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No.003 召喚の真実その2と異世界種族



 「元の世界に送り返す方法は、"存在しない"」

 


 ジョンから言われたその言葉は、どんな人物でも相当なショックを感じる言葉であっただろう。

 しかし、ユウはそこまでショックを受けているようには見えず、寧ろその言葉に少しばかり疑問を抱いた。



「...ジョンさん、一つ伺ってもよろしいですか?」

「っ、あぁ、私に答えられることなら、可能な限り答えよう。」

「では、

 "存在しない"とは、言葉通りの意味として受け取って良いのですか?」

「あ、あぁ、そのままの意味で受け取って貰って構わない。

 だが正直に言うと、送り返す方法は分かっているが、実際には実現不可能なのだ。」

「?それはどういうことですか。」

「それについては......リーズ、説明してもらっても構わないだろうか。」

  


 ユウに聞かれ言い淀むジョンだったが、リーズに説明してくれるように頼んだ。突然呼ばれたリーズは不思議に思い、



「えっ?わたし?」

 


と聞き返した。



「あぁ、私が答えるよりも召喚主である君が説明した方がわかりやすいと思ってね。頼めるか?」

「う、うん、いいよ。それじゃあ、説明するね。」


 

 そうして、リーズによる説明が始まった。



「まず、召喚するには一度精神を抜魂魔法で肉体から抜かないといけないのは覚えてるよね。」

「あぁ、覚えてるよ。俺が味わったあの苦痛だよね?」

「うぐっ!そ、そうだよ。今回はあんなやり方しか思いつかなかったけど、そう、ああやって精神を切り離すの。そして知っての通り、それぞれを別々に召喚することで、一番安全な方法で召喚を成功させられるんだよ。」


「ん、ここまでは話で聞いたとおりの内容だね。」

「そう、大事なのはここから。ほらさっき言ってたでしょ、別々に召喚した精神と肉体はこっちで元に戻すって。」

「そういえば、そんなことも言ってたね。

......もしかしてその方法って、」

「うん、なんとなく察しが付いてると思うけど、そうだよ。

"手動で"戻すやり方しかないんだよ。」


「やっぱしね。」

「ちなみに、精神と肉体が離れ続けると精神か肉体のどちらかが自然消滅するから、実質死んじゃうんだ。誰かがその元に戻す方法を近くでやらない限り、精神と肉体は離れっぱなしなんだよ。」

「だから、連れてくることができても、送り返すことはできないのか。いや、送り返すことはできるけど、やったら別の意味でも送られるのか。...なるほど。」

 


 すごくショッキングな光景がユウの頭に浮かんだ。

 それは、形はあるけど中身がないユウと、スケスケになってフヨフヨ浮かんでいるユウ(レイ)の姿が描かれていた。



「ちなみに、ちゃんと目的になる道がないと、一度分離した精神と肉体は別々の所に行って、最悪一生交わることがないかも...」

「うわ~。」

「それに、聞いてたと思うけどこの方法、禁術を二つも同時に発動するから、魔力が無いところだと発動することもできないんだよ。実際、ユウの元居た世界は魔力を生み出す"魔鉱脈(まこうみゃく)"や"魔気(まき)"が全然無かったから、何らかの方法でわたしが向こうの世界にいけても、おそらく召喚できないどころか、魔法の一つも使えない......。」

「そいつは大変だ。」


「本当は、ユウが望めば元の世界に送り返したいんだけど、送り返せないどころか最悪ユウ自身を殺してしまうことになっちゃうから。」

「たしかに、そうなるね。」

「だから、というわけじゃないけど、どうか理解した上で、当分はこっちの世界で生活すること、受け入れてくれないかな...。」

 


 そんなリーズの頼みにユウは、



「別にいいけど?」

 


 と、なんの躊躇いもなく言い放った。



「え、えっと、ユウ?わ、わたしの話最初から最後まで聞いてその反応はちょっと...」

「そ、そうだな。もう少し怒りを露にすると思っていたが...」



 ユウの言葉に対して、そんな思い思いの言葉を述べるリーズとジョンに対してユウは、



「そもそも誤解してるよ、ふたりとも」

「「へ?」」

「最初の方にも言ったように、召喚の仕方以外はほとんど俺が選んだことなんだから、この結果は俺自身の責任なの。だから、二人が気負う必要は無いよ。...確かそれで納得しなかった?」

