No.032 武の名称と到着
前回の答え『魔法が使えない』
昨日は時間がなくて投稿できませんでした。あと一ヶ月はこんなことがあり得ます...。
現在、ユウを含めたセリアたちのパーティーは、ジルトからの連絡にあった先ほどの場所から北へと向かっていた。
ジルトからの報告だと既に飢餓狼の群れに気づかれたらしいが、一体に付き必ず二人以上で戦っているため"まだ"死人は出ていないが、それもこちら側に怪我人が出るたびにジリ貧になっているらしい。
だからこそ、ユウたちも含めた未だに到着していないパーティーに再度連絡が入ったのだ。
そうしてジルトたちのいる場所、つまり飢餓狼の群れがいるところへと向かっていたユウ達一行だったが、
「ちっ!また緑大猩々か!」
というダイマからの言葉通りに、ユウたちパーティーの進行方向からあの緑大猩々(ユウ曰く"ゴリ丸")が襲ってきた。そんな魔獣を相手にダイマは、自身の魔法によって先制の攻撃を仕掛けようとした
「...そんじゃ、今度こそ俺の土鎚で"ドパンッ!"......って、またかよ!ユウ!」
...が、その言葉が言い終わる前にゴリ丸は、その身体を木々をなぎ倒しながら左方向へと吹っ飛ばされ、既に絶命していた。
それをやったのは、ダイマの言う通りユウであった。そんなユウはそこまでそのことを気にしていないようだった。何よりも今は、急ぐことが先決なのである。
「いや~、今は急いでるし、早く終るならその方が良いかなって...」
「...早いとかの問題じゃなくて、さっきから全部ユウの一撃で全部倒してるんだが...」
「そうだよ...。別に不満があるわけじゃないけど、ここまでユウの実力があるなら、さっきの飢餓狼相手の時も手伝って欲しかったよ...」
ユウが自身が倒した理由を述べると、それに続いてベイジ、クックという順番でツッコんでいた。それもそのはず。先ほどのユウの攻撃は、現在に至るまでの間およそ五回以上は続いていたのだ。
流石に経験の少ない者ならともかく、冒険者としてそれなりの経験を積んでいる彼らからしたら、ユウが先ほどから見せている強行突破は、ユウが言うほど簡単じゃないことくらい理解していた。
それは、パーティーの中で一番ユウと一緒にいた時間が長いセリアでさえも、
「...まさか、ユウがここまでの力を持っていたなんて......(私よりも全然強い...。どうしよう、今まで散々強気な態度取ってたけど、...これは直ぐにでも謝った方が良いような...)」
と、かなり反省しているほどにユウは異常な強さを見せていた。普段の彼女なら自身の言動に最後まで責任を持つのだが、今回のことに関しては内心 "水に流してくれないかなぁ..." と、だいぶ弱気になっていた。
まぁユウの性格上一々そんなことは気にしないのだが、セリアそんなこと知るはずがないので、そんなことを思っていたのだった。
さて...ユウがそんな異常な力を見せている中、唯一驚愕とか畏怖とかの思いを抱かず、素直に羨望の眼差しを向けていたのは
「す、凄いです!
ユウ君、そんなに強かったんですね!流石です!」(キラキラ)
という言葉を発した少女、サーシャであった。...まぁ、目の前で一撃の内に敵を沈めるよな人物は、女性にとって随分と頼もしく見えているのかもしれないが、それでも若干眼差しが熱いような気もする...。
「そ、そう、ですか?そう言って貰えると嬉しいですけど、...何か、恥ずかしいですね...」
「そんなことないですよ!ユウ君、全然強いじゃないですか。私も援護しようとしましたけど、全く必要ないくらいに、一瞬のうちに倒してますもん」
「...確かにサーシャちゃんの言う通り、俺の名称を使うまでもないもんな...。
ユウ。お前の武闘家って、かなりのランクなんだな...」
サーシャの言葉にそんな返しをしたら、サーシャに加えベイジがサーシャと同様に感心すると共に、ユウの名称"武闘家"の強さに舌を巻いていた。
それもそのはず。ユウの武闘家はランク3の経験者であるが、武闘家自体 "拳士" という名称が最大まで進化したものなのだ。
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『拳士』
名称。基本を自身の肉体による攻撃で行う者が持つ。別に武器を扱えないわけではなく、武器を扱うよりも己の身体で攻撃する方が得意なのだ。
攻撃の仕方は単純だが、身のこなしに補正がかかり俊敏性が高い。と言うよりも、身体能力全般が上昇するのだ。
その理由としては、武器を扱う名称よりも接近する上、自身の肉体が武器となるためその保護が必要となる。そんなわけで肉体そのものを使う名称は、身体能力の殆どを上昇させることが可能でなのだ。
ちなみにこの名称の能力は、"破壊拳" と "脚刃"の二つがある。
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『武術家』
