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異常なリモコン片手に放浪旅 ~主人公は主観的で感情的~  作者: アヤミ ナズ
魔人族の大陸:スローム王国ミミ村編
27/64

No.025 歴史と暦

作者です。

前回の回答・・・『火魔法(もしくは爆破魔法)』です。もしこの内容が不要と感じたら、遠慮無くコメントを送ってください!そして今話の後半はだいぶ説明文となっているので、ご容赦ください。

...始まります。



「では、ありがとうございました!」



 そう言ってユウはシルビアとジルトに一度別れを告げ、先ほど合流したゲートルト兄妹と一緒に現在ユウが泊めて貰っている(というか監視のため)ゲートルト家に向かって歩いていた。その道中、ユウはゆっくり見られなかったミミ村の様子を眺めていた。


 現在時刻は夕方のようで、多くの店は既に店じまいを始めている。昼頃に先ほどの冒険組合へ向かう途中様々な店が建ち並び、その多くが生活に欠かせない食品や雑貨、中には花屋などユウが思い描いていた異世界の風景とは違っていたのだ。

 ユウとしては、厳ついおっさんが物騒な武器やダサそうな鎧を販売していたり、綺麗なお姉さん達と楽しくおしゃべりするような、所謂"夜の店"が営業していたりといった、物語の中の染まった考えでいた。


 だが実際は、いくら異世界でも村にそんなものはないはずだし、あったとしても今のユウにはそんなことどうでも良くなるくらいに別のことへ意識が向いていたのだ。...そう、現在ユウが背中に背負っている(入れ物はシルビアから借りた)のは、先ほど借りた三冊の本であったのだ。その中身は、


『イリスの歴史』、『暦と文化』、『名もなき英雄』 


であった。ユウ本人は、戻ったらまずどれから読もうか楽しみで仕方なかったのだ。だからこそ、



「...ぅ」  「~♪」  「...う」  「(あ~、早く着かねぇかなぁ~)」 「......」






「...ユウ!!」

「!?はい!私がユウです!!」



 そんな声を上げてユウは、突然自分の名前が呼ばれたこと...というより、近くで大きな声が聞こえたことに思いっきり驚いていたのだ。驚きすぎて、なんとかノートに出てくるLさん風になってしまったが...。



「?...何をそんなに驚いている。先ほどから何度も呼びかけていただろう...」

「へ?...全然気づかなかった。ごめん、セリア...」

「はぁ...まぁ、気づいてくれたのならば別にいいが...」



 そう言ってセリアは、ユウのそんな言葉に少々呆れていた(←慣れた)。

 まぁ、ユウ自身も意識がこれからのことに向いており反応が遅れたので、言い返すようなことはしなかった。...当然自分が悪いのだから、そんなこと論外であるのだが。



「...ところでセリア?一体どうしたの、突然呼びかけてきて。...何か用事でもあった?」

「あ~、そのことなんだが......ユウ、お前の魔具には魔具精霊が宿っているとは、本当か?」

「え?...って、そうか。ジルトさんに聞いたのか」

「あぁそうだ。...で、実際のところどうなのだ?」



 ユウからの言葉にセリアがそう答えると彼女は、ユウに対して非常に興味津々な様子であった。



「?あ、それは俺も知りてぇな」

「ガルシオも?」

「あぁ...だってよ、魔具精霊が宿ってるなんて"霊製魔具"の中でもほんの僅かだぜ。人工魔具に至ってはそんなこと実現できた例がほぼ皆無だしな...」

「そ、そうなんだ...」



 ガルシオからのそんな返しを聞いてユウは、リンという存在そしてこの"リモコン"の存在は十分注意を払わなければならないことであると、再認識した。...何より、先ほどのような面倒なことは嫌である(おそらく明日からジルトによる尋問DEATH)。



「まぁそんなわけで、一度家に帰ったらユウの魔具にいる魔具精霊って奴に会わせて貰ってもいいか?」

「えっ......それは...」

「ん?ダメ、なのか...?」



 ガルシオからそんな提案をされてユウは盛大に躊躇ったが、そんなユウの様子を見て反応を見せたのは意外にもセリアであった。

 突然セリアからそんなことを言われたユウは、



「?セリアも会いたいの?」



と問いかけた。ユウの目線から見てセリアは、一々そんなことに興味を示すような女性ではないと思っていたのだ。ましてや今回は、既にジルトや村と国の仲介役であるシルビアに知られていることであり、特に義務とか責任という観点から見て、セリアには特別やらなければならないことではないのだ。......ガルシオは例外として。



