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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
36/64

No.034 事後報告と追求

前回の答え『二週間(十二日間)』

遅くなりましたが、投稿します。



 さて...レビアという存在があったもののユウを含めた騎士や冒険者達は、組合を通した国からの正式な依頼である"飢餓狼の群れの調査及び討伐"を完遂させた。

 

 この飢餓狼達や周囲の魔物・魔獣による被害の報告では、最初に襲われたアリザのパーティーの内行方不明の三人を除けば...重傷者10名、軽傷者20名であった。ちなみに、ガルシオはザルバに切られてはいるものの、致命傷は避けられたようで、現在は回復魔法による治癒で傷は癒えている。


 そして......



「...さて、こいつはどうするか...」

「ザ、ザルバ殿は、操られていただけではありませんか!?それなのに...」



 未だに意識を取り戻さないザルバを見てジルトは今後のザルバの処遇について考えていたが、その言葉を聞いていたセリアは "もしかして罪に問われるのでは!?" と思い、咄嗟の判断でザルバのことを庇うような発言をしていた。


 実際ザルバがしたことの全てが明らかになっていない現段階で、全ての決定をすることは出来ない。...が、ザルバが自分たちに敵という立場で現れたことを考えると、そんなにあまい処罰になるとは考えにくかった。だからこそセリアは、ジルトに対しザルバの弁明をしようとしたのだが、



「ん?...別に、ザルバのしたことを俺らがどうこう言うことは出来ないさ。...でもよこいつの性格からして、たとえ無意識の中でも自分が敵対してましてやガルシオのことを "切った" なんて知っちまったら、きっと、自身のことを許せないと思うんだ......。

 だからこそ、ザルバのことはザルバじゃない誰かが許さないと言ってやらないと、たぶんザルバ自身の心が壊れちまう...」



と、ジルトが言ったことを聞きセリアはなにも言えなくなってしまった。そして暫くしてザルバが目を覚ました。





「...というわけだ...」

「...そうか...」



 先ほど起きたザルバはまるで廃人のように虚ろな目をしていながら、確かに意思というものが備わっており既に寄生蜘蛛パラパイダーからの呪縛から外れたようだ。...しかし、その口からこぼれてきた言葉は聞くだけでも胸が痛くなるような事実であった...。



==========



 昨夜ザルバやアリザを含めた五人のパーティーは、飢餓狼の撃退依頼を受けてクルスの森へと入っていった。そしてアリザの言う通りに大規模な飢餓狼の群れを発見し、その群れに追われたのだ。


 その群れから逃げている途中にパーティーは二つに分かれてしまって、それでもミミ村のある場所まで向かったのだが......この後が悲劇の始まりだった...。



「俺は他のパーティーメンバーのオルバとムーナと一緒に飢餓狼から逃げていたんだが、ふと頭に違和感が走って来て、それでも目の前の飢餓狼を殺そうとしたら.........オルバを切っていた...」



 そう零したザルバの言葉を要約すると、本来飢餓狼を殺そうとした思考がなぜか飢餓狼という部分がオルバになり、その思考に従った結果オルバのことを切っていたのだ。

 さらに言うとそのときの記憶は鮮明に残っており、それなのにその事実を悲しくない、いやだという思考さえも変えられて、今の今まで特に疑問に思ってこなかったのだった。



「そして......そのまま近くにいたムーナも"逃げろ"って考えたはずなのに、......気づけば"逃がすか"っていう思考の下..."切ったんだ"...」



 そんなことを言ってザルバは膝から崩れ落ち、恐ろしさと後悔が渦巻いて......涙を流していた...。



==========



「...なぁ、ユウ。ザルバを元に戻したのはお前だったよな?」

「?...はい、そうです...」

「じゃあ、なんでザルバがそんな状態だったのか、理由は知ってんだろ?...教えてくれるか...?」



 ザルバからの告白を聞きジルトは、ザルバを正気に戻したユウにその原因を問いかけた。ユウとしても、ザルバがあの状態になった原因が自分のせいでもあると思っているため、ザルバのことはどうしても救ってやりたかった。だからこそジルトからの問いかけに対し



