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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
32/64

No.030 ユウの魔法と見えてきた真実

前回の答え『雷魔法』です。



 さて、ユウがセリア達の下から離れた理由は何だったのか。それには、ユウが先ほどの飢餓狼達が現れる瞬間よりも少しだけ遡る。



==========




 ユウが自身に話しかけてきたクックとサーシャからの話を聞いていると、クルスの森に入る際に自身に予め発動させていた物理魔法の中級強化魔法 "能力強化" によって上昇していた五感の能力の内、嗅覚と聴覚に反応があった。

 それを辿ると、どうやら自分たちの今いる方向へ、飢餓狼とは別の大規模な魔物の群れが迫ってきていることを察知した。



(う~ん...この数は、流石に囲まれるわけにはいかないよな...。俺一人だけならなんとかなると思うけど、この五人だと少し危険かもしれないな...)



 そんなことを考えながらユウは、現在前方から迫ってきている数体の飢餓狼とあと10分もしないうちに着くであろう魔物の群れを比べ、後者を選択した。ユウの考えているとおり、このままでは恐らく先ほどから迫ってきている魔物に囲まれてしまうのは明らかであった。


 そして、セリアに対し少々強引ながらも、一時パーティーから離れていったのだ。



==========





 その場を離れる際、セリアに対して少々強く言いすぎてしまったことにユウは、少しだけ後悔していた。...が、それでも



(まぁ、あのままあそこにいてセリア達に危害が及ぶより、俺が速攻で片した方が良いからね。それにあそこだと、セリアはともかく、他の皆にリンの存在を見られるのはまだ抵抗あるしな......)



と心の中で呟きつつ、現在迫ってきている魔物の群れがいる方向へと飛翔者を使いながら、とてつもない速さで空を移動していた(流石にリーズやジョンほどではないが...)。

 その理由として、森の中にある障害物の影響で十分な速さが出なかったり、他の冒険者に見られる可能性の危惧などがある。



「...リン」

〈はい?何ですか、主?〉

「...待たせたな。そろそろ戦闘開始だ。準備してくれ」

〈っ!...了解です!〉



 ユウが空中を飛びながら、自身の身体に同化しているリンに対してそう呼びかけた。するとリンは "待っていました!" と言わんばかりの声を上げて、ユウの右手にその姿をリモコンへと変えて、顕現した。


 そのリンを自身の左手へと持ち替えユウは、漸く目視が可能になった魔物の群れに対しリモコンの"字幕表示エグテンス"を発動させた。

 

 ユウは、発動しながらもその正体になんとなく気づき



「...また、刃物蟻カッティングアントか...」



と言っていた。しかし、リモコンの能力の一つ、画面表示メニンドゥによる半透明の画面に表示されていたその魔物の情報を見てユウは、すぐさまその考えを変えるのだった。

 その理由は、そこに表示されていた内容が刃物蟻とは微妙に違う魔物であったからだ。

 

 その魔物の名を見てユウは、



「..."統率蟻リードルアント"...」



と呟いていた。



==========



統率蟻リードルアント

 魔物。通称"蟻の支配者代理"。蟻型の魔物は幾つか確認されているが、その蟻たちの中には通常の蟻をまとめる統括蟻とその蟻をまとめる唯一の女王蟻クイーンアントが存在する。この魔物は、その内の統括蟻の方である。


 刃物蟻の統率蟻は、蟻の特徴である刃物・固有魔法とどちらも持っており、それらに加え自身が新たに持つ固有魔法"魔法刃マジックカトリー"があるため、刃物蟻の上位種とも捉えられているのだ。

 上記の固有魔法は、通常の刃物蟻がそれぞれ持っている刃物ぶきに魔力を注ぎ、各属性の魔法が纏われた刃物にする能力である。そのため、別の呼び名で"魔刃の蟻"とも呼ばれる。


 ちなみに、各統率蟻が持っている魔核によって纏う魔法は違ってくる。



==========



「へぇ...。そんな蟻が混じってんのか。...面白そうだし、試しに接近戦でもやってみるかね...」



 そう言ってユウは、眼下に見える多数の刃物蟻と何体かの統率蟻に向かって降りていった。ユウとしては、いきなり全体攻撃の魔法で片付けても良いのだが、それではあまり味気ないと感じた。

