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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
28/64

No.026 激動の終わりと近づく足音

前回の答え

『告白してきたのは"ザルバ"』

です。



人間族アビス

 人間族の文化は魔法を主軸とする一方、他の種族よりも魔力や身体能力が劣っているため自分たちの脳を発達させ、魔法を効率よく使える高性能の魔具を発明していった。当然魔法の発動は魔人族よりも劣っているのだが、そこを自分たちの得意魔法である "物理魔法" を組み合わせることで魔具の原型を造り、精霊の力をより良く組み入れることが出来るようになった。

 そんなわけで人間族の文化は、魔具とともにあると言っても過言ではない。


 そんな人間族だが、個体数が一番多い種族でもあるため地域によっては独自の文化を持ち、その違いは別の種族であるかのように多種多様である。

 例えば大陸の北側の地域では、魔具を工業や商業といった地球で言うところの"産業革命"後の生活様式となっており、少々ゴツい感じの町並みが多いのが特徴だ。逆に南側では、魔人族の文化が少しだけ反映され魔法と魔具が混在し、地球の歴史で言う"中世"を感じさせる風景が広がっているのが特徴と言える。

 

 そんな大陸の中央部は北と南どちらの良いところも取り入れ、最も近代的な文化を構築しており、技術レベルも大陸一番である。



獣人族イビス

 獣人族は基本自然と一体化した生活をしているため、生活様式自体はそこまで近代的ではない......と言いたいところだが、そうとも言い切れない。

 実際五百年前までは、ほとんどの獣人族達は獣とあまり変わらない生活水準であった。そのため住んでいるところは、洞窟だったり木のうろであったり、良くても地球の縄文時代にあった竪穴式の住居とその後に誕生した木造の建物の中間的建造物を建て、そこに住んでいた。


 しかし、他種族との文化的交流を取るようになってから生活は一変した。その第一段階として、"住処"から"住居"へと住むところが変わり、木造でも遙かに快適な建物を造るまでとなった。それも、各種族で認識や考え方を共有するとともに使国を設けたため、獣人族にも他種族の知識や便利な道具が導入されていったのだ。


 そんなこともあり獣人族は、未だに自然と一体化した生活を送りながらもその中身は、人間族や魔人族と殆ど変わらないレベルまで発展していた。



魔人族ウビス

 魔人族は生活自体は人間族に似通ったところがあるが、微妙に違っている。その最たる理由が "魔具なのか魔法なのか" だ。

 若干わかりにくいので、例を挙げると、



『まず、そもそもの種族全体が持っている "核" の最大積載量が相当多い魔人族は魔具による補助を受けなくとも、自身の魔法で事足りるのだ。ましてや、人間族のように魔法を行使するのにわざわざ道具を作り出し、精霊の力を組み入れるのは手間であると考えていた。

 だからこそ、魔具は殆ど作らずに自分たちが直接使う魔法によって、生活を維持していた。実際その生活でも何ら不自由はなく、寧ろ物理魔法が人間族より劣っている魔人族では、魔具の生成自体が難しいことなのだ。』



と、こんな理由から魔人族の主体は魔具ではなく魔法なのだ。そして、人間族のように物を生成しないため、大規模な施設などは必要なく基本は自然が近くにあるような、地球における"中世"辺りの生活様式であった。

 それでも生活に便利な道具は、人間族との交流によって自分たちの生活にも取り入れているので、魔具自体には興味がないわけではない。



亜人族エビス

 亜人族には、。 言ってみれば、昔の獣人族と同じ暮らしをする者達と、今の人間族と同じ暮らしをする者達が混在しているのだ。

 例を挙げると、

 

『森の成長とともに自然と共生した生き方をする "森霊種ミルト" 。対して、鉱物を扱い様々な道具を生み出しそれらによって快適な生活を送る "山霊種ドルト" 』


と、二つの種で生活の仕方が違う。それなのに同じ大陸で生きており、同じ種族を名乗っているのは中々に珍しい。それだけ亜人族は、様々な考え方を持った者達が共存している種族なのである。

 



 そんな様々な考え方を持つ者がいる中、亜人族の中で出てきた "種" と言う者達について説明しよう。


『種』

 "種"とは、幾つかに分けられた種族の中でも、容姿や性質によって自然と分けられていたものである。所謂地球でいうところの同じアジア民族でも、"日本人" と "中国人" といった具合に分けられているのと一緒といった感じだ。


 それが多く存在するのが亜人族であり、先ほどの二つに加え"蜥蜴種ザードル"・"蛙種フロス"・"半魚種フィーフ" 等々。さらに虫と人間族との間の存在もいるわけで、種で分けると区別がつかなくなるため "昆虫種トルート" と、まとめて呼ばれている。