「...はい、勿論です...」



と、自身の知っていることを全て話すことを決めた。




「"寄生蜘蛛パラパイダー"?...聞いたことねぇな...。

 ホントにザルバがあんな状態だったのはその魔物が原因だったのか?」



 ユウからの説明に対しジルトはそう返した。

 それもそのはず。ジルトの言う通り"寄生蜘蛛"という魔物は、この近辺どころかジルトが知る限り未だに確認されていない魔物なのだ。


 ジルトは、魔物・魔獣からの進行を食い止めるため派遣された騎士の中でも隊長という役割を任されているだけあって、魔物や魔獣、その他の危険生物に関する情報は一通り把握している自信があった。

 それなのに、ユウからその魔物の名前を聞くことでさえ初めてだったのだから、驚くのは仕方がない。


 だからこそ、教えてくれたユウに対し感謝の心はあるが、それを上回る "困惑" という感情があったのだ。そんなジルトからの返事にユウは困っていたが...



「ジルト隊長。そろそろ村に戻りましょう...。

 この話の続きは一度落ち着いてからでもいいはずです...」



というセリアからの言葉が入ることで一度 "中断" という形になった。

 ジルトは未だに納得がいかないような表情をしているが、セリアの言葉も一理あると考えそれ以上は何も言わなかった。


 ユウはそんなセリアに



「ありがとう、セリア。お陰で気まずくならなくて済んだよ...」



と、お礼を言っていた。実際ユウとしては、ジルトからの問いかけに何と答えたらよいものか迷っていたことも有り、セリアの発言はだいぶ助かっていたのだ。


 そんなユウからの感謝の言葉にセリアは軽く頷き、それと同時に



「なに、気にするな。...私としても、ユウが先ほど発動した魔法や名称について聞きたいからな。

 それならば一度村に戻って、じ~~~っくり...と聞き出したかったからな」



と言った。ユウはそのセリアからの言葉によって、少しばかり興奮状態であった頭が急激に冷静...というか凄まじい速度で状況の整理をしていた。そして、そんな反射ともとれるような速度で一つの結論に至ったユウは、確認の意味も込めてセリアに



「ア、アハハハ......ナ、ナンノコトカナ?」



と、顔に "動揺してます!!" と書かれているかのようなしゃべり方になりながらも、問いかけた。......止めればいいのに...。



「だってユウ。さっき明らかに上級の魔法を使っていたし」

(ギクッ!)

「名称の魔力を出しながら、結界魔法よりも高度な性能の壁を張ってたし」

(ウグッ!)

「何より......ユウが自身の魔具を使った瞬間に、あれほどの飢餓狼の群れが一瞬にして全滅していたんだからな。

 誰だって疑問に思うさ」

「......参りました......」



 セリアから追求三連コンボを受けたユウは、 "俺がやりました..." と、まるで自首してきた犯人のような言い方でセリアからの追求にノックアウトしていた。


 ......やはり本能の部分から大雑把なためなのか、重要なところでいつも何処か抜けているユウであった...。





 さてミミ村へと帰還してきたユウたちは、一度冒険組合の方へと向かいそこで今回の依頼を完遂したことを伝えた。そこには村の防衛のために残っていたシルビアや騎士達、そしてウルド支部長が待っており、ジルトから伝えられた内容に驚きながらも国へと伝えるためになにやら書き込んでいた。


 そしてユウから聞いた"レビア"という人物についても国の方に連絡し、至急指名手配をしたそうだ。この"指名手配"という制度は、犯罪者や重要参考人などを探し捕まえるか犯罪者の場合首を持ってくるかすることで、その重要度に見合った金額が支給される。


 中にはその情報を伝えるだけでもお金になるような人物もいて、それ専門の職業がある程だが......その話はまた今度と言うことで...。



 そんなこんながあったが、ユウは色々と事情聴取を受けた後、



「はい、ご苦労さん。

 そんじゃ、これが今回の依頼の報酬だよ。受け取りな」



とシルビアから少々大きめの袋を貰った。その中には金貨が一枚、銀貨が数枚、銅貨がその2~3倍くらいの量。そして...銭貨に至っては数えるのが億劫になりそうだった...。