 それに統率蟻が使う固有魔法は、魔力付与エンチャントに似ているため、少し興味が湧いたのだ。そうして刃物蟻たちの群れが来るであろう地点に降り立ったユウは、



「っと......さて、どう戦うか...」



と、これからの戦いをどうするか悩んでいた。今まではただ単に "殴る・蹴る" で終らせてきたが、流石に上位の魔物相手にそんな簡単な方法で済むわけがないと感じていたユウは、



「昨日は一日中憂さ晴らしで発散できてなかったし、折角だからそれ使って倒すか...」



と、今後の方針が決まったようで、憂さ晴らしを発動させた。

 


『この憂さ晴らしは、ユウ自身の持つ"溜め込む者"という付与名称によって溜まった、日々のストレスを攻撃力に変化させるものだ。

 その威力は、溜まっている量や発散させたストレスによって強弱を調整することが出来、その発散させたものは持続し、何度でも使用可能である。』



 ユウがその憂さ晴らしを現在の約三割ほどで発動させ、向かってくる刃物蟻たちを待ち構えていた。そして




"キシャァアアアアア!!"




と、そんな奇声ともとれるような鳴き声と共に、複数の刃物蟻たちが迫ってきた。勿論その中には、少ないながらも統率蟻が混じっている。

 見たところ、統率蟻は刃物蟻の一・五倍ほどはありそうで、今見えているだけでもその数は三体程度でしかない。それに比べて刃物蟻は二十は軽く超えている数だ。


 しかしユウはそんな数など全く気にしないかのように、先頭にいる刃物蟻に向かって全力疾走で接近した。そして、その刃物ぶきが振り下ろされる前に蟻の腹部辺りへ自らの拳を振り抜いた。



 すると、殴られた刃物蟻はその身体を後方へと吹っ飛ばされ、木に直撃した瞬間その身を木と共にばらばらに飛び散らせた。

 その光景を一瞬確認したユウは、そんなことなんでもないかのように次の相手を見据えていた。その相手は



"ギギャアァアアアア!!"



と喚きながら、ユウへと肉薄してきた。それは刃物蟻の中にいた統率蟻の内、刃物ぶきはさみの奴であった。

 その蟻に対しユウは



「っ、よっしゃ!来いやーーー!」



と叫んで、振るわれてくる攻撃に対して構えていた。字幕表示通りなら、あの鋏に魔法を纏わせて攻撃してくるはずだ。すると統率蟻は、自身の鋏を氷で覆われたものへと変え、ユウに向けて攻撃してきた。

 

 ユウがその攻撃を躱すと、ユウの背後にいた刃物蟻にその鋏が振るわれた。そして、その身体を半分に切断された。......不運な蟻であった。



 そんな蟻の様子を見ていたユウは、 "同族でもお構いなしなんだな..." と、やられた蟻に対して少しだけ同情していた。

 しかし、そんなことを考えていたのも一瞬で、切断された刃物蟻の様子が徐々に変化していったのだ。ユウはその光景に少しばかり驚愕していた。



 なぜならば、切断された蟻の胴体が切断面から徐々に凍っていくのだ。それも、ほんの数瞬の間に...。


 ユウがその光景を眺めている間にも、その現象の犯人である統率蟻はユウへと再び攻撃してきた。それをユウは難なく躱したが...、先ほどまでユウがいた地面が蟻の氷の鋏に少し触れただけで、次第に土であったところを氷で覆っていった。



(なるほど...鋏で切るだけじゃなくて、触れたものを凍らせる鋏か...。これは、あんまり素手じゃない方が良さそうだな...)