 そんな多くの種だが、勿論獣人族や魔人族、そして人間族にも亜人族ほどではないが存在している。だが人間族の場合、その存在する種は少数部族と呼ばれ一国程度の規模しかいない。

 ちなみに人間族の中で一番多い種(と言うより部族)は、地民族アーシスと呼ばれる者達で、大陸の95%程を占めている。


==========


 とまぁこんな内容であったが、これでもこの書物には人間族がまとめたものであるため、別の種族が書いたものだと微妙に食い違いがあったり、さらにはこの本に書かれていないものまで載っている可能性があるため、ユウとしてはいずれ全種族が書いたものを見てから、この世界イリスを理解していきたいと思っていた。


 そしてユウは、今読んでいる『名もなき英雄』と言う本を丁度読み終わったと時、ふと今が何時なのか気になっていた。そもそも周りを見渡して見る限りこの部屋には、地球における"時計"の代わりになるものが無かったのだ。そのことに今更気づいたユウは、



(やべぇ...つい集中して読んじまったけど、セリアやガルシオ、それに......リンも放って置きっ放しだったな...。リンに至っては、ガチでいじけてそうだな...)



と、そんなことを思いながらもユウは長い間寝そべっていた身体を起こし、魔法により閉ざしていた部屋のドアを開けると、階下にいるはずのリンとゲートルト兄妹の元へと向かっていった。



 ユウが一階の居間にいる(と思われる)三人へ、長い時間そのままにしていたことを謝ろうとしていた。実際、ジルトから "ずっとユウのそばで監視していろ" と言われていたセリアだったが、




「...別に、そこまでしなくても良いだろう。ユウのことは今日一緒に過ごしてみて、少しは信用できる者だと思っている。...それにユウとしても、リンが自分から離れている間に何かしようとは思わないだろう?」




と、ユウのことを信用してくれていた。

 まぁ真相としては、リンを一時ゲートルト兄妹に預けることで、それなりに信用して貰おうというユウの策略ではあったのだが...、かなり上手くいってしまったようだ。本人も驚きの信用度である。


 ...さすが名称 "猫かぶり" なユウである。本人の性格を無視して、都合の良いように働いているようだ。...まぁそれも、日頃のユウが細心の注意を払い、自身の言動に慎重になっているお陰でもあるのだが。

 


 と、それは置いておいて。


 

そんなわけでユウが本を読んでいる間、リンはずっとゲートルト兄妹と一緒にいたのだ。まぁ先刻、彼らと一緒にユウがいる部屋へと来た時を思い出すと、リンはセリアのことを毛嫌いしながらも中々楽しく過ごしていたようであった。...内容はともかく...。



(しかし随分遅くなっちゃったけど、今何時だ?そもそもこれからの予定とか聞いてなかったけど、どうすれば良いんだろ...)



 そんなことを一人心の中で呟きながらも、ユウは居間へと続く扉を探した。確か、階段を降りて直ぐ目の前の部屋だったはずだ。

 そして、その扉を開けると、



「へ?」

「ん?」



と、お互いに状況を理解していない声が聞こえてきた。さらに言うと、そこは居間ではなく地球でいうところの"トイレ"であった。ユウはそこに入っていた人物がまさに今、用を足そうとしている場面に出くわしたのだった。そこに入っていたのは...














ガルシオだった。



「なんだユウ、もう読み終わったのか?」

「...う、うん。時間無視して読んでてごめんね...」

「まぁ、別に良いけどよ。今はセリアとリンちゃんが湯浴み場使ってっから、あいつらが出てきたら使えよ」



 そんなやり取りをしながらユウとガルシオ(モノがぶらり状態)は、なんでもない会話をしていた。どうやら、三人ともそろそろ就寝するつもりで準備していたようである。



「そ、そっか...ありがと、ガルシオ。それと...いきなり開けてごめん...」

「ん?俺としては別に構わねぇけどな。流石にこれがセリア相手だったら...だいぶまずいけどよ...」

「...そうだよね...」



 ガルシオからそんなことを言われたユウは、確かにセリア相手にそんなことをやろうものなら、漸く築き上げてきたセリアからの信用が一気に底辺まで落ちると予測...というか確信していた。だからこそ、男の用足しに直面した今回において残念さよりも安心さがこみ上げて、今の状況に寧ろ感謝していたのだ。


 流石にテンプレ的展開を何回か経験してきたユウだが、ラブコメの主人公のように何でもかんでもイベントを回収するような能力は無いため、何とか問題を起こさなくて済んだようだ。