拳士の名称が進化したもの。この名称になると、魔法を攻撃に組み込ませることが可能となるので、攻撃のパターンが増える...が、勿論こちらも狙撃手などの名称と同じで、魔力操作が上手くできないと発動すらしない。
能力は拳士のものに加え、"硬質化" と "残像"を持つ。
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『武闘家』
同様に武術家が進化したもの。内容は上記の二つと殆ど同じだが、身体能力だけではなく反射神経や判断・思考が早くなり、戦闘においてはかなりの効果が発揮できる。
能力は上記の二つのものに加え、"破滅の拳" と "鬼人化"が存在する。
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各能力は次の通りだ。
『破壊拳』
そのまま破壊の威力が乗ったパンチ。しかしその威力は、通常のパンチとは違い魔力を纏っているため、相当上昇されているため食らえば肉体に損傷が出るほどだ。
『脚刃』
文字通り、通常のキックを刃と化して攻撃する能力。魔力操作ができれば、鞭のように伸縮自在に出来る。
『硬質化』
身体を硬くさせ、防御やさらには攻撃にも活用できる。...流石に、ユウが持つ"完全防御体制"には果てしなく劣るが...。
『残像』
どっかのドラゴン何とかに出てくる達人どもの殆どが使える"あれ"。例えば、「...ふっ、それは残像だ...」 とか。
ふざけてるかと思われがちだが、実際やられると不気味。残像は鍛練を積むことで増やすことが可能だが、それ相応に努力とセンスが必要となる。
『破滅の拳』
原理は破壊拳と同じで、魔力を纏ったパンチ......だが、唯一違う点といえばその効果である。
それは、破壊拳が外側を破壊するのに対しこの"破滅の拳"は、内側を破壊する。つまり、外傷は殆どないのに、内臓が大ダメージを受けるのだ。
それすなわち、外側をいくら防御で防いでも回避不可能な攻撃なのだ。言ってみれば、 "浸透する拳" である。
『鬼人化』
一言で言うと、時間限定の"無双状態"。
身体能力を一時的だが、自身の限界より上へ強引に上昇させ、短時間の大幅な強化を可能とする。その間思考速度も相当な速さとなり、端から見たら反射と変わらなく感じられる。
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ベイジからのそんな言葉に、ユウは若干苦笑いをしながらも内心では、
(おぉ~!俺褒められてるし、賞賛までされてる!しかも、 "女の子" に!!)
と、かなり浮かれていた。...まぁ、ユウは日本で一度も女子からそんなことを言われたことが無かったので、かなり嬉しかったのだ。今までも、リーズやリンと言った高レベルの女の子に褒められて照れながらも、内心は嬉しさでいっぱいだった。
しかしユウは、そんな性格故か、一度褒められると調子に乗るという欠点があった。......いや、本人はいたって真面目でいるつもりなのだが、なぜか無意識に失敗する。
...まさしく今回も、それを取りこぼすユウではなかったので...
「っ!おい、ユウ!前見ろ、前!」
「へ?どうしたんですか、ベイジs "ボガッ!" ヘブッ!!」
とベイジからの忠告も虚しくユウは、進行方向を遮るように横から伸びていた枝へ、よそ見をしていたことも合わさってマンガのように顔面を強打していた。だがそんなこと今のユウにしてみれば、全く心配いらないくらいの衝撃であった。
...が、それでもその事実というものは、特に外傷を伴わないものだとしても、本人からしてみればとてつもなく恥ずかしいことであったのだ。
「なっ!?...おいおい、何やってんだよ...ユウ」
「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか!?ユウ君!」
そんな傍目から見たらとんでもないスピードでぶつかったユウを、前者のベイジは呆れた声で、後者のサーシャはかなり心配した声で呼びかけた。ユウは当然、そんな言葉に反応できるような心理状態ではなかったが
(...サーシャ、マジで優しい...)
と、サーシャからの言葉に感無量であった。実際ここに至るまでサーシャという少女は、ユウのことを誰よりも心配してくれたのだ。
その理由は、サーシャ自身も冒険者としてはユウとそこまで差がなく、ランク3の経験者でありながらもその名称はユウと同じ"探索者"であったのだ。だからこそ、パーティーメンバーの中でセリアを除くと、自身と同じような駆け出しの冒険者であるユウに親近感を抱いていた。
それでも当初はユウの存在が何となく信用しづらかったのか、素っ気ない態度で接していた。...が、一度パーティーから抜け出し戻ってきたときのユウの反応を見て、少しツボに入ったのか今ではだいぶ本来の性格でユウと話していた。......やはり、女の子からはこんな感じで接して貰えると嬉しいユウであったらしい。
しかし...