 そう感じ取ったユウは、素手から何か武器での攻撃に切り替えようとして、左手に持ったリモコンを操作した。発動するのはリモコンの能力"入力切替ロールシフト"で、入力4の収納空間である。


 ユウはそこから、長めの棒を取り出した。ちなみに材質は鉄なのだが、リーズが用意してくれたもののため、ユウも本当なのか知らなかった。......割と大雑把な性格のユウだから仕方ないのだが...。



 まぁそれはともかくとして、ユウはその鉄棒に対して自身の憂さ晴らしの魔力を付与させた。これは、ジョンとの特訓中に、ユウが会得したものであり、魔術士の"魔力付与エンチャント"と原理は同じである。



「さて、それじゃあ......覚悟しろよ...」



 ユウがそう言って、統率蟻に自身の武器てつぼうを向けると、向けられた統率蟻はユウの言葉を理解していなくとも、自身に発せられた敵意を感じ取っていた。そしてユウへとその氷の鋏を開きながら、まさにその瞬間切り裂こうとしていた。

 しかしその攻撃は、ユウの持っていた鉄棒の一振りが鋏にぶつかって砕けることで阻止され、さらに



「っらぁあ!」



という、ユウの鉄棒による次の攻撃が統率蟻の身体にめり込んだことで、統率蟻は逆に自身の胴体を切断...というより、分断された。つまり、 "死んだ" 。



 ユウが先ほどの統率蟻を倒したことで、周囲の刃物蟻たちは士気を下げ...



"キシャアァアアアアアア!!"



...るはずなど無かった。まぁ、人ならまだしも種族ですらない刃物蟻にとっては、仲間が殺されたことなど考える頭すらないのだろう。

 

 ユウはそんな刃物蟻たちの様子を見て、



(やっぱり、一体一体倒すのは時間がかかりすぎるな...)



と考えた。

 実際周囲には、徐々に集まってきた刃物蟻の群れが出来上がっており、もしかしたらセリア達の方へと何体か向かってしまう可能性がある。だからこそユウは、一度鉄棒を入力4にしまって次の行動に切り替えた。今度は魔法による全体攻撃で、片を付けるようだ。



「リン!」

〈はいはい!主。ボクならもう準備は出来ていますよ!さぁ、早くあの蟻たちを殲滅しまsy〉

「いや、それは後だ。まずは俺一人の力でどれだけ出来るか試してみるから、もう少し待っていてくれ」



 ユウからの呼びかけに意気揚々と喋り始めたリンだったが、ユウからの言葉を受けて "...了解です..." といった感じに、残念そうにしていた。...まぁリンが加わったら、ただでさえ高威力の魔法が使える魔術士ランクが"熟練者プロナー"であるユウの魔法が、だいぶえげつないことになり周囲の環境が変わるかもしれないが...。


 そんなリンとの合同魔法は後でやるとして、まずはユウがどれほどの魔法を使えるかである。ユウの得意魔法は火の中でも特に"爆破魔法"であるが、今回は別属性の魔法を使うようだ。

 それも、魔術士の能力の一つ"複合魔法"による風と水の複合魔法 "雷魔法" であった。ユウは魔法を発動する際、イメージを確立するため技名を叫ぶ。


...その名も、 "雷壁波らいへきは" 。




「 "雷壁波" !!」



 ユウは、自身の両手に雷へと変化させた魔力を纏わせ、その両手をまるでひっかくようなかぎ爪の形にした。そして、そのまま空中を右上から左下まで斜めにひっかくように振り下ろすと、



"ズザアァアアアアアアアア!!"



という音と共に地面を抉る巨大な雷の壁が、刃物蟻目がけて放たれた。


 "雷壁波" 。この魔法は本来、盾として防御を目的とする魔法なのだが、ユウはその壁を敵にぶつけることで、攻撃としても使えることに気づいたのだ。さらに言うと、この魔法は防御用なので中々に巨大なものになり、全体攻撃に向いていたのだった。


 そんな雷の壁が刃物蟻に向かっていくと、壁が通り過ぎていった場所には、蟻たちの無残な死骸が散乱していた。

 それでも僅かに残っている蟻はいるようで、その蟻たちは残りの蟻総出でユウへと攻撃を仕掛けてきた。



「おぉ~、中々に高威力だったな。...やっぱり、憂さ晴らしの力はすげぇなぁ...」

〈主!主!次はボクですよね!?ね!?〉

「分かってるって。...さて...」



 ユウは、自身が放った雷壁波の威力に若干驚きながらも、脳内で響いているリンからの催促の言葉に対し、ちゃんと覚えていることを伝えた。そして、どうするかを一瞬だけ考えると