 そんな中身の袋を手渡されたユウは最初何のことかよく分からなかったが、よくよく考えてみると自分は依頼をこなしたのだからその報酬であるに決まっていた。だからこそ、



「はい、ありがとうございます」



とお礼を言ってその袋を受け取った。ちなみに、後々リモコンの"字幕表示エグテンス"で調べてみたところ、この貨幣は主にスローム王国と人間族アビス領である大陸の南部で使われているものであった。

 

 単位は"トル"といい、換算としては


『金貨1=銀貨12  銀貨1=銅貨24  銅貨1=銭貨48』


であり、日本の江戸時代にあった4進法に似ていた(銭貨一枚で一トル)。...が、完全に現代日本の換算方法ではないので、ユウにとってはかなり難しいだろう...。


 ちなみに中央では紙幣、北部では......まさかの 『電子マネー』 であった...。




 冒険組合でそんなことがあったユウであったが、今はゲートルト家にて絶賛セリアからの追求タイムであった。

 ここにガルシオがいないのは、現在少しずつ元の状態に戻りつつあるザルバの下に赴いているためであった。彼自身、自分を傷つけた相手だとしても今まで仲良く語り合っていた仲間であったため、一度話しておきたかったのだろう...。



 とまぁそのことは機会があればまた話すとして......ユウはセリアからの問い詰めに、若干言い淀んでいた。流石に全て話すと厄介なことになると考えたユウは、



「...セリア」

「?...なんだ。漸く話す気になったのか?」

「うん...。でも、出来れば俺が今から話す内容は他言無用でお願いできるかな...?」



と、セリアからの言葉にそう返した。ユウとしてもあれだけ見せておいて、ましてや自身を救ってくれたセリアに対しいつまでも隠したままなのは、自分でも許せなかった。

 だからこそユウは、リーズとの約束の件や自身の心情を無視してでも、今目の前にいる女性に対しては誠実になろうと考えていたのだ。


 そしてユウは自身の名称に魔術士があり、そのランクが既に4の"熟練者プロナー"であること。

 自分には"耐え忍ぶ者"という称号があり、腐食黒狼コロードウルフからの攻撃を防いだのはその称号の能力であること。


 そして、リンが宿っている"リモコン"という魔具の本来の能力についてだが......このことに関しては、全てを話さずに今回使った"一時停止フリージングタイム"と"遠隔操作リモコン"だけを話した。

 

 ちなみに"字幕表示"に関しては既にこの村の存在を突き止めたときに使ったとして、簡単に説明しているので省いた。




 ユウからそんなことを聞いたセリアは、



「魔術士の"熟練者"で、称号持ち...。それに加えて時間を止めたり、脳を支配したりする魔具の持ち主...。

 ......もし初対面でそんなことを言われたら、信じないか、またはこの村自体に入れることを禁じたかもしれないな...」



と、かなり真っ当な考えを述べた。

 ユウだって、そんな得体の知れない上にこちらが全く対処できないような存在が来たら、絶対に関わりたくない。寧ろ、人によっては排除しようとするかもしれない。

 だからこそセリアがこうしてユウの話を聞きながらも、一切警戒行動に移らないことをユウは疑問に感じていた。だからこそ、



「まぁ、こんなことを突然言われても信じないとは思うけど......それでも、警戒くらいはすると思ったな...。

 いくらなんでも無防備過ぎない?」



と、セリアに皮肉を言っていた。何故そんなことをわざわざ自分は言ったのか、ユウはそのことに疑問を抱きながらも目の前にいるセリアの表情を伺っていた。するとセリアは、



「なにを今更......。

 ユウが危険な人物であったのならば、私ではなくジルト隊長やシルビアさん、それに兄さんがあそこまで気を許すわけがない。この私でさえ、昨日と今日を合わせてもたった二日しかユウとは過ごしていないのに、いつの間にかこうして自然に話すまでになった」