「そんじゃ、俺は糞するからさっさと閉めてくれ。...流石に、野郎に見られてしたいとは思わねぇからな...」

「まぁ、それは俺も同感......ホント、ごめん...」



 そう言ってユウは、ガルシオに謝りながらトイレの扉を閉めた。すると、 "ガチャ" と言う音と共にトイレの鍵が閉まったようだ。...ガルシオとしても今回のことは、そこまで気にしていないと言ってはいたがそれでも、もうこんなことは起こって欲しくはないのだろう。...そんな感情が鍵を閉めた音からなんとなく伝わってきた。



(まぁ、さっきの出来事は"なかったことにしよう")



 そんなことを思いながらユウは、記憶の一部を完璧に消去した。実はこれはユウが日本にいたときに嫌なことを直ぐ忘れるため、 "忘れたいことは直ぐにでも忘れることが出来る" といった、変な特技が確立していたのだ。...逆は出来ないので、それが一番悲しいのだが...。

 そうしてユウが一人、先ほどまでの出来事あくむを脳内から完全消去し終えた辺りで、



「ん?...漸く戻ったか、ユウ。確かに時間などは伝えていなかったが、それでももう少し気をつけてくr"ヒュッ!"



と、背後からかけられた声のする方をユウが振り向くと、"何か" がユウ目がけて飛び込んできた。ユウはそれをどうにか自身の胸で受け止めると、その"何か"に対し、



「っと、...いきなり飛び込んでくるなよ、リン。危ないだろ?」



と、飛び込んできた正体であるリンに向かってそう言った。



「あ~るじぃ~♪ようやく主のにおいが嗅げますぅ~......スゥーーー...ハァーーー......フフフッ」

「......そうか...」



 リンから毎度おなじみの反応をされたユウは、いつものように若干引きながらも心の中では少し照れて、その行動を受け入れていた。

 実際のところ組合から出た後は、ずっとユウの中にいたかゲートルト兄妹と一緒にいたのだ。やはりユウのことが大好きなリンにとっては、ユウの中にいることは耐えられても、ユウから離れて過ごすことはそんなに我慢できないようで、こうしてユウの姿が見えた瞬間飛び込んできたのだ。

 

 ...少しやり過ぎな感じはあるが、ユウとしてもそのくらい慕ってくれるというのは嬉しいことでもあったのだ。......まぁ、そんなこと言ったらまたリンがトリップするので、自重してはいるが...。



「......そろそろ、話しかけても構わないか?」

「ん?...あっ」

「...まぁリンがしたことだから、特に何も言うことはないが...最初に話しかけた私としては、放置されるのはあまり良い気持ちではないぞ...」



 そう言ってセリアは、ユウとリンの行動を一人離れたところから眺めており、ユウが中々気づかないため自ら話しかけた。当然ユウは完全に頭の中からセリアの存在を忘れており、話しかけられてから漸く気づくことが出来たのだった。話しかけてきたセリアの様子から、一瞬とはかけ離れたくらいの時間放置していたことを悟ったユウは、



「...ごめんなさい...」



と、セリアに対して頭を下げて謝罪した。......勿論リンはユウにくっついたままだが...。



 ユウが三人と会ってから、自身はセリア達と入れ替わりで湯浴み場へと向かい、本日二度目のとなる"お清め"を行った(身体を洗うだけ)。

 暫くして湯浴みを終えたユウは、そろそろ寝てもいいかということをゲートルト兄妹に確認を取ってから、自身の身体にリンを同化させ、階段を上っていった。そして、先ほどまで本を読んでいた部屋へと入り、こちらも先ほどまで寝転んでいたベッドへと飛び込んだ。



「...しかし今日は、一日の出来事とは思えないくらい色んなことがあったな...」

〈そうですね~...。それでもこうして村に入れて、その上ちゃんとしたところで身体を休められてるんですから、良かったんじゃないですか?〉



 そんなユウの独り言に対しリンは、脳内でそう返した。リンの言う通り、最初は完全なよそ者であり警戒されていた身でありながら、今はこうして監視という目的ではあるものの、ちゃんとしたところに泊めて貰っているのだ。日本では当たり前だった生活ではあるが、今のユウにとっては十分すぎる待遇であったのだ。



(まぁそうだな。それに、当初の目的地だった"シェール"とか言う国に行けなかったけど、こうして人間族の住む村に来られたのは、色々あったけど結果的に良かったかもな)

〈えぇ......ですが、主が色んな女性と関わりを持つようになってしまって、ボクとしては複雑ですよぅ...〉



 そう言ってリンは声からも分かるくらい、"しょげていた"。まぁ、あまり人の目につかないようにするためずっとユウの中にいたことが、今のようにリンを落ち込ませる要因にもなっているのだが...。



(ったく、そんなにいじけんなよ。これから一緒に旅すんのはお前とだけなんだから、そんなに気にするようなことじゃねぇだろ?)