「...よしっ!」



と言って、残っている蟻がすべて見える位置まで移動した。そして、そこでリン(リモコン)を蟻たちの方へと向けると、リモコンの"緑のボタン"を押しながら



「"竜巻ウィンドミキサー"!」



と叫んだ。

 するとユウが左手に持っているリモコンの先から、とんでもない風圧が飛び出してきて竜巻を起こした。それは、残っている刃物蟻たちすべてを飲み込み、その規模をさらに増していく。


 そこへユウは、地面に右手をつきながら "生成クリエイト" と呟き、そこから様々な刃物を作り出した。その材質は土でありながらも、強度はユウの強化魔法により鉄に近い硬度となっていた。


 その刃物ぶきたちを、現在進行形で渦巻き続けている竜巻へと放り込んでいった。すると、



"ズシャッ、ブシャッ、キシャァアアアアアァァァァ..." 



という音が聞こえてきて、同時に大量の血しぶきが飛んできた。それを見てユウは、 "蟻なのに血は赤いんだ..." というどうでも良いことを一人感じていた。......もし、今の惨状を言葉にするのなら、 "切り刻む渦(ミンストルネード)" と言ったところか...。



 とまぁ、そんなとんでもない魔法の連続行使を受けた刃物蟻たちは、......言うまでも無く、まさに "死屍累々" な状態で、全滅していた。

 そんな死体だらけの場所に立っているユウの姿は、殆どの人が見ても "殺される..." と、別に殺気を向けられてもいないのに、そんな考えへと至るくらいには恐ろしかった。



「いや~、凄かったなあの魔法!昔見たアニメの中で、どっかの三刀流が使った竜巻みたいだったぞ!」

〈?まぁ、なんとなく記憶にあるので分かりますが......それにしても、ホントに凄かったですね...。見てください、周辺の木々が根こそぎ消失してますよ...〉



 ユウが凄いギリギリの発言をしたが、リンにはあまり伝わっていなかったようだった。それよりも現状注目すべき点は、今しがたリンが言ったように周囲の死体以外のところだ。

 リンの言う通り、木々がユウによる魔法によって、ほぼほぼ壊滅状態になっている。その範囲は、およそ半径五十メートルほどであった。...中々に規模がでかかった。



「しょうがねぇだろ?流石に、ここまで威力が出るとは思わなかったんだから...。それでも、今後大規模の魔法を使うときは周囲の確認をしてからにするか...。最悪、他の冒険者や騎士たちまで巻き込んでたかもしれなかったからな...」

〈そうですね...。...ボクも、今回こんな惨状にまでなるとは思いもよらなかったので、今後の課題です...〉



 そんな思い思いの反省点を挙げていった二人は、予想以上に早く終ってしまった現在の状況に嘆息しつつ、その場を後にした。








 ちなみに、統率蟻や刃物蟻から出てきたと思われる魔核は、ユウがちゃんと回収し、"入力切替ロールシフト"の収納空間に入れていった。魔核の内訳は、こぶし大の魔核が青:1、緑:2。そして、小石大の若干濁った茶色の魔核が数十個であった。

 



==========




 そんなことを経て、ユウはセリアたちの方へと戻ってきたのだった。


 そして話は、前回の状況に戻る。



「ユ、ユウ?随分と早かったな。まだ十分程しか経っていないが...」

「ん?...あぁ、ちょっとね...」



 セリアからの問いかけにユウは、流石に本当のことを全て話すわけにもいかず、少々どもってしまったが、そこにベイジが助け船を出してくれた。



「...まぁユウのその様子を見る限り、どっかで別の奴と戦ってたんだろ?...怪我がない所を見ると、だいぶ余裕だったみたいだな...」

「えっ?なんで分かるんですか?」



 ベイジからのそんな言葉にユウは驚くと共に、なぜそんなことが分かるのか問いかけた。...ユウは、現在の自身の姿を把握していないため、仕方ないと言えば仕方ないのだが...。...ボケすぎである。