「い、いや。別に、そこまで気になるわけではないのだが......滅多に会えない、それも魔具精霊に折角会えるのだから個人的に興味が湧いたのだ...」

「...なるほど、そういうこと...」

「...だが、強制ではない。隊長からもそこまでするようには言われていないしな...」

「えぇ~、折角だから会おうぜ~」



 そんな正反対の反応を示すゲートルト兄妹を見てユウは、そのあまりの違いに心の中で "ほほえましい..." と感じていた。それは決してからかっているのではなく、そんな兄妹の風景がまぶしかったのだ。

 だからこそ、



「別にいいよ。それじゃあ、一度家に戻ってからでいい?」



と、了承したのだ。ユウとしても、ここまで世話になったのだから何かしらの恩返しをしたかったのだ。......リンに会わせることが、恩返しになるのか疑問で頭が埋め尽くされるが...。



「お~、そうか!それじゃあ、早く戻るか!」

「嬉しいが...良かったのか、ユウ...?」

「ん?...いいんだよ。セリアやガルシオには色々良くして貰ったし、何よりこんなに仲良くなったんだからこれくらいはなんてことないよ」



 喜んでいるガルシオがいる中セリアは、ユウに再度確認を取ったがそれに対しユウはなんでもないように返した。事実、ユウとしても大人数は勘弁だが、世話になった目の前の二人やジルト、シルビアには話してもいいと思っていたのだ。...これくらいリーズには大目に見て貰いたい...。


 そんなユウの返答に、



「......そうか」



と呟くセリアの姿がいた。そのときの表情には若干赤みがかかっており、それは決して夕日のせいだけではないことを、ユウはともかくリンは見逃さなかった...。



(ぐぬぬ...主にここまで信用されるとは......敬意を表してセリア"さん"とお呼びした方が......いえ、やっぱり無理ですね。今まで通り"セリア"で十分です!)



 そんなリンの言葉は、ユウにも届いてはいなかった。......まぁ、リンらしいっちゃらしいけども...。



「では、行きましょう」



 そんなこんながあり、ユウ達は一先ずゲートルト家へと歩みを進めた。そろそろ辺りが暗くなる頃だ。




"こらーーーーー!!待てーーーーー!!セーーーリーーーアーーーーーーー!!"

"な、何でーーーーーーー!!"



 階下からそんな声とともに、おそらくセリアの足音であろう物音が(※リンは浮かべます)聞こえてきた。そしてそれは、ユウが泊めて貰っている部屋の前まで来て、



"ユウ!リンをなんとかしてよ!何か知らないけど、突然私のこと追いかけ始めたんだけど!?"



と、ユウに事態の収拾を頼んできた。あまりにも焦りすぎて口調の皮が剥がれているが、本人は気にならないほどに慌てていた。

 しかし、



「?......」

 


といった具合に、ユウは外の音が聞こえないかのように気にした様子もなく、再び視線を今読んでいる本へと戻した。実際、本当に聞こえていないのだから仕方がない。


 理由としては、現在ユウがいる部屋の扉には風魔法の音魔法である"凪化クワイト"によって、音が遮断されているのだ。さらには扉が開かないように、空間魔法の"部分固定パーツロック"で空間ごと固定しているのだ。こうなると扉を壊すより、周りの壁を破壊して部屋に侵入する方が楽である。ただしそれは、この家の住人であるセリアにとってやりたくはないことであった。


 だからこそ、こういった結果になったのだ↓



"漸く追い詰めましたね...セリア"

"!?ちょ、ちょっと!なんで兄さんまでリンに味方してるの!?"

"ん?面白そうだからだけど?"

"!!こ、このバカがーーーーーーーーーー!!"

"...まぁそんなことは置いておいて、セリア。...覚悟してください、ね♪"

"なっ!や、止めてくれぇええええぇぇぇ......"