「い、いや、もちろん覚えているとも。」

「そうそう!ちゃんと覚えてるよ。で、でも、帰れないことは言ってなかったから、もしかしてまた怒ってるんじゃないかな、と。」


「まぁ、帰れないことは今知ったばかりだけど、それでもちゃんと納得した上で召喚に応じたんだよ。ほら、『あなたは、今の生活に未練はありますか?』っていう文言、あれに同意したってことは向こうの世界のことはちゃんと整理が付いた状態でこっちに来てるってこと、今更なにも文句なんて無いよ。それに、そう何度も怒ることは疲れるから、そんなに気にしないで。」

 


と、ユウは、少し呆れた表情で二人のことを見つめていた。実際、自己責任を他人に擦り付けるような、低俗な真似をユウは嫌っていたこともあり、そこまで憤りを感じることもなかった。一度納得したことは、掘り返さないことに決めていることも大きいだろう。



「そうか、そう言ってもらえるとこちらもありがたい。」

「うん!ずっと、どうやって話そうか悩んでたから正直少し拍子抜け、って今までなら言ってたけど、ユウと話してたら、もしかして分かってくれるんじゃないか、って思えるようになったよ。ありがとっ。」

「...まぁ、そういうわけだから帰れないことは置いといて。

 これからこの世界で過ごしていくことに当分はなるなら、まず何をした方がいいかな。」


 

 そんな二人への説得を終わらせ、ユウはこれからの生活に期待と不安を感じながら、とりあえずはこの世界の住人である二人に、これからのことについてアドバイスを貰おうとした。



「ふむ、そうだな。まずは、ユウが何を望んでいるかを聞きたいが、良いか?」

「そうだね。帰る方法はこっちでも考えてみるけど、たぶん望みは薄いから、それならこっちの世界で楽しく過ごせるように協力するよ。」

 


 そういって、二人はユウの助けになることを決意した。

 その意思を察したユウは、さっそく、

 

 


「では、この世界の常識を教えてください。」



 この世界は、世界の創造神である"イリアス・ダグヴァーナ"から名前をとって、"イリス"と呼ばれている。

 イリスには海を隔てて、2つの巨大な大陸と、それよりも少しばかり小さい2つの大陸、そして1つの小さな大陸が存在し、うち3つの大陸が種族ごとで領地を定め、うまく棲み分けられるようにされている。



 種族は多種多様であるが大きく括ると、まずは一番大きな大陸に棲み、最も個体数が多いとされている人間族(アビス)、次に獣と人間族の間の存在である獣人族(イビス)、魔獣や魔物と人間族の間の存在である魔人族(ウビス)、そして最後に、獣や魔獣(物)以外の生き物と人間族との間の存在や、自然の力が生き物の姿をした亜人族(エビス)


 これらの種族は、巨大陸には人間族、もう一つのものには獣人族と亜人族が、そしてそれらより小さいものに魔人族が住んでいる。



 そして残った2つのうち、大きい方の大陸には、竜族(ドラビス)精霊族(フェビス)巨人族(ジャイビス)小人族(ミビス)を始めとしたその他多くの少数種族、その他に別大陸に棲む種族が渡ってきて住み着くこともあり、多種多様な種族で構成されている。



 それぞれの種族はそんなに憎しみ合ってはいないが、友好的というほどでもなく、お互いに暗黙の不可侵を決めており、滅多に他領土の境界を踏み越えるものはものはいない。基本は、自分たちの棲む大陸で生涯を終える者がほとんどである。

 

 しかしそれでも、同じ世界に住む者同士無関係というわけにもいかず、各領土にはそれぞれの種族ごとの大都市を1つだけ作ることが取り決められ、年に2回の遣国使が使わされる。

 それがもし使わされなければ、年に一度の各国の所要人物が集まる、"神の御前会議(カンシル オブ イリス)"において、よくて各国からの厳重注意、悪くて他国から宣戦布告と受け取られて、戦争へと発展する恐れがある。

 だからこそ各種族は、それぞれが抱える他種族の都市の防衛には力を注いでいる。

 


 ちなみに、残る最後の大陸は"神大陸"と呼ばれ、神の住処と考えられている。その大陸は様々な種族から神聖視され、何人も立ち入ることができない。というよりも、大陸自体が雲と同じ高度にまで浮かんでおり、誰も入ることができないでいる。たとえ入れたとしても、帰ってきて証言した者が存在せず、実体は謎のままなのだ。



 すべての大陸は、中心に神大陸、その周囲を東側が人間族の、西側が獣人族と亜人族の領土となっている。そして、南側を魔人族、北側が多種族構成で出来た国々の領土となっているのだ。


==========



「っとまぁ、この世界の実体はこんな所だ。」


とジョンは締めくくった。



次回に続きます

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