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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
30/64

No.028 依頼と出発

前回の答え『常に空腹状態のため、同族でも構わず襲うから』


 

 激動の一日を終えたユウ達は、なんやかんやあってガルシオから言葉をかけられるまで完全にその存在を忘れていた。そのため、それぞれガルシオへ謝りながらも、今後の予定へと話を元に戻して(主にガルシオが)いたのだ......が、



 そんな雰囲気の中その人物の訪問は突然のことであった。





「さて、それじゃあ今日の予定についてだg"コンコンコン"...ん?誰だこんな朝早く...」



 そう切り出し今日の予定について話し始めようとしたガルシオだったが、それは唐突に叩かれたドアの音によって遮られた。

 ガルシオの言う通り、今の時間はおそらく地球でいうところの"八時半"くらいであり、確かに訪問者がいてもそこまでおかしくはないが、それにしては早すぎるような気がする。

 実際ガルシオとしても、この村でそんな早くに訪ねてくる者に対し、自身としては心当たりが殆どないようだった。


 そんな中ユウは、その音に 



(...何か、嫌な予感がすんだけど......気のせいか?)



と感じていた。すると外から、誰かの声が聞こえてきた。



"悪い、俺だ。ジルトだ"

「?...ジルト隊長ですか?...少し待っててください、開けますんで... "ガチャ" ...どうぞ」



 ガルシオが声の人物に少しばかり疑問を感じながらも、今まで座っていた席から立ち上がった。そしてそのままドアへと向かい鍵を開けると、外から声をかけてきた人物を家へと招き入れた。



 その人物はガルシオの予想通り、ジルトであった。




「悪いな...」

「いえ、...ですが、こんな朝早くに一体どうしたんですか?」



 そんなことを言いながらガルシオは、ジルトの訪問に疑問を感じていた。実際ジルトという人間は、予め連絡をしない限り突然の訪問というものは滅多にしないのだ。それらは仲間の騎士達にも任務上徹底しており、基本は報告をしてから行動することを義務づけている。


 だからこそ、そんな考えを持ったジルトがこんな時間に連絡も無しで訪ねてくることに、ガルシオは疑問と同時に一抹の不安を感じていたのだ。



「あぁ、そのことなんだがな......今回はユウに聞きたいことがあってきたんだ」

「......へ?俺、ですか?」



 ガルシオからの問いに若干言いづらそうにしながらも、ジルトは自身の目的を伝えた。その言葉にまさか自分のことだとは思わなかったユウは、反応が少し遅れた。しかしジルトはそんなユウの反応に一々ツッコまずに、話し続けた。



「あぁ、実はな......冒険組合からユウへ確認して欲しいことがあるって頼まれたんだ」

「...ん?冒険組合が...俺に?」



 ジルトからそんなことを言われたユウは、"昨日のこともあるので今日から早速ジルトによる尋問でもされるのか..." と思っていたのだが、その予想は外れ実は冒険組合からの頼みであることを伝えてくれたらしい。

 ...そのことでさらに困惑の色を示したユウだったが、その疑問は次のジルトからの言葉によってある程度理解できた。



「まぁ、まずは事情から話すか...。...確認だがユウ、お前はクルスの森からこの村に来たんだよな?」

「?はい、昨日お話ししたように、俺はクルスの森を通ってここまで来ましたけど...それがどうしたんですか?」


 ジルトからのそんな質問に若干困惑気味になったが、それは既に伝えていたことでもあるためそこまで言い淀むことなく答えた。実際のところ、だいぶ困惑していたが...。


 すると、ユウからの確認が取れたジルトは話を続けた。

 


「実はな...昨日クルスの森に飢餓狼撃退の依頼を受けて出発した奴らの内一人が、今朝方冒険組合までやって来たんだ。...なんでもそいつの話によると、その飢餓狼が百体近い群れで襲ってきたらしい...」

「ひゃ、百体...ですか...」



 そんなジルトからの言葉に、ユウは少しばかり驚いていた。

 なぜなら、飢餓狼という魔獣は基本単体で行動し、群れと言っても精々十体ほどの群れしか作らない。それは、飢餓狼の特徴でもある "常に空腹状態" のため、別種だろうが同族だろうが構わず襲ってしまうからだ。

 飢餓狼自身が持つ固有魔法は強力なのだが、単体のみならば複数で囲むことにより、そこまで大変な相手ではなくなるのだ。


 しかし、そんな魔獣が百体もいるとなると、すべてを一度に殲滅するような攻撃でもしない限り、たった一つのパ-ティー程度では、逆に囲まれて全滅してしまうだろう。それほど、数の多さというのは十分に危険なのである。



「しかし、その人は良く逃げ切れましたね。普通なら襲われて......最悪、死んでいてもおかしくなかったのに...」

「あぁ、そうなんだが...。その生きてた奴の話によると、なんでも空から  "そいつは違う、追うだけ時間の無駄だ"  って誰かが言った瞬間、今まで追ってきた飢餓狼たちが動きを止めて、追ってこなくなったんだとよ。...どう思うよ、ユウ」