 そんな悲壮感の溢れる叫びとともに、セリアの声は遠ざかっていった。そんなことが自身がいる部屋の前で繰り広げられていたのに、ユウは、



「......ん?なんか、微妙に揺れたような......まぁいいか」 



と、読書に夢中になっていた。

 その後リンが、セリアにどんなことをしたのかをユウは一切知ることはなかったのだ。



 さて、先ほどのような騒動があったもののユウは全く気づかず、借りてきた本を読んでいた。

 


(...しかし、この世界は随分と神とかを信じてるんだなぁ...。まぁ魔法なんてものがあるんだから、神様とかも実在するのかねぇ)



 そんな感想を抱きながら、ユウは三冊の本を読んでいた。今は三冊目である『名もなき英雄』を読んでいた。






==========


 ではここでユウが借りてきた本の内、既に読み終わっていた二冊の内容を説明していこう。


―――――――――――


『イリスの誕生と歴史』

「この世界は創造神 "イリアス・ダグヴァーナ" によって造られた」


 そんなことを言っていたのは既に五十年も前のことであった。現在、魔具の発達によりこの世界、というよりこの "星" はおよそ五十億年も前に、小さな惑星同士がぶつかり合ってそれが十億年の間少しずつ自転を繰り返し、長い年月を経て "星" へと変化したことが判明していた。

 

 その一方で現在、その自転が傾いているせいでイリスには一年を通して暑い時期と寒い時期が訪れている。その理由としては、この星の自転軸がずれているからと言われており、僅かに傾いた軸はイリスにおいて "季節" というものをつくった。結果的に言うとこの自転の傾きは、この世界における生物の多様性や場所による気候の違いが出来、いい方向に向かった。


 そんな誕生を遂げたイリスには、徐々に多くの生物が生まれてきた。しかし、生まれては消え、そしてまた別の生物が生まれてを繰り返してきたことにより、現在の"種族"と呼ばれる者達が誕生した。

 現在、その"種族"と呼ばれる者達で生き残っている中では、最初に誕生したのが"竜族ドラビス"であった。...まぁ "生き残っている種族の中では" の話で、実際絶滅したといわれる種族も合わせると最も古い種族は "血命族ブラビス" と呼ばれる者達であった。

 その種族が絶滅した原因は、イリスの歴史を遡る必要がある。



 様々な知性溢れる種族が生まれてくると、次第に種族同士で互いに支配しようとしてくる連中が出てきた。支配の中には使役という認識の下、奴隷や植民地といった考えを持つ種族もいたが、中には他種族を、食料という "餌" の観点からしか見ていない種族もいたのだ。

 この世界には魔法と呼ばれるものがあることで、戦争...というより殺戮行為は凄惨なものになり、その最中で魔法の行使、もしくは戦闘に長けた種族が台頭するようになった。その種族は、 "魔人族ウビス"・"竜族ドラビス"・"獣人族イビス" そして先にも述べた"血命族ブラビス"と、同じく絶滅したといわれる "角族ホビス" がいた。


 そんな世界において人間族アビスは、自分たちが襲われないように自身を強化できる"物理魔法"を生み出し、拮抗しないまでも何とか種族自体を維持していた。そんな理由から人間族は、魔法の中でも物理魔法に関しては多種族よりも行使が上手いのだ。


 そんな殺伐とした世界が五百年前まで続いていたあるとき、突然空間そのものから声が響いてきて、すべての種族に次のようなことを言った。





『すべての知性ありし種族に告げる。 これは警告だ。 今すぐそのような争いを止めろ。 でなければ、お前達を一日に一種族ずつ地上から消し去る。 ...もし、それを望まないのであれば、今すぐ自らの住処へと引き返せ』




 そんな声が聞こえた全種族達は、当然危機感を抱いたが直ぐにまた戦争という名の殺戮を始めた。しかしそれは、日を跨いだ瞬間に終わりを告げた。なぜならばその瞬間、先ほどまでいた"血命族"が忽然と姿を消した。つまり、




"消えた"




 ...それでも止めない種族達は、そんなことお構いなしに続けたのだ......がさらに翌日、今度は角族が




"消えた"




 流石に、こうもそんなことが続くと残った種族達は得体の知れない出来事に恐怖し、すぐさま自身が元々住んでいた地域へと引き返した。すると、今まで繋がっていた大陸が突然地割れを起こし、みるみるうちに複数の大陸へと分かれていった。そうして、今のような種族の分布となったのだ。


 現在、それぞれの種族が互いに不可侵を決めているのは、そんな理由からである。まぁ、そんなことも既に五百年も前のことでありそこまでお互いに気にしているほどでもないが、未だに友好的とは言い切れないようだ。