「はぁ...、ユウ。張り切ってくれるのは良いが、今は急いでいる最中なんだ。...できる限り、時間ロスは避けてくれると助かる...」
「あ、あははは......ごめん、セリア...」
と、サーシャからの先ほどのような優しい言葉に比べ、そう言葉をかけてきたのはセリアであった。
そんな少々強めなセリアからの注意を受けユウは、先ほどの失態...というか痴態を見られたことも合わせて、若干落ち込み気味だった。...が、それも
「おい!そんなことやってる場合じゃねぇぞ!さっきユウがぶつかった枝、舞踏樹木の枝だ!」
という、ダイマからの呼びかけによって中断された。ダイマの言う通り先ほどユウがぶつかったのは、自分の近くに寄ってきたユウを敬遠するため、自身の固有魔法である"暴れる枝(レイジングバット)"で攻撃してきたのだ。
しかもその一体だけではなく、周囲にも同じ樹木が何体もいてユウたちは知らない間に、"舞踏樹木の群生地"に踏み込んでしまったのだった。
「えっ、ちょっと!これまずいんじゃない!?今は急がないといけないのに、なんでこんな所にこんな大量の魔物がいるのさ!」
「うわーーー!!は、早く倒しきらないと、枝に叩きつぶされちゃいますよーーー!」
そんなことを言いながらも、クックは剣士の名称を、サーシャは弓使いの名称を発動し、魔法士のダイマは少しばかり距離を取って魔法を放とうとしていた。
だがそれは、自身の痴態の原因にもなった存在の正体を突き止めたユウの、
「...へぇ~、てめぇだったか...」
という言葉が発せられた瞬間、ユウはその枝の先にいた"そいつら"に対して、
「...何、勝手に伸びてきてんだ...こんの...くされ樹木どもがーーーーーーーーーー!!」
と、枝を伸ばしてきた舞踏樹木(無関係のその他も含め)に対し、武闘家の脚刃を放った。
"スッパアァアアアアアアアン!!"
そんな音を出しながらユウによる脚刃は、周囲にいた木々もまとめて"全て"を切り落とした。だがユウがその程度で、先ほどの痴態の原因を帳消しにするはずがなく...
「燃え尽きろ!! "業火砲" !!」
"ゴオォオオオオオオオ!!"
と、自身の手のひらから火の上級魔法、"業火砲" をぶっ放した。......おわかりだと思うが、ただの八つ当たりと、こうすることでユウは、先ほどのことを必死になって忘れようとしているのだ。
......いくらなんでもやり過ぎだが、それだけ先ほどの痴態はユウの琴線に触れるほどの羞恥だったのだろう......と、思いたい...。
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さて、そんなことがあったものの、ユウたちは漸くジルト達のいるところまで来ることが出来た。...が
"ガアァアアアアア!!"
「くそっ!このやろっ!」
"グルアァアアアアア!!"
「ジルト隊長!危ない!」
「なっ!?」
と、まさにその瞬間ジルトが一体の飢餓狼に襲われそうになっていた。それをいち早く認識したユウは、パーティーから飛び出し、
「オラァアアアアア!!」
といった感じで、飢餓狼に向かって跳び蹴りをかました。
そんな飢餓狼は、死角からユウによる(無慈悲な)一撃を受け、その身を他の飢餓狼も巻き込みながら吹っ飛ばされていた。
「っと。...大丈夫でしたか、ジルトさん?」
「...今のは、ユウが...?...だいぶ吹っ飛んでいったが...」
「まぁ...不意打ちでしたから、ね...」
ジルトは、先ほど飢餓狼を吹っ飛ばしたのがユウによる一撃であることを知り、かなり驚いた様子だった。そんなジルトからの問いかけにユウは、若干恍けながらも納得しそうな理由を挙げた。......が、一部始終を見ていたユウのパーティーメンバーは、
(なにが "不意打ちでしたからね" だ(ですか)...)
と、内心ツッコんでいたのは言うまでも無いことだ。...まぁそのことは置いておいて...。
現在飢餓狼と交戦中の騎士と冒険者は、全部で50名。その数に対して飢餓狼はと言うと...
「なんだ、これ...。確実に、百なんて数じゃねぇぞ!?」
というベイジからの言葉通りに、今見えているだけでもその数は百よりも遙かに多く感じられた。
そんな光景を見ていたユウは、心の中でリンに話しかけていた。
(リン、やるぞ...)