 そんなジルトからの報告を聞いてユウは、恐らくその空から声をかけた人物が、飢餓狼達に命令したことをなんとなく考えた。...が、流石にそのくらいはジルトや冒険組合の人たちだって考えつくと思い、それは自身の心の内にのみ留めておいた。

 実際ジルトが聞きたいのはそのことではなく、ユウがその森から来たと言うことから、何か知っていることがないか確認に来ただけなのだろう。


 そう思ったユウは、



「...そうですね。太陽が沈んだのが二回だったので二日以上あの森にいたとは思います...が、あの森の通常がよく分かりませんでしたから、現状何ともいえませんね...」



と、返答した。...本心では、 "あそこの森の魔物や魔獣が弱すぎて、そんなことを気にしたことは無かったなぁ..." と思っていても、流石にそんなこと口に出来る"わけがない"...。だからこそ、ユウはあの森のことをよく知らないという、都合の良い言い訳をかまして誤魔化していた。

 まぁ、特に伝えるような事柄がないのも事実であるし、ユウとしても、先ほどの "飢餓狼百体" という情報には素直に驚いていたのだから...。



「そりゃそうか。あんな森で二日以上も彷徨っていたんだから、一々んなこと気にしてる余裕なんて無いのは当たり前だよな...」

「そ、そうですね...」

「?...まぁ、そのことはこれでいいとして...。今回は他に、そんな森を抜けてきたユウにある頼みがあってきたんだ」

「...へ?」



 そう言ってジルトは、ユウに対してある提案をしてきた。それは、



「ユウ、お前"冒険者"になって組合からの依頼、受けてみるか?」



というものだった。それはユウに、"再びあの森へ行き、事実を確かめてくれ" というものだった。それに対し、今まで黙って聞いていたガルシオとセリアは、少々訝しんだ様子でジルトに問いかけた。



「ジルト隊長?あの森の調査なら、私たち騎士がやった方が良いのでは?」

「そうだぞ、隊長。いくらユウがクルスの森を抜けてきたと言っても、あの森は十分危険なはずだ。...それに、さっき隊長が言ってた飢餓狼や正体不明の奴がいるかもしれないんだろ?だったら、余計俺たちやもっと上位の冒険者達を集めた方が、安全だと思うんだが?」



 そう言ってきたゲートルト兄妹に対して、ジルトは



「だから、あくまで提案してんだよ。さすがに、昨日今日会ったような奴相手にんなこと強制できねぇっての...」



と言いながら再びユウに向き合い、確認を取るような視線を向けてきた。それに対しユウは少しばかり考えていた。しかしそれもほんの一瞬であり、直ぐにジルトへ向き直り、



「...まずは、その生き残っている人から事情を聞きましょう。それにどのみち、ジルトさん達騎士の方々も向かうつもりで聞いてきたんでしょう?」



と言って、少しばかり肩をすくめていた。

 ユウがそう言った理由は、仮に依頼を受けた人たちで生き残りがいた場合は救助となるので、そうなると騎士達による捜索も行われるのだ。そのことを理解していたユウは、だからこそ一度現状を把握してから返事をしようと考えていた。もしかしたら意外と今回のことは、自分はそこまで必要ないかもしれないと思っていたことも事実であるから...。



「...そりゃそうだろ。そこの兄妹が言うとおり、俺たち騎士が主体となって調査には向かう...が、あの森は広すぎるし、何より人手が少ねぇからな。

 そんなわけで、今回あの森を抜けてきたって言うお前に対して、組合からも声がかかったんだよ」

「...なるほど、...ではまずは組合に向かいましょう」



 そう言ってユウは席から立ち上がると、特に準備するものがないためそのままドアへと歩いて行った。その姿を見てジルトは自身もドアへと向かっていき、次いでゲートルト兄妹にも直ぐに準備して組合まで来るように命じた。


 そんな様子を見ていたユウはふと、



(あれ?そういえばリンは?)



と、疑問を感じていた。確か、テーブルの上に座っていたはずなのだが...。



〈呼びましたか、主?〉

(なんだ、もう同化してたのか?)

〈はい!ドアをノックされた時点で、見つかってはいけないと思いすぐさま主の中に入ったのです!どうです、ボクだってちゃんとするときはするんですよ?〉



 そんなことをユウの脳内で可愛らしく威張りながらも、若干物欲しそうな目(イメージ上)でこちらを見てくるリンにユウは、



(あぁ、流石だなリン。後で頭を撫でてやろう)



と、だいぶ上から目線の言葉を伝えた。...が、リンにとってそれは"ご褒美"でしかないので、当然



〈なっ!?や、約束ですからね、主!......はぁ~、あの主の方からそんなことを言ってくれるなんて......これは、ゴールインまであと少しですね!〉



と、随分興奮した様子で喋っていた。......まぁ、ユウとしてはいつものようにスルーである。なぜかって?......気にしたところで、変わらないじゃないか...。