 そんなユウの反応にベイジを含め、パーティーの殆どが呆れた表情をしていた。そのことにユウは、内心少しばかり憤慨していたが、そのことをわざわざ言うほど器は小さくないのだ。......と、本人は思っているようだった。



 そんな会話をしているときに、突然セリアの表情が僅かに曇っていた。ユウがその僅かな表情の揺らぎに気づき、セリアに



「どうしたの、セリア?」



と、問いかけた。実際何かの気配がしたわけでも無ければ、予想外の事態に陥っているわけでもない。それなのに一瞬とはいえ、苦しげな表情を見せたセリアにユウは疑問を感じたのだった。そんなセリアは少しだけ時間をおき、ゆっくりと口を開いて言葉を紡いだ。



「...今しがた、ジルト隊長から連絡が入った。...なんでも、飢餓狼の群れを発見したらしい...」

「マジか!それなら早く行って、加勢しようぜ!」



 セリアからのそんな報告に、ユウではなくダイマが返した。


 なぜセリアがそんなことを知っているかというと、兵士の上位名称である騎士は兵士が持つ"団体行動"によって、戦場での簡易連絡が可能なのだ。先ほどはそれを使い、そうしてジルトからの連絡を受け取った。



 ダイマからのそんな言葉に、ユウも含めた他のメンバーも同様に頷き、今すぐにでも向かおうとしていた。...しかし、続いてセリアが発した言葉によって、その足は"ピタリッ"と止まることになるのだった。



「だが、その群れの先頭に......ザルバ殿がいたらしい...」

「「「「「ザルバ(さん)?」」」」」



 セリアの口から出てきた人物の名は、そこにいる全員が聞いたことのある名前だったようだ。ユウですら知っている程であった。そして、さらに続けたセリアの言葉に、全員が愕然となったのだった。





「あぁ...。そして、不審に思った兄さん...ガルシオ殿が話しかけようと複数人で接近しようとしたら、ザルバ殿が......兄さんを........."切った"......らしい...」



 セリアから放たれたその言葉は、とてもではないが信じられるものではなかった。...しかし、あのジルトがそう言ってきたということは......そういうことなのだろう...。



(あの人が...ガルシオを...)



 ユウは一人、昨日会ったばかりのザルバを思い出し、ジルトが伝えてきた事実の理由を考えてみたが......意味が無かったようで、だいぶ悔しげにしていた。だからこそ



「まずはジルトさんの所まで向かおう。...ガルシオは、まだ生きてるんでしょ?」



と、セリアに問いかけてきたのだ。その問いにセリアは、



「...あぁ、そこは大丈夫だ。...あれでも、私の自慢の兄さんだ。そんなあっさり死ぬほど柔な鍛え方はしていない」



と気丈に振る舞っていた。しかし、その心の内は心配で仕方なかったのだろうことが窺える。そんなセリアの心情を、少しだが察したユウは



「なら、早く行こう。ザルバさんだって、どうしてそんなことをしたのか気になるしね...」



と言って、セリアに急ぐよう促した。セリアは



「...ああ、そうだな!では、急ごう。ジルト隊長からの連絡によると、ここから北に少し行ったところで現在、飢餓狼との戦闘を行っているらしい」



と言いながら、自身の足を北へと向けて駆け出した。ユウたち残りのメンバーは、そんなセリアの後ろをついて行くかのように追っていった。



 そんな中ユウは、一人内心今までのことを考えていた。




(今まで遭遇したことの無かった魔物、飢餓狼の異常な数の群れ、そしてザルバさんの行動...。...明らかに、俺がこっちに来てからおかしくなってるな...。もしかして...俺が原因なのか?)



 そんな思考に陥っていたユウは、一先ずその考えを保留にし、まずはジルト、ガルシオの下へと急いだ。








 ...そしてユウは、今から向かう先で魔物の本当の恐ろしさと、リモコンの能力である "遠隔操作リモコン" の力を目の当たりにするのだった。



《問題》『サーシャの名称は何?』

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