 ちなみに、使国がを設けられるようになったのはそれから百年後である。


 そんなわけで、もう二度とあのように種族そのものが地上から消えることがないように、互いが最大限に注意を払って生活してきた。実際は他の種族を食料としなくとも、野生生物や植物などでも事足りていたのだが、"狩り" というものの楽しみは魅力的だったのだろう。

 しかしあんなことが起きてしまったら、生存本能の方が優先されるに決まっており、そんな中お互いを尊重し合えるような者達が増え "多種族構成の大陸" なんかが出来るほど、それぞれの考え方が変わってきたのである。

 

 徐々に種族同士での争いが減っていき、少しずつ平和な世界になっていたことに気づいた種族達は、いつしか "あの声は創造神からの世界に対する警告だったのだ" と考えるようになり、神々の存在を認識せざるを得なくなったという。


 こうしてそれらは、神々への信仰と神大陸という存在へ落ち着いた。


―――――――――――


『暦と文化』

 さてこの世界にも暦、というか月日という概念はある。そしてそれらは、前述にも述べた五百年前までそれぞれ固有の暦を使っており、一年や一日といった基本的なものすら食い違っていた。

 そのため各種族達は、 "折角争いがなくなったのだから知識や認識を統一すべきだ" と考えた。ちなみに、最初にその案を出したのは人間族のある人物であった。その人物の名は "リーズベル・ランフェロット" と言った。


 リーズベルは、当時の人間族の中で多種族との積極的な交流を望んでおり、人間族の中では変わり者と言われていた。しかしあるとき、とある人物達との出会いによって種族同士の架け橋になり、種族間の認識の共有を進めていった。人物達の名は "ジグル・ビヨンド" と "アビリス・レイナード" であった。


 

 とまぁ、そんな三人は徐々に同志を集めていき、次第に種族同士での話し合いの場をつくっていった。それが今の"神の御前会議(カンシル オブ イリス)"であり、そこで今の種族同士での取り決めが行われた。  では、暦はどのように決められたのだろうか。



 この世界の一年は、空に輝いている太陽ゴッズが頭上にいる地点から、一度沈み再び同じ位置まで来るのを一日と考え、それを計366回繰り返すことで一年とされる。

 なぜ366回なのか。実は太陽は一日ごとに、たとえ同じ時間帯でも微妙にずれるていることを、人間族は長年の研究で明らかにしていた。そして丁度366回昇って沈むを繰り返すと、太陽が再び全く同じ位置に戻ってくることも知っていたのだ。だからこそ、一年は366日と定められた。


 次に一年を通して変わっていく季節であるが、これらは一年を幾つかの月に分けることで違いを出した。具体的に言うと、十二個の月に分けそれら一つ一つを30日と定めた。各月の名は魔法の属性で分けられており、


『 光の上月 ・ 光の下月 ・ 火の上月 ・ 火の下月 ・ 水の上月 ・ 水の下月 ・ 風の上月 ・ 風の下月 ・ 土の上月 ・ 土の下月 ・ 闇の上月 ・ 闇の下月 』


となっている。(順番や季節はまんま地球の四季と一緒)


 そして最後の"闇の下月"が終わると残っていた6日間は "神の休日" と云われている。その理由は "この世の中を作るきっかけをくれた神が、この世界のことを気にしなくてもいいように" と言う意味が込められ、必要最低限のことを除いて殆どの種族が一年の終わりを静かに迎えるのだ。まぁ後々、一年が365日となり六年ごとに一度366日になるのだが、その話はまた後でと言うことで...。



 ちなみにこの世界の一週間は計6日間であり、光・火・水・風・土・闇の日とされている。(つまりユウは十四日間のつもりが周囲からは十二日間と捉えられていた)


 これらの暦は、原型を人間族が使用していたものをベースに各種族達が審議した結果、神のお告げがあった日を基準にすることで決まった。その暦の名は "イリス歴" といい、ユウが召喚された時代は"イリス歴524年"である。






 次にそれぞれの種族の文化や特徴についてだが、少数種族に関しては未だに分からないことが多いため、四大種族と言われる "人間族アビス" "獣人族イビス" "魔人族ウビス" "亜人族エビス" の文化を紹介しよう。



と言うことで、本の内容は一部次話に持ち越しです。それでは、

《問題》『セリアに告白してきた人物の名は?』

では、また次の話で...。

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