〈?いいんですか、主?ここだと他の方々に、ボクの能力がバレてしまいますよ?〉
(いいんだよ......使うのは"一時停止"だからな...)
そう言ったユウは、このままではいずれ誰かが飢餓狼の餌食になってしまうと思い、それならば一時停止の能力を使って、その間に全てを倒しきればいいのだと考えた。だからこそ、リンの存在がばれる心配はないのだ。
〈それなら大丈夫ですね!では...〉
"ポンッ"
ユウからの説明を聞きリンは、その身体をリモコンへと変えユウの右手へと収まった。その行動は、できる限り誰からも見えないように努めたつもりだったが、
「ユウ、突然魔具を取り出してどうしたんだ?」
と、セリアに気づかれてしまったようだ。ちなみにセリアは、昨日の内にユウからリンのこと、リモコンのことを聞いていたため、ユウが右手に持っているリモコンが魔具であることを知っていた。そんなセリアの下へユウは近づき、
「...セリア、少しだけ待っててね」
と呟き、ユウからのその言葉を聞き "えっ?" と言ったセリアをよそに、ユウは一時停止のボタンを押した。
"シーーーーーーン......"
その瞬間、その場の時間...いや、空間が固まった。そしてユウは、
「そんじゃ...、発散させるか!!」
と言って、停止している飢餓狼達の殲滅に向かった。この空間では魔法が現象として発現しないため、持続性のある自身の憂さ晴らしによって、一体ずつ倒さなければならないので時間との勝負となるが......ユウにはそんなこと関係ないだろう...。
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ユウが一時停止を使ってから、約五分。現在見えている飢餓狼の殆どに、自身の拳や蹴りをヒットさせ終ったユウは、今回最大の疑問点である事柄に視線を向けた。それを解決するためにも
「 "再生" 」
と呟き、今まで固まっていた空間の動きを再開させた。それと同時に、
"ドッパァアアアアアアアアアアン!!!"
という地響きにも相当しそうな程の音を出して、飢餓狼が "絶命した"。
そんな光景を目の当たりにした騎士や冒険者達は、先ほどまで自身が戦っていた相手がいなくなったことに喜ぶ者、脱力する者、未だに周囲を警戒する者がいた。...が、そんな状況の中ユウだけはある人物に向けて、リモコンを向けていた。
そしてあるボタンを押しながらユウは、心の中で
( "問い。あの原因は何だ?" )
と念じた。
発動させたのは "字幕表示" 。
対象は、 "ザルバ" だ。
『個体名ザルバに寄生蜘蛛が寄生しており、対象の脳から行動を支配している模様』
( "...寄生蜘蛛って、何だ" )
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『寄生蜘蛛』
魔物。通称"支配する蜘蛛"。固有魔法は"思考支配(ソートジャック)"といい、寄生した対象の脳へと働きかけ、思考を操作する能力を持つ。
思考を操作する際、脳の全てを操作することは出来ないため、対象が考えたことに干渉しその内容を部分的に上書きする。例として、"魔物を切る" という思考を魔物の部分だけ人へと変換し、 "人を切る" という思考へと変えるのだ。
また、"殺したくない" という思考も上書きされることにより、 "殺そう" という思考へと変えられるのだ。
この魔物は、通常精神が安定していない者に寄生し、そこにつけ込むことで支配する。
なお寄生された者を解放するには、脳そのものから寄生蜘蛛を分断しなければならない。...が、思考回路に直接触れている寄生蜘蛛の糸を無理矢理分断すると、対象者の脳に被害が出る可能性があるため、あまり好ましくない。
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そんな内容を見たユウは、その事実に愕然とした。
仮に字幕通りなら、ザルバはもう
「元に戻らない...」
そんな言葉がユウの口からこぼれた。...実際、そこまで話したわけではないし、ザルバとしてもセリアと一緒にいた書きという認識しかしていないだろう。
それでもユウは、昨日セリアに向かって堂々と告白してきたこの男が、とても眩しくて、同時にその性格に嫉妬していたのだ。そのため、そんな漢がこんな形で実質死んでしまうことにユウは、酷く胸が締め付けられる気持ちになった。
「いや~、魔法...かどうかはともかくとして、凄かったなぁ、さっきのは。なぁ...... "召喚者" ?」
ユウがザルバの現状を理解し、どうすることも出来ないことを嘆いていると、そんな言葉を放ちながら誰かがやって来た。
この後ユウは、この世界における自分という存在をその人物から聞くこととなる。
《問題》『遠隔操作では、何が操作できる?』
だいぶ文章が荒れてきているので、感想や意見などがあれば助かります。内容はなんでもいいので、何か気づいた点がありましたら、是非お願いします。




