますけど?〉

 


 ユウの発言にリンがそう聞き返した。

 ユウが言った"スキップ"と"秒送り"とは、メニューで早送りをすることにより今後ユウに訪れる出来事を先読みし、その現象が仮に都合が悪いと本人が判断した場合、その現象を"無かったことにするのだ"。


 つまり、未来で起こるはずの出来事を強制的にキャンセルし、その後の"何も起こらなかった未来"へと時間上の転移が可能なのである。その名もそのまま "時間転移スキップ" という。

 ......なにやら、さらにチートの能力のようだ...。



「まぁ、この能力は俺に今後起こる全部が"無かったこと"になるわけだし、そしたら万が一それによって嬉しい未来が無かったことになったら寂しいしな。

 だから俺は、この能力は緊急時以外に使いたくないんだよ...」

〈なるほど......確かそういうのを、日本語で "一期一会" っていうんですよね?〉

「ま、まぁ。あながち、"的外れ" って言うほどでもないな。......微妙だが...」



 ユウの言葉にリンがそう返すと、ユウは若干言葉を濁したが概ねその通りだと感じていた。ユウ自、それがあまりにも理不尽なことで無い限り、それは自分の運命だと受け入れられる覚悟は持っていた。

 それに加え、この能力は言ってみれば自分の "人生" という大切な時間を一部とはいえ、無価値なものに変えてしまうのだ。それもそのはず。"無かったこと" とは、その時間ユウがなんの成長もしなかったことを指すのだ。

 詰まるところ、スキップによる時間の転移はユウになんの成果も与えない、まさに"時間の無駄使い"wpさせているのだった。


 そんな理由からユウは、この能力を使うことを後回しにした。ちなみに言うと、戻る場合は再戻世界よりも魔力を消費し、出来たとしても元の地点まで戻ることは出来ないようだ。



「秒送りも、そこまで急ぎ知る能力でも無いしな...」

〈そうですか......まぁ、主がそう決めたのならボクは何も言いません。というよりも、主の意思がボクの意思ですからね!〉



 そう言ったリンはその後、特にユウに進言することは無かった。ちなみに言うと秒送りは、スキップと先見・再戻世界の中間のような能力で、スキップのように結果をなくす力は無いが、時間転移をすることが可能なのだ。......だが正直言って、今まで説明してきた能力があればそこまで要らない能力であった...。


 若干哀れな秒送りに、何となく罪悪感を抱いたユウだったが、



「そんじゃ、いよいよだな...」



と呟き、自身の右手親指を『停止』と書かれたボタンに置いた。そしてそのボタンを魔力を流した状態で押すと...






 ユウの意識は、徐々に遠くなっていった。




次話は若干作者オリジナルの解釈が入りますので、あしからず。

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