「さて、漸く着いたけど......なんか、随分と人が多いですね...」



 ユウ達が冒険組合まで来ると、屋内には昨日と比べたら随分と多くの人々で埋まっていた。どうやら、だいたいの人たちが組合からの依頼に参加しているようだった。現在時刻は、午前十時より少しばかり早いくらいだと思われるが、それでもこの数は随分と多い。

 そんなユウにジルトは、



「まぁ、事情が事情だからな。組合やそもそも村自体としても、あんまり看過できるもんでもねぇよ...」



と、肩をすくめながらそう返した。実際ジルトの言う通り、それだけ飢餓狼が百体という情報は看過できるものではなかったのだろう。その言葉を聞いたユウは心の中で  "...よしっ"  と、意気込んでいた。



「ん?どうしたユウ?」

「いえ...。...ジルトさん。俺、今回の依頼、受けますよ...」

「......そうか、頑張れよ...」

「はい...」



 そんな言葉を言ってユウは、今回ばかりはあまり楽観視しない方が良いことを感じ、既に森へと行くことを心に決めたようであった。その意思をジルトに言って、ジルトから激励の言葉を貰ったユウは、これからのことに対し気を引き締めていた。



「んじゃまずは、依頼を受けられるように組合の方に冒険者として登録するのが先だな」

「はい、了解です」



 ジルトからそう言われユウは、昨日セリアから離れたときに字幕表示エグテンスにより調べた内容に基づき、組合にある総合窓口へと向かった。そこで登録を済ませたユウは

 


(これは俺自身のことだけじゃなくて、この村にも関わることなんだ。...正直、まだたった一日しか過ごしていないけど、その一日でリン以外にも少しだけ守りたいと思った人が増えたしね。

 ......やるか!)



と、密かに今回の依頼に闘志を燃やしていた。セリアにガルシオ、ジルトやシルビア。この村に来てから一日の内に、こんなにも色んな人たちにお世話になったのだ。

 今回の依頼を聞いてユウとしては、自身の手に負えることなのか判断してから決めるつもりではあったのだが、そんな考えは既に捨てていた。

 


 そんな思考を繰り広げていやユウの思考を、組合の出入り口の方に誰かが出てきたことにより、一度遮断された。

 ユウはその人物を確認するため、周囲の平均身長より10センチほど小さい自身の身体を呪いながら、前方にいる冒険者達の間をくぐり抜けていって、前へと進んでいく。


 

 ユウが前列のところに来たとき、漸くその人物が誰なのか判明した。その人物は、ユウが昨日会ったシルビアであった。



「皆、おはよう。...さて、ここに集まって貰った奴らは今回の依頼を受けてきてくれた奴だと思って良いかい?」

「シルビア殿、今は...」

「あぁ、分かってるさ、ウルド支部長さん。んじゃ前置きは無しで、本題だが...」



 シルビアが少しばかり前置きをしていると、少々焦った表情をしている"ウルド支部長"と呼ばれた人物から先を急ぐように言われていた。恐らくウルドはこの村の冒険組合の責任者であると思われ、その人物が焦り気味なところをミルト、今回の自体はそれだけ深刻に受け止められているのだろうことが分かる。


 そんなウルドからの忠告を受けシルビアは、話を切り上げて、本題に入った。



「飢餓狼が百体ほどで群れを成していると言う情報が入った。現段階ではまだ確認が取れていないが、それが事実だとしたら、今後あの森への立ち入りが危険となる。

 そこで今回、こうして大人数による調査及び見つけ次第に討伐という依頼を出させて貰った。これは、あたしが国に連絡を取って許可を頂いたものだから、報酬は期待して良いぞ?」



 そう言ったシルビアの言葉に周囲の冒険者は



「ぃよっしゃぁあああ!これはすげぇ期待できそうだ!」

「国からのお墨付きなら、多少組合に報酬がいってもかなりの額が貰えそうだな...」

「シルビアさん...今日も凜々しいなぁ...」

「シルビアおねぇさまぁ~~~、抱いて~~~!」



と、だいぶ色めき立っていた。......若干名、別の意味で色めいていたが...。



「それと今回は大人数でやるから、何組かに分けてそれぞれの組に騎士一人を配置する。その騎士達の指示に従って、飢餓狼の群れを見つけ次第、連絡を取り合って各個撃破で行く。...万が一それが出来なかったら、森から連れ出して平原へと出てきたところを......大人数で叩くぞ!」

「「「「おぉおおおおおおお!!」」」」



 そんな調子で冒険組合の中は、多くの者達による雄叫びに支配されていた。その声はまさに、これから戦地に赴く戦士達のようであった。


 そんな声を聞いてユウは、自身の気持ちをさらに昂ぶらせていた。













(っ!......耳、いって......ったく、熱くなるのもいいけど、もうちょい声抑えてよ......はぁ...)



......まぁ、誰しもそんなにテンション高めなわけじゃないもんね...。



《問題》『組合において登録は何処で行う?』

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