〈...まぁ、それもそうですね...。では、主!これからも二人一緒にゆっくり旅を楽しみましょう!〉



 ユウからの言葉を受けてリンは、これからもずっと一緒にいるのは自分だけと言う言葉に反応し、持ち前の明るさを取り戻していた。 "やっぱり、リンには『暗い』という感情は似合わない。いつもニコニコしている方が合っているな" とユウは感じていた。だからこそ、



(あぁ、今後ともよろしくな、リン!)



と、リンへ言葉を贈った。それに対しリンも、



〈勿論ですよ、主!たとえ主が死んでも、時間を巻き戻して無かったことにして見せますよ!〉



と同意すると共に縁起でも無いことを言って、さらにはとんでもないことまで言い出した。ユウはそれに "そうか..." と返すだけに留め、それ以上は何も言わなかった。...なぜならば "時間を巻き戻す" という意味を、ユウはリンから"リモコン"の能力説明を受ける際に既に知らされていたのだ。





 "リモコン"。この魔具にはまだまだユウが使っていない機能が存在する。...が、それは今後この物語が進むにつれて明らかになっていくだろう。そして、その機能の一つである "遠隔操作リモコン" を使う瞬間は、刻一刻と迫ってきているのだった。







==========







 時間は少々遡り、ユウが冒険組合にてシルビアから話を聞いた頃、クルスの森では複数の"冒険者"という職業の者達が、ある魔獣の群れに追われていた。その魔獣の群れは"飢餓狼ハングルフ"の群れであった。



「ちょっ!これってまずいんじゃねぇの!?さっきよりも増えてるって!」

「んなの知ってるわ!いいから、生き残りたいなら全力で走れっての!」

「もうーーー!なんでこうなるのよーーー!!」


 そんなことを言い合っている者達は、ユウが冒険組合に入ったとき、丁度組合から依頼を受注していた者達であった。たしか、パーティーとかいうものを組んでいて、五人いたはずだが......別行動を取っているのか、それとも既に......



「ったく!飢餓狼がこんな数で群れるなんて今まで聞いたことねぇぞ!さっさとどっかい...け......」

「あ!?何やってんだお前、早くはしr"ズシャッ!"......えっ」



 一緒に逃げていた男が突然失速したのを気にして、残りの二人の内、男の方が何があったか確認するため後ろを振り返ったら、失速した男がとんでもない早さでもう一人の男に迫り、   "首を切り落とした"。



「えっ。.....な、何をしてるの、 "ザルバ" ?」



 そんなことを言いながら、残っている内の女性の方がその男がその手に握っている剣で、先ほどの男を文字通り"殺した"ことに驚きながらも、切った男の名前を呼んだ。


   "ザルバ"。  


 その名の通りその男は、ユウが冒険組合にセリアと向かっている最中に、道のど真ん中で愛の告白をしてきた人物であったのだ。そのときの去り際の様子は、まさに "おとこ" であった。


 しかし今は、そのときとは別人のように目つきが変わり、虚ろで生気が全く感じられなかった。

 まるで、 "誰かに操られている" かのように......。それほど、今のザルバの様子は通常とはかけ離れていた。そしてザルバは、そんなことを言った女の方へと進んでいき、まさに斬りかかろうとしていた。


 それを感じ取った女は、漸くザルバが正気ではないことを知り逃げようとした



「に、にげ"ザシュッ"...?」



...がそんな行動も虚しく、常人では考えられないようなスピードで斬りかかってきたザルバの攻撃に、一切反応することなく、首と胴体を切り離され "死んだ" 。そして先ほどの男の遺体も含め、二つの死体に飢餓狼達が群がり、自身の治まることのない空腹感を満たすため、死体を食らった。

 その近くで、未だに虚ろな目で佇んでいるザルバ"だと思われる人物"は、ゆっくりと空を見上げた。そして、こちらに向かってきている"何か"を見つめていた。



 暫くして、空からこちらに向かってきた人物は、その場の状況を見て



「ん?こいつら......も、違ぇか。はぁ...、ベグロダ様に初めて任されたことなのに、全然見つからねぇ...。ったく、何処にいんだよ......"召喚者"」



と、ため息を吐いていた。







 そこにはザルバと数十体の飢餓狼、そして "冒険者達の衣服" があるのみだった。



さて今回は、

《問題》『魔具をつくる際、組み込むものは何?』

です。

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