と、まるで昔のことを思い出すような表情で話していた。

 彼女の言う通りユウとこの村の人々は、人の一生において一瞬とも言えるほどの時間しか過ごしていない。それは事実だ。

 しかしそれを加味した上でセリアは、ユウという人間がどんな存在なのか、自身がユウに対しどんな感情を持ったのかを、実際に言葉にしなくとも話している言葉の柔らかさ。温かさ。そして、 "信用" 。


 そんな感情を察したユウは、セリアからの言葉の続きを黙って聞いていた。


 


 その部屋には先ほどまでのぎすぎすした空気はなく、二人の男女が互いの話す内容に静かに微笑み、時には盛大にツッコんだりと、温かな空間が広がっていた。





 "ポンッ"



「「へ?」」



 そんな空間の中、どこかで聞いたような音を出しながらその少女は現れた。



「うぅ~~~~~!!ヒドい!ヒドいですよ、主!!

 なぜ、セリアとばかり仲良く話しているのです!!ボ、ボクだって......ぅ」

「う?」



 突如現れたリンに対しユウは、リンがいきなり話を切ったことに疑問を抱き、その先を促そうとした......ら、





「うぇえーーーーーーーーーーん!!!」





と、かなり悲壮感溢れる声を上げ泣き出したリンは、その身体を人型にしてユウへと抱きついてきた。

 ユウはその泣いているリンを抱き留めながら、 "流石に放置しすぎたか..." と内心反省しつつ、リンの頭をいつものように撫でていた。



「ったく...別にリンのこと無視してたわけじゃねぇよ。ただ今は、セリアに対してちゃんと話しておかなきゃいけないと思ったから話してただけだって...」

「うぅ~、...そりゃあボクだって主を独り占めしたい気持ちを抑えて、主がセリアと、あ・く・ま・で!事情説明という大事なお話をしているのを邪魔しないようにしていました!」



 ユウが、若干疲れが見えるような声を出しながらリンに対し事情を説明していると、リンもそのことに関しては納得がいっているかのような口調で答えていた。ユウはそんなリンに対し、若干ホッとしていると、



「で・す・が!それとこれとは別に、主のボクに対する  


      "  愛  "  


 が足りないのです!だから......その......」



と、叫んだりモジモジしたりと忙しそうな感じでいるリンは、ユウのことをチラチラ見ながら物欲しそうな目で見つめていた。

 そんな視線にとうの昔から気づいていたユウは、



(...まぁ、助けてくれたお礼だしな。少しくらい労うか...)



と、内心ため息をつきながらも、



「リン、ありがとな。大好きだぞ」



とリンに囁きかけた。......普段のユウなら照れくさすぎて言えないような言葉だったが、なぜか今は頑張ってくれたリンへの感謝の気持ちなのか、それともセリアとの会話を通して少しずつ素直になったのか、そのままの気持ちをリンに伝えていた。


 勿論そんな言葉を囁かれたリンはというと...



「~~~~~~っ!!デ、デレですよ、主!!とうとう、ボクに対して主がデレてくれました!!もうっ♪やっとボクのこと受け入れてくれたんですね? あ ・ る ・ じ ♪えへへへぇ~~~~~///」



とまぁ、安定の"好き好き節"が炸裂していた。今回はトリップしていない辺り、落ち着いたのかそれとも...



「はっはっはっはっはぁ~~~.........はぁ...」



 リン盛大にその身体をユウへと擦りつけ、かつ身体をくねらせるという妙技を見せている中、そんな様子を若干引きながらも、優しい目で見ていたユウは、



(なんだかんだで、リンからこうされるのも気に入ってんのかねぇ...)



と、一人物思いに耽っていた。














「...私だけなんか、置いてけぼりなんだが...。

 というか、あんなリンの姿聞いてないんだが...」



 ...まぁ、そんなリンの変化を見てさらにセリアからの追求があり、またぎすぎすした空間に戻るのは別のお話ということで...。



てな感じで、一話で終らなかったため次話に引き継ぎます。

《問題》『ユウがミミ村を出た後の目的地は?』

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